【製品レビュー】SEQUENTIAL TAKE 5

コンパクトなサイズに使い勝手の良い機能を搭載
Prophetの系譜を受け継ぎ現代的に進化した
5ボイス・アナログ・ポリシンセ

新しいロースプリット機能で44鍵を超える演奏が可能

シーケンシャル社といえば、時代を超えた名機Prophet-5を世に送り出したデイヴ・スミス氏が設立したメーカーだが、このたびそのシーケンシャル社からTAKE 5というシンセが発表された。“5”が名前に使われているとやはりProphet-5を意識してしまうが、その実力はいかに? 実際に音を出してじっくり触ってみたので紹介していこう。

まず第一印象から。鍵盤はしっかりした弾き心地のフルサイズ44鍵(イタリア・ファタール社製)で、ホイールやツマミなどを含めてすべてがうまくコンパクトにまとまっていて、重さも7.7kgなので持ち運びもそれほど苦にならないだろう。パネルは高級感のあるブラックで、サイドパネルに彫ってあるSEQUENTIALのロゴもいい感じだ。電源アダプターを使用しないタイプなのも嬉しい。今回“ロースプリット機能”という、低い鍵盤1オクターブ半部分だけをワンタッチで1もしくは2オクターブ下げられる機能が搭載されたので、44鍵でありながら幅広い演奏が可能となっている。また、中央上部には液晶があり、音色名の表示やチューニングなどのグローバル設定、複雑な変調やパラメーターのモード設定など、細かな操作もわかりやすくなっている。

音色メモリーとしては、ファクトリー(書き換え不可)とユーザーそれぞれ16音色×8バンクで128音色ずつ使用可能。ファクトリーに関しては、専用ボタンが用意されているのでいつでも呼び出せて便利だ。

シンセサイザーとしての基本的な構成は、アナログ・オシレーター×2( +サブ・オシレーター、ノイズ・ジェネレーター)、Prophet-5 Rev4の血統を受け継ぐ4ポール・アナログ・フィルター、エンベロープ・ジェネレーター×2、LFO×2(全体×1、ボイス別×1)の5音ポリフォニックで、2系統のデジタル・エフェクトも内蔵しているため、これ1台で即戦力となる幅広い音色を出すことができる。

プリセットを聴いてみると、オシレーター・シンクやユニゾンを駆使した激しいリードや図太いベース、複雑なモジュレーションやエフェクトを駆使したFX音色など、アナログ・オシレーターならではの存在感のある良い音が大量に用意されているので、ライブや曲作りにすぐ使えるだろう。

低い鍵盤1オクターブ半部分をワンタッチして、1or 2オクターブ下げる“ロースプリット機能”を装備

感覚的に操作できるモジュレーション・マトリクス

では、文字数が許す限りTAKE 5の美味しい機能を紹介していきたい。まずはオシレーターから。液晶画面で操作することでオシレーター1と2で別々のポルタメント・タイムを設定できるので、ちょっと変わったフレーズを作ったり、さらにシンクやFMも使えばかなり複雑な倍音変化を作れるので、変わった音好きな人はぜひ活用してみてほしい。

次はVINTAGEツマミ。これは、現代のアナログ・シンセでは最新の回路や部品によって安定しているピッチを、あえて昔のビンテージ・アナログ・シンセのようにボイスごとにずらすことで独特の柔らかさを出すことができる。特にユニゾンを使用した場合には、ユニゾン・デチューンとは違う、弾くたびにランダムに揺らぐにじみ感を再現することが可能だ。

エフェクトもよく考えられていて、ディレイやフランジャー、HPFなどとして使用できるマルチエフェクトと、リバーブ専用エフェクトの2系統になっている。TAKE 5のフィルターはLPFのみなので、意外と使うことの多いHPF系の音は作れないのか……とちょっと残念に思っていたが、フィルター通過音と原音のバランスが取れるHPFがエフェクト内に用意され、当然レゾナンスもあるので、EGなどで各パラメーターを変調することで、HPF的、BPF的な音色も作ることができるのだ。また、その2系統とは別にオーバードライブが用意されていて、しかも左手メイン・ボリュームの下に鎮座しているあたり、“わかってるな〜”と妙に頷いてしまう。歪み、大事ですよね。

そして、モジュレーション・マトリクス機能によって、ソース(変調元)19種類、デスティネーション(変調先)54種類のパラメーターから組み合わせ、最大16系統変調することができる。設定の操作もわかりやすく、例えばモジュレーション・ホイール(以降MW)でフィルターのカットオフをコントロールしたい場合には、MODセクションのSRC ASSIGN(ソース・アサイン)ボタンを押しながらMWを動かすことでMWがソースに設定され、DESTASSIGN(ディスティネーション・アサイン)ボタンを押しながらCUTOFFツマミを動かすことでカットオフがデスティネーションに設定される。その上で液晶下のvalueツマミで変調する強さを上げると、MWでカットオフをコントロールできるようになるという(文字で読むより一度やってみると簡単)、かなり感覚的な操作性になっている。

おすすめの設定として、モジュレーション・ソースをVoiceSpread、デスティネーションをPanningに設定して数値を上げ、ユニゾンを5VoiceでOnにすると5音が左右に割り振られ、VINTAGEやユニゾン・デチューンを上げることで独特の広がりを持った音色を作れるので、ぜひ試してほしい。和音は出せないので、軽く歪ませたりしてリードにおすすめ!

ほかにも64ステップ・シーケンサーやアルペジエーターを内蔵していたり、コンピューターと接続する際にはUSBケーブルで直接接続可能だったり、紹介しきれないおすすめポイントがいっぱいのTAKE 5。今までプラグイン・シンセしか使っていなかった人が初めてのアナログ・シンセとしてシステムに取り入れたり、ライブで強力なリードやシンセ・ベースに使用したり、さまざまな場面で大活躍できるシンセなので、ぜひ活用してみてほしい。(文:守尾崇)

ソース(SRC)19種類、デスティネーション(DEST)54種類のパラメーターを組み合わせ、最大16系統を変調可能

製品情報

SEQUENTIAL TAKE 5

価格●オープンプライス(市場予想価格:238,000円)

Specifications

●鍵盤:44鍵(ファタール社製)●オシレーター:VCO×2、連続可変波形(サイン波〜ノコギリ波〜可変幅パルス波)、ハード・シンク機能、周波数変調●フィルター:4ポール・レゾナント・ローパス・フィルター●エンベロープ:5ステージ・エンベロープ・ジェネレーター×2●LFO:三角波、ノコギリ波、逆相ノコギリ波、矩形波、ランダム(サンプル&ホールド)、クロック・シンク●エフェクト:リバーブ×1、マルチエフェクト×1、オーバードライブ(VCA)●アルペジエーター:アップ、ダウン、アップ+ダウン、ランダム、アサイン・モード●シーケンサー:ポリフォニック・ステップ・シーケンサー(最大64ステップ)●入出力端子:MIDI(IN/OUT/THRU)、USB Type-B、サステイン/フット・スイッチ入力×1、エクスプレッション・ペダル入力×1、メイン・ステレオ・アウト(フォーン×2)、ヘッドフォン出力(ステレオ・フォーン)●外形寸法:635(W)×324(D)×112(H)mm●重量:7.7kg

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