【製品レビュー】YAMAHA Expanded Softsynth Plugin for MONTAGE M

実機のサウンドをまるごとPCで使用可能
自由に持ち歩いてエディットもできる専用ソフトウェア

ハードとソフトの連携がますます盛んになっているシンセサイザー界隈……そんな中いよいよ! ヤマハ社からESP v2.0 が登場! ESPとは“Expanded Softsynth Plugin”の略で、昨年MONTAGE Mが発売された直後に登場した、MONTAGE Mをコンピューター上で再現できるソフトのことだが、先日v2.0が公開されたことで、ほぼすべての機能にアクセスすることができるようになり活用の幅がかなり広がった。今回はESPを使用することで広がる可能性、その素晴らしさを紹介したいと思う。

ESPは単体アプリではなく、DAW上のプラグインとして使用するソフトで、プラグインのフォーマットとしてはVST3もしくはAU v2(Mac)となっている。残念ながらESPのみを購入するということはできず、MONTAGE M を購入したオーナーのみ使用できるようになっていて、実際のインストール方法としては、まずMy Steinbergのログイン・ページにアクセスし、Steinberg IDを作成。その後Steinberg Download Assistant経由でダウンロード、Steinberg Activation Managerでアクティベートすることで使用できる。
基本的な必須スペックは、下記(2024年6月時点)。
● Windows
[OS]Windows 11(64-bit)、Windows 10(64-bit)
[CPU(必須)]Intel® Core™ i 5 (8 t h G e n e r a t i o n )
● Mac
[OS]macOS 14.x、mac OS13.x
[CPU(必須)]Intel®Core™ i5(mid2017以降)or Apple silicon(ネイティブ環境のみ)
それぞれメモリー8GB、ストレージ10GB以上、ディスプレイ解像度1000×640ピクセル以上(1440×870ピクセル以上推奨)が必要で、ノートPCなどでも十分立ち上げ可能だ。筆者は自宅でMac(OS13)、メインDAWはDigital Performer(Ver.11)を使用しているが、もちろん問題なく立ち上げることができた。画面の印象としては、適度にカラフルな色分けがされているのでわかりやすく、取説を見なくてもほとんど問題なく操作できた。

基本的な画面構成としては、上部にナビゲーションバーという、音色選択やデータのやり取りなど基本的な画面の切り替えを行うセクションがあり、それぞれを選択することでメイン画面が切り替わり、音色エディットやデータのやり取りなどの実際、操作ができるようになっている。

上部のナビゲーションバーでメイン画面の切り替えを行い、
音色エディットやデータのやり取りなどの操作ができるようになっている。

音質はオーディオ・インターフェースのスペックに左右されるので各自の環境次第としか言えないが、筆者が実際にライブなどで使用しているMONTAGEのバックアップ・ファイルから音色をロードしてみたところ、そのまま同じ音が出てきて(当たり前なんですけど……)それを聴いた瞬間思わず“お!すごい!”と声が出てしまった(笑)。

そもそも実機のMONTAGE M自体画面が大きく、タッチパネルなのでかなり操作性は良いわけだが……パートやエレメントを多く使った複雑な音色のエディットをする際は、画面が大きく表示量が多いESPはかなりわかりやすく&操作しやすく、また単純に文字が大きく表示されることで老眼的にも目に優しく、本当に快適だと言える。

MONTAGE M実機とのデータのやり取りは、USBメモリを介してセーブ、ロードできることはもちろん、USB-MIDI経由でもやり取りできるようになっている。筆者の自宅環境ではYamaha Steinberg USB Driver をインストール後、MONTAGE MとMacをUSB接続することでAudio MIDI設定のMIDIスタジオ画面にMONTAGE MがMIDI機器として認識され、その後ESPを立ち上げData Transfer画面でIN/OUTをPort4に設定することで、直接やり取りすることができた。やり取りするデータとしてはEdit Buffer、User、Library、Backupから選択できるので、1音色だけはもちろん、まとめてやり取りしDAWのファイルを介して実機のデータをバックアップすることもできる。

基本的な説明は以上だが、ESPを使用するメリットは本当にたくさんあり……例えばライブやリハーサルなどでMONTAGE Mを使用する際、今までは音色を用意したり修正しようと思ったら実機を家に持って帰って作業するしかなかった。しかし、ESPを使用することで、実機をスタジオに置いたままだったり、ツアー中であれば機材車などに預けたままでも、自宅でESPを立ち上げ音色をエディットし、USBメモリーを介して実機で呼び出しライブで使用することができる!

