【製品レビュー】YAMAHA MODX+

さまざまな機能がパワフルに進化し
ライブでの操作性を丁寧に突き詰めた
ハイブリッド音源搭載シンセMODXの後継モデル

2018年に登場したMODXは、コンパクトで軽量なボディにMONTAGE譲りの本格的なサウンドで人気を博し、プロのライブなどでも使用されてきた。そして先日、さらにさまざまな機能をアップデートさせたMODX+が登場し、筆者もMONTAGEへの肉迫ぶりにびっくりした。かなりの高機能なので、この文字数では駆け足になってしまうが(笑)、その魅力を紹介していきたい。

まず音源部分だが、MONTAGEのテクノロジーを継承したモーション・コントロール・シンセシス・エンジンを搭載していて、基本的にはAWM2音源とFM-X音源、2種類の音源を最大16パートまで使用できるハイブリッド音源となっている。

それぞれの音源を簡単に解説すると、AWM2音源はいわゆるPCM音源方式で、同時発音数は128音(ステレオ)。1パートの中に音の最小単位であるエレメントを8つまで使用でき、ベロシティで切り替えたりフィルターやエフェクトなどで加工することで、さまざまな音色を作り出すことができる。

また、フラッシュ・メモリーを内蔵し、自分でサンプリングした波形や販売されている波形を使用することも可能で、今回MODX+では容量が1. 75 GBに増え(MODXは1GB)、大容量の波形も余裕を持って取り込むことができるようになった。ちなみに、製品購入後にユーザー登録をすることで、ベーゼンドルファーのMODX+用ピアノ音色ライブラリーを入手できるので、ぜひゲットしよう!!

FM-X音源は、DX7で一世を風靡したFM音源をさらに進化させた音源で、オペレーター同士を変調させ、倍音自体を組み立てる方式なので、ベロシティによる表現力やモジュレーションによる複雑で過激な倍音変化が特徴的な音源だ。加えて今回、MODXでは64音だった発音数が128音に増強され、複数パートを重ねた音色でも余裕を持って演奏可能となった。

さらにFM-X音源には、スマートモーフ機能という複数のFM音色(最大8音色)を並べ、タッチスクリーンやスーパー・ノブによって各音色のパラメーターの中間値で音色を変化させるという過激(?)な機能も搭載されていて、演奏しながらリアルタイムで複雑な音色変化を楽しむこともできるので、ぜひ使いこなしてほしい。

エフェクトも充実していて、VCM(Virtual Circuitry Modeling)エフェクトという、プラグインでいうビンテージ・エフェクトのシミュレーションのようなものも使用できる。これを使えば、“シンセ・ベースにEQで滲んだ感じの倍音をプラスする”というような音作りもできるのだ。

そして、こういったさまざまなパラメーターをモーション・シーケンサーで複雑に変化させたり、本体中心にピカピカと光りながら鎮座する、富士山のようなスーパー・ノブによって複数のパラメーターを同時にコントロールすることによって、ピアノからオーケストラのような音に変えていったり、EDMのようなシーケンスを指1本で演奏させることも可能となっている。実際の音色に関しては文字だけでは表現しきれないので、楽器店やネットでチェックしてほしい!

ちなみに、パフォーマンスは2,227音色と大量に用意されているが、カテゴリー・サーチ機能を使用することで、ピアノ、ベース、パッドなど、さまざまなカテゴリーで検索が可能。音色を選んだ状態から“SHIFT”ボタンと“LIVE SET”ボタンを同時に押すことで、ライブセット画面に16パフォーマンスずつ並べておけるので、ライブで使用する場合にも素早く呼び出せて便利だ。また、その際4パートまでのパフォーマンスであれば、シームレス・サウンド・スイッチング機能によって音を途切れさせずに音色を切り替えられる。

ユーザー・メモリーの容量が1.75GBへと増強され、大容量の波形も余裕を持って取り込むことができる

次にハード的な特徴についていくつか紹介しよう。MODX+のラインナップは3機種で、MODX6+は61鍵、7+は76鍵のセミウェイテッド鍵盤、8+は88鍵のGHS鍵盤となっていて、どの機種も本当に軽い! 特にMODX8+に関しては、ピアノタッチの88鍵でありながら13.8 kgという軽さなので、抱えて持ってもそれほど重くなく、キャスター付きケースに入れればかなり楽に運ぶことができる。そして今回、ホイールがラバー・コーティングされ、MONTAGEと同様の滑りにくいなめらかな質感になったので、ライブで汗をかきながら(?)シンセ・ソロを弾く際も安心だ。

