【製品レビュー】KORG minilogue bass

プロ・ベーシスト監修のプリセット40種を搭載し
即戦力のシンセ・ベースを感覚的に使える
4ボイスのアナログ・シンセサイザー

コルグからまた独創的なシンセサイザーがリリースされた。minilogue bassは、2016年に発表されたベストセラー・モデルのアナログ・シンセサイザーminilogueをシンセ・ベース・プレイヤー向けにカスタマイズした製品である。

黒を基調としたパネルにはマーブル模様が施されており、複雑で黒いグルーブを感じさせる外観である。黒と赤の鍵盤は、microKORG-BKRDを彷彿とさせる個性的なカラーリングで、その独特な佇まいは赤いウッド・リアパネルとともにステージ上でひときわ映えることだろう。シルバーで端正なminilogueとは少し趣を異にした、重厚感のあるゴン攻めしたプロダクト・デザインには、心から賞賛の拍手を送りたい。

各種のスペックはminilogueをほぼ踏襲しており、後述のとおり豊富な機能が搭載されながらも、実際手にすると非常にコンパクトなサイズにまず驚かされる。本体の重量が2.8kgという軽さであることから、持ち運びにも重宝するマシンと言えるだろう。

電気信号の波形を表示するオシロスコープ機能を持つ有機ELディスプレイなどをminilogueから引き継ぎつつも、さまざまなジャンルに対応する100種類のプリセット音が本機のために新たに作られており、即座に呼び出して演奏可能だ。プログラム領域はminilogueと同様に合計200個あり、工場出荷時のプリセット以外の100種類は、エディットした音色や設定を保存したいときに使用可能なユーザー・プログラムとなっている。

100種類のプリセット音色内の40種類は、実際にシンセ・ベースを使いこなしているプロのベーシストの方々とコラボレートした、即戦力となるシンセ・ベース・サウンドだ。監修したベーシストは、Yasei Collectiveでベースを担当する中西道彦、YOASOBIのサポート・ベーシストに抜擢されたやまもとひかる、オレゴン州ポートランドのビート・メーカーDevonwho、O-Setsu-Yのベースと音楽監督なども務める小池実の4名である。

余談になるが、上記O-Setsu-Yは、筆者がかつて加入していたYMOのコピー・バンド、Y-Setsu-Oが名付け親なのだ。Y-Setsu-Oのライブを観た小林淳一氏から“自分も新しくYMOのコピーバンドを始めるのでバンド名を考えてほしい”とY-Setsu-Oのメンバーに依頼されたのがきっかけである。まさかO-Setsu-Yが実際に採用されるとは誰も思っていなかった(笑)。

話を元に戻すと、上記4名のプロのベーシストの監修したプログラムについては、コルグのサイトの“minilogue bass artists”のコーナーにYouTubeの動画リンクが貼ってあり、各アーティストが実機を演奏しながら音色の解説をしているので、ぜひチェックしてみてほしい。

ベース・サウンドは単体で良い音に聴こえていても、楽曲のほかの音とミックスすると埋もれてしまったり、音圧や定位のバランス調整が必要になったりするケースも多い。だが、プロのベーシストが自ら調整して作り上げた音色ならば、そうした点をうまくクリアしてくれることだろう。

マーブル模様の黒を基調としたパネル、黒と赤の鍵盤という個性的なルックスを持つ。
独特な佇まいは赤いウッド・リアパネルとともにステージ上で映えるはず

本機は力強いベース・サウンド以外にも、デジタルのシンセサイザーでは再現が困難な音の太さ、音圧、倍音を備えたアナログ・シンセサイザーとしても存分に活用できる。ベロシティに対応した鍵盤と4音ポリを生かして和音を演奏することも可能であり、ボイス・モード機能(POLY、DUO、UNISON、MONO、CHORD、DELAY、ARP、SIDE CHAINの8種類)で、4つのボイスの出音をボタン切り替え1 つで自在に変更することができる。

音源のシステムは、2VCO(矩形波、三角波、ノコギリ波)、1VCF(2-pole、4-pole)、2EG、1VCA、1LFO、NOISEとなっており、多彩な音色のエディットが可能である。エフェクターのDELAYには、ハイパス・フィルターが組み込まれているので、その可変効果も試してみてほしい。

感覚的かつスピーディにパラメーターを操作できるインターフェースなので、VCOやボイス・モードで音の厚みを変えたり、フィルターで音の明暗を調整したりなど、ノブを左右に回転させることでプリセットのプログラムをイメージどおりの音へエディットすることが容易に行える。個人的には、コルグ・シンセサイザーの持ち味であるモジュレーションやフィルターによる独特の音のキレや、LFOによるエクスペリメンタルとも言える過激な音色変化が特におすすめだ。

本機はさらに16ステップのシーケンサー機能を搭載しており、実際の演奏情報を録音するリアルタイム・レコーディングと、ノートや休符、タイなどを1ステップずつ録音するステップ・レコーディングに対応している。また、ノブやスイッチの動きによる音色変化を記録して再現するモーション・シーケンスは、使い方次第でかなり効果的なフレーズを生成できる機能だろう。

ほかにも、ピッチを微調整できるマイクロチューニング機能、外部からギターなどの楽器音を入力できるAUDIO IN端子、SYNC IN/OUT端子、MIDI IN/OUT端子、USB B端子なども備えている。

本機は大変ユニークな楽器ながら、シンセ・ベースを始めてみたいと考えているベーシストや、実際に鍵盤でベースを演奏しているプレイヤーなど、多くの音楽家に推奨できる1台に仕上がっている。ぜひ検討してみていただきたい。(文:カトウミキオ)

感覚的かつスピーディにパラメーターを操作できるインターフェースを持ち、
ノブを左右に回転させることでイメージどおりの音へエディットすることが容易に行える

製品情報

KORG minilogue bass

メーカー希望小売価格●93,500円

Specifications

●鍵盤:37鍵(スリム鍵盤、ベロシティ対応)●音源:アナログ音源●最大同時発音数:4ボイス●プログラム:200(工場出荷時は100のプリセット・プログラムと100のユーザー・プログラム)●ボイス・モード:8(POLY、DUO、UNISON、MONO、CHORD、DELAY、ARP、SIDE CHAIN)●主なシンセ・パラメーター:VCO1、VCO2、VCO2 MODULATION、MIXER、FILTER、AMP EG、EG、LFO、DELAY●シーケンサー:16ステップ・ポリフォニック・シーケンサー、最大4つのパラメーターをモーション・シーケンス可能●コントロール:パラメーターへ即時アクセス可能な41個の専用パネル・コントロール、プログラムごとに異なるパラメーターを変化させるスライダー●入出力端子:ヘッドフォン、OUTPUT、AUDIO IN、SYNC IN/OUT、MIDI IN/OUT、USB B●外形寸法:500(W)×300(W)×85(H)mm●重量:2.8kg

お問い合わせ

コルグお客様相談窓口 TEL.0570-666-569