【製品レビュー】KORG Kaoss Replay
即興的な曲作りからDJプレイまで1台で完結できる
唯一無二のスタンドアローン型パフォーマンス・ツール
1999年にコルグから発売されたエフェクターKaoss Padは、パッド上で指先をスライドさせるという独特なインターフェースと直感的な操作性で、国内外のダンス・ミュージック界を中心に一大センセーションを巻き起こした。また、Kaoss Padから派生し、簡単にメロディやフレーズを演奏できるKaossilatorは、“ガジェット楽器”というジャンルの先駆者となり、後にiOS/Android版もリリースされている。そうしたヒット・シリーズであるKaoss Pad/Kaossilatorは、これまで数多くの個性的な製品が発表されており、その最新作が今回紹介するKaoss Replayである。
本機の外観は、2001年に登場したKaoss Mixerを彷彿させるが、エフェクトやサンプリングなどの機能は格段に向上し、サイズはよりコンパクトになった。アルミニウム製のボディは高級感を漂わせ、機材の持ち運びに不可欠となる堅牢さも兼ね備えている。
まず最初に、プリセットのプロジェクト(※)を使って演奏してみよう。A〜Hの8バンクから1つを選び、16個のトリガー・パッドを押せば音が鳴るので、基本的な操作方法は数分のうちに理解できると思う。バンクはTRIGGER PAD BANKキーで切り替わり、点灯時=バンクA〜D、点滅時=バンクE〜Hを選択できる。トリガー・パッドの下部ランプは、各パッドに割り当てられたサウンドの種類により、1-SHOT=オレンジ、LOOP=水色、SONG=ピンク、というカラーリングとなり、暗い中での視認性にも長けている。
パッドのレスポンスは非常に良好だ。1-SHOTはベロシティに対応しているので、叩く強さで音量の強弱を表現することが可能である。他にも、パッドを押す間だけ出力するゲート・モード、テンポ変更や拍の設定、ピッチ変更のオン/オフ、演奏のリアルタイム録音(LIVE REC)など、多様な設定と機能を持つ。なお、本機のファイルのストレージはmicroSDおよびmicroSDHCカードであり、スロットがフロント・パネルの中央に用意されている。
次にエフェクターの説明に移ろう。Kaoss PadモードでDATA ENTRYノブを押すとアクティブになり、エフェクトを変更できる。トリガー・パッドでLOOPやSONGを選択し、有機ELのXYタッチ・スクリーン上で指をスライドさせれば、なぞった軌道に沿って画像が現れ、音の変化を聴覚だけでなく視覚でも確認することができる。合計128 種となるエフェクトは、フィルター、ディレイ、リバーブ、モジュレーション、ルーパー、ボコーダー、シンセ・エフェクトに加え、Kaossシリーズ初となるボーカル・エフェクトを搭載している。本機へ接続したマイクから入力した音声にKaossエフェクトを使用すれば、ボーカルの音色の変化によってアレンジの幅が広がることだろう。エフェクトの好きなポジションでのホールドや、エフェクト操作の記録、設定のセーブ/ロードも可能である。
また、本機の力強いサンプリング機能は、ミュージシャンの個性を発揮するのに大きなサポートとなりそうだ。トリガー・パッドを押して再生されるサンプリング音はオーディオ・クリップと定義され、音データ(最大48kHz/16bit)とその属性情報(スタート/エンドの各ポイントなど)で構成される。オーディオ・クリップのコピーや削除、不要部分の調整などのエディット、リサンプリングにも対応する。再生開始位置の設定はホット・キュー・ポイントと呼ばれ、自在に調整できる。もちろん、外部入力から本機へインポートし、オーディオ・クリップとしてトリガー・パッドへ割り当てることも可能である。
DJミキサーとしての入出力の仕様も十分だろう。本機はLINE/PHONO入力(レコード・プレーヤー接続の場合、INPUT SELスイッチをPHONOにする)、AUX入力、マイク入力、LINE出力、ヘッドホン出力を備えている。左右に位置する2つのフェーダーは、左がグループA、右がグループBの各音量の調節に対応し、トリガー・パッドとLINE/PHONO入力を、AとBのどちらのグループに振り分けるかを別途細かく設定できる。なお、音声出力は解像度が高くフラットな音質であり、ミキサーとしての基本性能も非常に秀れていると言えよう。
タッチ・スクリーン操作のエフェクター、自由にエディット可能なサンプラー、USBやMIDIを含む豊富な接続端子を持つミキサー、高音質なオーディオ・インターフェースなど多彩な機能を搭載する本機は、この1 台でDJプレイやストリーミング、ライブ・パフォーマンスなどを完結できる唯一無二のスタンドアローンな製品だ。コルグ公式サイトのYouTubeで、実際の出音や操作性などをチェックしてみてほしい。(文:カトウミキオ)
※プロジェクト=最大128 個のオーディオ・クリップ、ホット・キュー・ポイント、トリガー・パッドのプログラム・メモリーを組み合わせたもの。1つのプロジェクトはA〜Hの8バンクを持ち、各バンクに16個のトリガー・パッドを割り当て、合計128種類(8バンク×16パッド)からサウンドを選んで演奏できる。
製品情報
KORG Kaoss Replay
メーカー希望小売価格●148,500円
Specifications
●エフェクト・タイプ:128種類●マイク専用エフェクト:トーン、ディレイ、リバーブ●最大プロジェクト数:100●トリガーパッド:16(ベロシティ対応)×8バンク●ホットキュー:最大12カ所(トリガーパッドあたり)●同時再生回数:16●オーディオ:リニアPCM(48kHz/16bit)●録音機能:サンプリング、リサンプリング、ライブレコーディング●入出力端子:LINE/PHONO入力、AUX入力、マイク入力、LINE出力、ヘッドフォン出力、フットスイッチ、USB、MIDI(IN/OUT)●外形寸法:185(W)×284(D)×56(H)mm ●重量:2.0kg
お問い合わせ
コルグお客様相談窓口 TEL.0570-666-569