【製品レビュー】KORG miniKORG 700Sm

唯一無二なアナログ・シンセの復刻版を
スケール・ダウンしオリジナル機能を搭載

miniKORG 700は、1973年にコルグ初の量産シンセサイザーとして発売された。翌74年には2VCOに進化したminiKORG 700Sが登場。設計者の三枝氏によると、他社のシンセをまったく真似していないという。miniKORG 700の回路構造や特異な設計思想から生まれるサウンドは、独特な趣のある唯一無二のカラーと存在感がある。オルガンの上に置いてリードを弾くための楽器、というこだわりのために生まれた鍵盤下に操作ノブが配置された独特のデザインも、このシンセを特別なものにした。我が道を貫き通した2VCOの一風変わったシンセは、50年経った今でも色褪せるどころか他に代わりがないシンセとして世界中のシンセ・マニアを虜にする名機であり続けている。

そんなビンテージ市場でもなかなか手に入らない1台となっていたminiKORG 700Sを、本家コルグが2021年に限定生産で完全復刻し、世界のシンセ好きを驚かせたのはシンセ・マニアならご存知のことと思う。今回、復刻版miniKORG 700FSをそのまま86%にスケール・ダウンして、スリム鍵盤を搭載したのが本モデルminiKORG 700Smである。さらにお手軽になった我が道を貫く伝説のシンセ、早速試奏してレポートしてみたいと思う。

本機は700FS同様、オリジナルのデザインおよびサウンド、機能を踏襲した上に、現代的な音楽シーンに合うようにいくつかの機能が追加されているが、まずオリジナルと同じminiKORGの特徴とサウンド、演奏性を見てみよう。miniKORG 700Sは、2VCO、ローパス/ハイパス・フィルターを組み合わせた独特なトラベラーという名のフィルター、1AR EG、ノイズ2種という実にシンプルな構成だ。基本となるVCO1は鍵盤下のセクションで操作するが、波形は三角波、矩形波、鋸歯状波、パルスウィズ・モジュレーションをかけたコーラスⅠ、揺れの早いコーラスⅡの5種。特に三角波は他社とは異なる独特な音色として有名で、シンセ・レジェンド喜多郎氏でもお馴染みのサウンドだ。

本機で最も重要なのは、トラベラーという独特のフィルター・セクションだろう。2本のスライダーは上側がローパス、下側がハイパス・フィルターとなっている。演奏しながら2本を同方向や反対方向に動かすと独特の演奏表現が可能だ。ローパス、ハイパスのフィルターを同時に動かすことになるので、音が出なくなるのを防ぐため、ノブにそれぞれ突起がついており交差しないようになっている。しかしもっとギリギリを攻めたい方には、突起のないノブも同梱されているので付け替えるのもいいだろう。

VCO1は鍵盤下で操作。三角波、矩形波、鋸歯状波、コーラスⅠ、コーラスⅡの5種の波形から選択できる。
独特のフィルター・セクション“トラベラー”には、
パラメーター最大値までの操作を可能にする突起のないノブも同梱されている。

VCO2は鍵盤左のトップ・パネルにあり、DUETモードでデチューンを効かせたワイルドな音色が実に魅力的だ。ピッチノブの上下でシンセらしい表現も可能。モジュレーター1、2、3のリング・モジュレーションもシンセ好きにはたまらない。でも一番筆者が気に入ったのが、音程を持ったノイズ1と音程を持たないノイズ2の両方があるところだ。音作りの可能性が広がるし、音程を持ったノイズはリード音などには絶大な効果をもたらす。本機がリード・シンセとして多用されてきたのもうなずける。

さて、オリジナルにはない新たな機能を見ていこう。一番嬉しいのがやはりプログラム可能な点であろう。昔は紙に設定を書いていたというから、その労力は大変なものだっただろう。ライブ中も音色を変えるのも一苦労だったと推察される。本機はプログラム・ボタンが1から7まで、バンクA、Bで計14種保存可能。気に入った音色をいつでも再現可能で、ライブにも対応できるのはやはりオリジナルにはない魅力だ。

オリジナルにはなかったジョイスティックも演奏をより楽しいものにしてくれる。スプリング・リバーブもとてもいい感じだ。チルミュージックやダウンテンポな世界観が人気の今、スプリング・リバーブはこういったノスタルジックな音楽にもピッタリであろう。

VCOは鍵盤左のパネル上で操作する。
復刻版のオリジナル機能としてジョイスティックも装備。

そして演奏性に定評があったオリジナルの演奏力をさらに爆上げするのがアフタータッチ。なんとアフタータッチはさまざまに設定可能だ。例えば、スプリング・リバーブに設定すれば演奏中強く押し込んで弾く時だけリバーブが深くかかる。変化量とともに極性も変えられるので、深いリバーブをかけておき、強く弾くとリバーブがないなんてこともできる。もちろんアフタータッチでベンドダウン、ベンドアップ、フィルターの上げ下げをするのもいろいろ試してみたが、いつまでも遊んでいたくなってしまう。7種のアルペジエーターもいい感じだ。人間性を排した無機質で早いフレーズとノスタルジックなサウンドの相性は抜群で、音響系などの音楽にもピッタリとハマる。その他、USB端子、MIDI IN端子、CV/GATE IN端子が備わり、現代的な制作シーンで使うことももちろん可能だ。ソフトケースが付属で本体5.8kgと超軽いので持ち運びも簡単。

本機が気になる方は、ぜひ音を聴いて実際に操作してみることをオススメしたい。シンプルすぎると侮ってはいけない。アナログ特有の揺れとキレのある極上なリード、ベース・サウンドを表現力豊かに演奏するのはこんなにも楽しいのかと筆者は再発見してしまった。今回の試奏でminiKORG 700が愛される理由が分かった。それはやはり、この独特なサウンドやリードを演奏する楽しさは他のシンセでは味わえないからだ。そしてこの変わったルックス。あなたもいつの間にか愛着が湧いてくることだろう。筆者がそうであったように。(文:YANCY)

製品情報

KORG miniKORG 700Sm

メーカー希望小売価格●187,000円(税込)

Specifications

●鍵盤:37鍵(ベロシティなし、アフタータッチ対応)●音域:7オクターブ●波形:三角波、矩形波、鋸歯状波、コーラス I、コーラス II●プログラム数:14●入出力端子:OUTPUT L/MONO、R、ヘッドホン、AUDIO IN、SYNC IN/OUT、CV/GATE IN、MIDI IN、USB Type-B●電源:ACアダプター● 外形寸法:641(W)×107(H)×227(D)mm●重量:5.8kg

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