また、曲作りをしていてMONTAGE Mで作った音色をミックスするためにDAWに取り込む際、ESPを立ち上げてその音色を呼び込み、必要に応じてほかのプラグインなどを使用した後バウンスすることで手軽にDAWに取り込める。PCのスペックが許す限りESPはいくつでも立ち上げることができるので、アレンジしていて“もう1パートMONTAGE Mで鳴らしたい”という場合、今までであれば一旦DAWにオーディオで取り込んだ後に別音色を呼び出して……いう作業が必要だったが、そんなこともなく、マシン的に許される限り何パートでもMONTAGE Mの音色を曲作りに使用することができる。

……と、ESPを活用すれば便利なことが満載なわけだが、今後もMONTAGE Mは実機とESP同時にバージョンアップし音色や機能が追加されたりブラッシュアップされていくらしいので、これからさらにいい音に、そしてさらに便利に進化していくことに期待しよう! いやー、ほんとに便利です!(文:守尾崇)

製品情報

YAMAHA Expanded Softsynth Plugin for MONTAGE M

メーカー希望小売価格 ●MONTAGE M6:440,000円、MONTAGE M7:473,000円、MONTAGE M8x:517,000円(すべて税込)
※ESPはMONTAGE M正規登録ユーザーのみダウンロード可(単独販売なし)

Specifications

(MONTAGE M v2.0)
【鍵盤】61鍵FSX鍵盤(イニシャルタッチ/アフタータッチ付)、76鍵FSX鍵盤(イニシャルタッチ/アフタータッチ付)、88鍵GEX鍵盤(イニシャルタッチ/ポリフォニックアフタータッチ付)【音源部】●音源方式:Motion Control Synthesis Engine/AMW2:最大128エレメント、FM-X:8オペレーター、88アルゴリズム AN-X:3オシレーター、1ノイズ●最大同時発音数:AWM2=256音(ステレオ/モノ波形いずれも)、FM-X=128音、AN-X=16音●マルチティンバー数:内蔵音源16パート、オーディオ入力パート(A/D、USB)●波形メモリー:プリセット=10.7GB相当(16bitリニア換算)、ユーザー=3.7GB●パフォーマンス数:3,427●フィルター:18タイプ●フェクト:リバーブ×13タイプ、バリエーション×88タイプ、インサーションA×88タイプ、インサーションB×89タイプ、マスターエフェクト×26タイプ、A/Dパートインサーションは83タイプ、マスターEQ(5バンド)、1stパートEQ(3バンド)、2ndパートEQ(2バンド)【シーケンサー】●容量:1パターン/ソング=約130,000音●音符分解能:四分音符/480●パターン:パターン数=128、トラック=16シーケンサートラック、テンポトラック、シーントラック●アルペジエーター:最大8パート同時オン可、プリセット=10,922タイプ以上、ユーザー=256タイプ【その他】●ライブセット数:プリセット=256以上、ユーザー=2,048● 接続端子:USB TO DEVICE [1]/[2]、[USB TO HOST]、MIDI[IN]/[OUT]/[THRU]、FOOT CONTROLLER[1]/[2]、FOOT SWITCH[SUSTAIN]/[ASSIGNABLE]、OUTPUT(BALANCED)[L/MONO]/[R](TRS バランス出力端子)、ASSIGNABLE OUTPUT(BALANCED)[L]/[R](TRS バランス出力端子)、[PHONES](ステレオ標準フォーンジャック)、A/D INPUT[L/MONO]/[R](標準フォーンジャック)●寸法:61鍵=1,037(W)×396(D)×131(H)mm、76鍵=1,244(W)×396(D)×131(H)mm、88鍵=1,446(W)×460(D)×170(H)mm●重量:61鍵=15.3kg、76鍵=17.6kg、88鍵=28.1kg

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