【製品レビュー】DREADBOX Nymphes
コンパクトながら多くのパラメーターで音作りができる
ギリシャ生まれの6ボイス・アナログ・シンセサイザー
小型ガジェット系音源やユーロラックのモジュールなどを発売しているギリシャのドレッドボックス社から発売されているNymphesは、6ボイス・ポリフォニックの完全アナログ・シンセサイザー。デジタル・リバーブも内蔵し、98のプリセット・メモリー、ベロシティやモノフォニック・アフタータッチなど、フルMIDIコントロールに対応している。
まず外観は非常にコンパクトだが、金属製でしっかりした作りなのが印象的だ。少ないツマミにも関わらず、シフト・ボタンやメニュー・ボタンとの併用で、アナログ・シンセで必要なパラメーターの多くが操作できる仕組みになっている。
用意されたツマミを見ていくと、スライダー下部に記載のとおり、オシレーター部、左側から三角、パルス、ノコギリの基本波形が連続可変型で、他にサブ・オシレーターとノイズをミックスすることができる。LFOのアマウント・ツマミはピッチをモジュレートする。シフト・ボタンを押すと、これらがスライダーの上部に記されているパルスウィズ、グライド、デチューン、コード、エンベロープのアマウントとして機能する形となる。コードというツマミは、ユニゾン演奏モードなどの時にコード・メモリーのようにコード演奏を設定できるもの。7th、メジャー7thなど、6種類のあらかじめ用意されたコード構成に加え、1つだけ好きなコードの登録が行えて、それを選択する形になっている。
フィルターは、24dB/Oct のローパス・フィルターとレゾナンスなしの6dB/Oct ハイパス・フィルター。エンベロープとLFOのアマウント、キーボード・トラッキングも用意されているのだが、こちらもシフト・ボタン併用で3つのツマミに凝縮されている。エンベロープはADSRタイプで、フィルターとオシレーター用、アンプ用の2つが装備され、これもシフト・ボタンで切り替える。また、このADSRツマミは、メニュー・ボタンと組み合わせると内蔵リバーブのパラメーターにもアクセスできる形になっている。
LFOも2つ。LFO1は、波形、レート、ディレイ(LFO効果がノート・オンから少し遅れて現れる)の他に、フェード、つまりディレイの逆でLFO効果がノート・オン後、徐々になくなっていくことも設定できる。これを最大値にしておくと、1周期モジュレート後、すぐにLFOの効果がなくなるので、ちょうどLFOをもう1つのエンベロープのように使うことと同じ機能になっている。また、コントロール・チェンジ情報を送ることでレートの幅を変更できるので、かなり広い範囲の周波数帯域を可変できるようになり、FMのような音作りをすることもできた。また、LFOのレートをキーボード・トラッキングするモードもあって面白い。ポリフォニック演奏すると、それぞれ違った速度のLFOがかかることになる。つまりLFO1は、1ボイスごとに別々に用意されているので、内部回路的には7LFOという仕様になっているのである。また、LFO2はメニュー・ボタンで呼び出す形となっている。
内蔵リバーブは、ドレッドボックス社が開発したLushデジタル・リバーブというもので、メニュー・ボタンと併用することで、サイズ、ディケイ、フィルター、ミックスのパラメーターに簡単にアクセスできる。かなり長いディケイも設定できて、シンセサイザーの音が乗りやすいリバーブという印象だった。
98個のプリセット・メモリーを有しており、右上にある7段階切替のツマミでバンクと番号を選択、ファクトリー・プリセットとユーザー・プリセットも切り替える形となっている。
6音ポリフォニックの鳴らし方として、6種類のプレイ・モードが用意されている。6音ポリフォニック、6オシレーターを同時に使うユニゾンA、4オシレーターを使用するユニゾンB、2オシレーターのユニゾンで3音ポリ、3オシレーターのユニゾンで2音ポリ、1オシレーターを使ったモノフォニックが選択可能。ユニゾンAとBでは、オシレーターのところで述べたコード演奏の機能を使用した時の構成音が変わってくることで、違いがはっきりわかる。
電源はUSBによる供給で、アップルMacBook ProでUSB接続してみたが、問題なく使用することができた。USBスプリッターまたは外部電源タイプのUSBハブを使用するとより安心だろう。ACアダプターを使用する場合は、USB-A(5V)1000mA以上のものが必要になるとのことだ。
MIDI情報もUSB経由で受信することができたので、DAWで簡単に操作できる。出力は標準モノとミニステレオのヘッドフォン端子、MIDIインはミニ端子になっており、MIDI toミニの変換が付属している。
こういったアナログ・シンセの音源はソフトウェアも多数あるが、やはりライブ・パフォーマンスで使うにはハードウェアが断然有利。ただ、小さい機材はパラメーター数が少なかったり、ツマミが小さすぎたり。パラメーターが多くてツマミも操作しやすいとなると、必然的に大型になってしまうものだが、このNymphesは少ないツマミ数で操作もしやすく、シフト・ボタンを併用することであまり複雑にならずに、多くのパラメーターにアクセスできる形で小型化に成功している。
モジュレーション・ホイール、ベロシティ、モノフォニック・アフタータッチを複数のパラメーターに対して同時に適用可能で、それぞれに異なる量で変調することができたり、ピッチベンド幅の変更などにももちろん対応しており、ディスプレイがないにも関わらず、かなり細かく自由な設定ができるのが魅力だ。ただ、MIDIのCC情報による設定変更やメニュー・ボタンによるグローバルな設定はちょっとわかりにくいのだが、これは最初に設定してしまえばその後は同じ形で使用し続けるということを考えれば問題ない。また、ツマミとシフト・ボタンの併用も、操作しているうちにすぐに慣れてしまったので問題ないだろう。使い慣れたらかなり強力な武器になって、ライブなどで演奏しながらのツマミ操作が楽しそうだ。(文:松前公高)
製品情報
DREADBOX Nymphes
価格●オープン・プライス(市場予想価格:79,800円/税込)
Specifications
●同時発音数:6ボイス●オシレーター:アナログ(連続可変)●サブオシレーター:1基●ノイズ・ジェネレーター●12エンベロープ(ADSR)&7LFO(1 ボイスにつき2つのエンベロープ、1ボイスにつき1LFO、1ジェネリックLFO)●プレイモード:6種類●プリセット・メモリー数:98(49ファクトリープリセット&49ユーザープリセット)●入出力端子:標準モノ出力、ヘッドフォン出力、MIDI(IN/OUT)●電源:USB、ACアダプターを使用する場合はUSB-B(5V)1000mA 以上のものが必要●外形寸法:240(W)×125(D)×38(H)mm●重量:0.85kg
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