さらにステレオA/Dインプットを搭載しているので、マイクを接続しての弾き語りや、ミキサーなしでもう1台シンセを使用したりもできる。その際、入力信号にはエフェクトをかけられるので、リバーブをかけたりボコーダー・エフェクトでハーモニーをつけるというような使い方も可能。入力レベルでパラメーターをコントロールすることもできるので、喋ると自動でMODX+の音量を下げたり、キックの音を入力してサイドチェイン・エフェクトをかけたりもできる。

また、スーパー・ノブの左横にあるノブ1〜4で、使用頻度の高い16パラメーターを素早く変更できるのも魅力だ。この原稿を執筆する直前にライブで実際に使用したが、リハで弾きながら“ちょっと丸いかな?”とか“ちょっと立ち上がりが遅いかも?”などと思った際に、カットオフやアタックを調整→ストア→ライブセットにアサインし直すという一連の操作が、演奏しながらでも簡単にできるのでかなり便利だった。

本体パネル右側にはスペースがあるので、DAWをスタートさせるためのテンキーを置けるのも地味に嬉しい。音に関しても安心の高音質なので、大音量のほかの楽器と混ざってもしっかり抜けてきて、弾いていて気持ちが良かった。

と、いくら書いても書ききれないので、残りの機能などについてはMODX+のサイトなども参考にしてもらうとしよう(笑)。このMODX+は、スーパー・ノブのような派手な機能が充実しているだけでなく、細かい操作性などに関しても丁寧に作り込まれていて、さまざまな人に安心しておススメできるシンセなので、ぜひその良さに触れてみてほしい!!(文:守尾崇)

88鍵のMODX8+は、ピアノタッチでありながら13.8 kgという軽さを実現。持ち運びも楽に行える

製品情報

YAMAHA MODX+

メーカー希望小売価格●143,000円/MODX6+、176,000円/MODX7+、203,500円/MODX8+

Specifications

●鍵盤:MOD X8+=88鍵G HS鍵盤(イニシャルタッチ付)、MOD X7+=76鍵セミウェイテッド鍵盤(イニシャルタッチ付)、MOD X6+=61鍵セミウェイテッド鍵盤(イニシャルタッチ付)●音源方式:Motion Control Synthesis Engine(AWM2=8エレメント、FM-X=8オペレーター、88アルゴリズム)●最大同時発音数:AWM2=128音(ステレオ/モノ波形いずれも)、FM-X=128音●マルチティンバー数:内蔵音源16パート、オーディオ入力パート(A/D、USB)、ステレオパート●波形メモリー:プリセット=5.67GB相当(16bitリニア換算)、ユーザー=1.75GB●パフォーマンス数:2,227●フィルター:18タイプ●エフェクト:リバーブ×12タイプ、バリエーション×88タイプ、インサーション(A、B)×88タイプ、マスターエフェクト×26タイプ、A/Dパートインサーションは83タイプ <各エフェクトタイプにプリセットプログラム搭載> マスターEQ(5バンド)、1stパートEQ(3バンド)、2ndパートEQ(2バンド)●シーケンサー容量:約130,000音(1パターンまたは1ソング)●ストア領域:約520,000音(パターン)、約520,000音(ソング)●アルペジエーター:パート=最大8パート同時オン可、プリセット=10,239タイプ、ユーザー=256タイプ●モーションシーケンサー:レーン=最大8+1系統●ライブセット数:プリセット=256、ユーザー=2,048●接続端子:USB、MIDI(IN/OUT)、FOOT CONTROLLER、FOOT SWITCH、OUTPUT(L=MONO/R )、PHONES、A/D INPUT (L=MONO/R)●外形寸法:MODX8+=1,333(W)404(W)×160(H)mm、MODX7+=1,144(W)331(W)×134(H)mm、MODX6+=937(W)331(W)×134(H)mm●重量:MODX8+=13.8kg、MODX7+=7.4kg、MODX6+=6.6kg

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