【製品レビュー】KORG microKORG2

多彩な機能を装備するコンセプトはそのままに
進化を遂げた新世代アナログ・モデリング・シンセ

今回紹介するシンセは、新しく生まれ変わったコルグのmicroKORG2(以下MK2)です。レビュー時は発売前ということでデモ機にマニュアルはなかったのですが、それでも操作に悩むことはありませんでした。新規に搭載された2.8インチのディスプレイは表示も見やすく、サイズ以上の情報をわかりやすく伝えてくれます。先代のmicroKORGは3桁のLED表示しかなく、うっかり別のパラメーターを触っていてもわかりにくかったのですが、MK2ではディスプレイ上に右上部の5つのツマミに対応した5色のカラーでパラメーターが表示され、操作性はすこぶる良好です。

聴いてすぐにわかるのは、音源部の素性の良さ。試しに素のノコギリ波を聴いてみると、オクターブ・シフトで下げていくだけでシンセ・ベースとして十分使える音の密度を持っています。エンベロープの実行速度も初代は遅め……かな?という感じでしたが、MK2は十分な速さを感じます。おそらく内部的な演算速度が爆上がりしているのでしょう。発音数は先代の4 音から8 音に拡張されたので、飛び道具的なシンセに限らず、コード弾きなど伴奏的なプレイでも対応しやすくなりました。

オシレーター・セクションでは、オシレーターの数が3オシレーターにノイズと1つ増えました。もちろんリング・モジュレーションやシンクも可能で、DWGSと呼ばれるデジタル波形も収録。各オシレーターは鍵盤ピッチに沿うか固定ピッチかを選べます。OneShotと呼ばれる打楽器系の波形も選べるので、固定ピッチにしてドラムの音を作ったり、鍵盤ピッチに沿わせて音色の要素として使うこともできます。ノイズのオシレーターには専用のフィルターが装備され、ノイズの音色も自由に設定できるようになりました。

フィルター・セクションで特徴的なのは、連続可変のマルチモード・フィルターになったことです。フィルター・タイプには、24dB&12dBローパス(LPF)、バンドパス(BPF)、12dB&24dBハイパス(HPF)が並んでいて、ツマミを左に回し切ると24dB LPFのみ、そこから右に回していくと12dB LPFを通った音が混じり始め、その後12dB LPFのみに。さらに右に回していくと、B P Fを通った音が混じり始め、センターでBPFのみに。さらに右に回していくと、BPFを通った音に12dB HPFを通った音が混じり始め……という具合いで、右に回し切ると24dB HPFを通った音のみになります。感心したのは、フィルター発振などは上品に丸め込み過ぎることなく、いい意味での野蛮さが残っている点です。演算速度が上がって滑らかな発音ができるようになっても、良かったところはしっかり継承していくという姿勢を感じます。もちろん荒々しいだけでなく、現代風なキメの細かい音作りも可能なのでご心配なく。

前機種のインターフェースを踏襲しつつ、2.8インチのカラー・ディスプレイを搭載することで操作性が向上。
オシレーター、フィルターをはじめ、さまざまな部分で進化を遂げている。

そのキメの細かい音作りという点では、6系統に拡張されたバーチャル・パッチの恩恵は大きく、一例として“こんなことできるかな?”とやってみたのが、DWGS波形をエンベロープで次々とスキャンして発音させた音作り。かつて一世を風靡した青いウェーブテーブル・シンセみたいなイメージですね。WAVEにDWGSを指定して、パッチのソースにFilter EG、ディスティネーションにShapeを選ぶと……見事にエンベロープの動きに合わせて波形が順次スキャンしていくウェーブテーブル・シンセのような音が作れました。もちろんこれは1 つの実験に過ぎませんが、ユーザーが思い描いたことが制限なく実現できるというのは良いシンセの条件と言っていいと思います。

また、良いシンセの条件としては操作性も大きな要素ですが、ボタンの操作性もよく考えられています。エディットの時は、右側中段のTIMBRE EDITのボタンを押すことでオシレーターやEGなどを選び、ツマミでパラメーターを設定していくという手順が基本になるのですが、このシンセのボタンは選ばれたページを保持してくれています。例えばオシレーター・ボタンを何回か押してオシレーター3を選んで、その後バーチャル・パッチのボタンを何回か押してパッチの4 番を選び、再びオシレーターのボタンを押すと……またオシレーター1からスタートして3を選ぶ必要はなく、3のままになっているのです。当然再度バーチャル・パッチのボタンを押すとパッチの4 番のままです。バーチャル・パッチを設定している時などは、バーチャル・パッチのページと対象のパラメーターのページを頻繁に移動することになりますが、対象のページに辿り着くまで何度も同じ操作をする必要がないのでとても快適にエディットができます。

microKORGのもう1つの魅力として忘れてはならないボコーダーですが、MK2ではピッチコレクトのハードチューンやハーモナイザーも装備したボーカル・プロセッサーとなりました。エフェクトはリバーブが追加され、モジュレーションやディレイの種類も先代より増えています。また、初代にあったようにアルペジエーターも装備されていますが、TEMPOボタンが付き、タップ・テンポに対応したのは嬉しいですね。面白いアイディアだと思ったのは、LOOP RECORDERというルーパーの装備。MK2は基本的には1音色を選んで弾くタイプの楽器ですが、ルーパーならば音色を切り替えてどんどんダビングしていけるので、多彩な音色を使ってパフォーマンスができます。

初代microKORGは軽量&コンパクトな筐体ながら、音作りの機能が豊富で、それゆえ長きに渡り幅広いユーザーの要求に対応できたことがロングセラーの1 つの要因かと思いますが、MK2はその伝統をしっかりと受け継いだ上に、さらにパワーアップしています。なによりマニュアルなしで触っていても楽しかったという印象が、“フレンドリーでなおかつ奥深い”というこのシンセの魅力を表していると思います。(文:高橋利光)

製品情報

KORG microKORG2

メーカー希望小売価格●59,950円(税込)

Specifications

●鍵盤:37鍵(ミニ鍵盤、ベロシティ付き、アフタータッチなし)●音源方式:アナログ・モデリング・シンセシス・システム●最大同時発音数:Single 8ボイス、Dual 4ボイス●ボーカル・プロセッサー最大同時発音数:Vocoder 4ボイス、Hard Tune 1パート、Harmonizer 2パート●エフェクト:モジュレーション、ディレイ、リバーブ、イコライザー●アルペジエーター:タイプ10種、ステップ・アルペジエーター機能●プログラム:256プログラム(4バンク×8カテゴリー×8プログラム)●入出力端子:OUTPUT-L/MONO、R、ヘッドホン、MIC IN-CONDENSER、MIC IN-DYNAMIC、AUX IN、DAMPER/SWITCH、MIDI IN/OUT、USB Type C●電源:DC9V付属ACアダプター、単3形電池6本●外形寸法:542(W)×65(H)×238(D)mm●重量(電池および付属マイクを除く):2.2kg

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