【製品レビュー】YAMAHA CK61
幅広いジャンルに使える即戦力の音色を搭載し
スピーカー内蔵で電池駆動にも対応した
バンド活動向きの軽量ステージ・キーボード
CK61は61鍵盤ライト・タッチのステージ・キーボードです。キーボーディストに求められる、アコースティック・ピアノ、エレクトリック・ピアノ、オルガンなどのベーシックな楽器音色だけでなく、ストリングス、ブラス、シンセ、SE系の音色なども内蔵されていますので、幅広いバンド・スタイルにフレキシブルに対応できます。
本体パネルのレイアウトはライブ時の操作性が考慮された配置になっており、実際に試奏してみると一度全体を見渡しておくだけで十分そのままプレイに集中できるように思いました。また、本体の裏側にはスピーカーを内蔵しており、電源を入れるだけで音を出すことができます。これが実は意外と便利で、何かフレーズを思い付いたり、曲のコードを手早く確認したい時など、少しでも早く音を出したい場合にヘッドフォンやアンプなどに接続しなくても音が出せるのは非常に便利です。
本体は比較的軽量なので、持ち運びだけでなく、セッティングもしやすくなっています。対バンライブのようにリハと本番前に機材の入れ替えがあるような場合でも、スムーズにセッティングが行えるように思います。ACアダプター駆動だけでなく、乾電池駆動も可能ですので、ちょっとした野外での演奏にも気軽に使える点も良いですね。
これだけでも機能としては十分ですが、さらにADインプットも装備しています。ここからマイクや外部オーディオの入力も行なえますので、コンピューターとUSB接続することでオーディオ・インターフェース機能として使用でき、DAWベースの音楽制作にも活用可能など、至れり尽くせりの装備になっています。
CK61は最大3パートのレイヤーやスプリットが行えるので、アコースティック・ピアノとFMエレピとストリングスをレイヤーしたサウンドを作ったり、スプリットを使用してロワー側をシンセ・パッド、アッパー側をシンセ・リードにする、というような使い方も容易に行なうことができます。音色設定は8プリセット×20ページ分のライブ・セットとして保存できますので、1ページ1曲分のセッティングで使用しても、20曲分を保存しておける計算になります。これだけあれば、長丁場のライブやコンサートなどにも十分に対応できると言えるでしょう。
一般的に、ライト・タッチの鍵盤の場合はベロシティの強弱表現が粗く、微妙なニュアンスを表現しづらい傾向がありますが、本機の場合は鍵盤のタッチは軽いものの、ベロシティによる強弱のダイナミクスも細かく表現できる点が非常に好印象でした。プリセットされている各音色の発音とタッチのニュアンスのシンクロ感も自然で、演奏のしやすさが非常に感じられます。
内蔵音色は、ドラム以外のほとんどの音色はひと通りそろっているように思います。特にシンセ系のリードやパッド音色などの内蔵プリセットも充実していますので、ピアノやオルガン音色を使用したベーシックな演奏だけでなく、多様な音色のフレーズを要求されるポップ系の曲などを演奏する場合にも重宝するでしょう。
オルガンは、サウンド・タイプとして代表的なオルガン・モデルが用意され、9本のドローバーを自由に設定して豊富なバリエーションが作れます。よく使用するドローバー・セッティングなどをライブセットにメモリーしておけば、ライブ演奏中の音色切り替えもスムーズに行なえます。ロータリー・スピーカー効果を得るためのROTARYに加え、ビブラート/コーラス効果、パーカッションのオンオフなど、演奏に不可欠な機能は網羅していますので、本格的なオルガン演奏にも十分耐えうる仕様と言えます。
また、音色エディットやサウンドメイクのためのエフェクトも充実の装備です。独立した歪み系のDRIVE、空間系のDELAY、REVERB、3バンドEQに加え、マルチ・エフェクトが2系統ありますので、オーソドックスなサウンド処理だけでなく、フィルターやエンベロープのパラメーター・エディットと併せたサウンドメイクを行なうことで、シンセサイザー的な音色にエディットすることも可能です。
ちなみに筆者がよく使用するローズ系のビンテージ・エレピ音色のバリエーションは、スタンダードな音色(プリセット名:78Rd)とやや金属的なアタックが強調された音色(プリセット名:73RdStudio)の2音色があります。これらの音色はノンエフェクトで使用するのも良いのですが、前者の音色をEFFECT 1でSmallPhaser、EFFECT 2でTremoroのエフェクトを付加することで、80年代のAOR風のフェイザー・エレピのサウンドが得られます。また、後者の音色には、EFFECT 1でHarmonic Enhancer、EFFECT 2でコーラス系のエフェクトを適宜設定することで、改造ローズ(いわゆるダイノ・マイ・ピアノ)風のサウンドにすることが容易にできました。もちろん、エレピ以外の音色にも各音色に適したエフェクトをかけることで、より楽曲に合った音色でプレイすることができます。
試奏を終えて思ったことが2つあります。1つは、操作性が非常にシンプルで演奏に集中しやすいキーボードだなということ。基本的に電源を入れればすぐに演奏可能な状態になりますし、演奏中の音色切り替えやエフェクトのオン/オフ、シンセ・パラメーターのノブ操作などは、配置されているパネルのボタンやノブ、スライダーなどを変化させるだけで行えますので、とにかく良い音色でガンガン演奏したいタイプのキーボーディストにはベストマッチなキーボードになるように思いました。もちろん、セッティングやメニューに用意されているパラメーターをじっくり調整すれば、マスター・キーボードとして活用できるほか、音色のエディットなども含めて、よりこだわった音色設定なども行えますので、コストパフォーマンスは非常に良いでしょう。
もう1点は、演奏していて飽きないキーボードだなということです。使い込むほどに本製品の良さが感じられると思います。これからキーボードを始める人のファースト・キーボードとして最適なだけでなく、ライブ演奏などで持ち運ぶ機会が多い人などにもオススメできる製品です。(文:内藤朗/有限会社FOMIS)
製品情報
YAMAHA CK61
メーカー希望小売価格 ● 99,000円(税込)
Specifications
●鍵盤:61鍵FSB鍵盤(イニシャルタッチ付)●音源方式:AWM2、AWM●最大同時発音数:128●ライブセットサウンド数:160(プリセットライブセットサウンド80)●ボイス数:363●インサーションエフェクト:ドライブ(1系統)5タイプ、エフェクト(2系統)●ディレイ:4タイプ●リバーブ:3タイプ●マスターEQ:3バンド●接続端子:ラインアウト、A/D INPUT、ヘッドフォン、フットコントローラー、MIDI、USB●外形寸法:910(W)×109(H)×291(D)mm●重量:5.6kg
お問い合わせ
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