シンセ・ベースの名器〜YAMAHA reface DX

『FILTER Volume.03』掲載企画“シンセ・ベースの名器”では、ハードウェアからソフトウェア、さらにモジュールまで、強力なシンセ・ベースを生み出す現行機種をピックアップしました。そのレビューをWebでも公開!

現代の音楽にもフィットする
FMベースの美味しいサウンドを内蔵し
独特な倍音変化を楽しめるコンパクト・シンセ

ヤマハのrefaceシリーズは、往年の名機を現代に合った形で蘇らせた人気のシリーズだが、ここではその中からreface DXについて紹介していきたい。

まずは基本的なスペックから。DX7でお馴染みのFM音源を進化させた独自の音源を内蔵し、液晶画面と4本のタッチ式データーエントリーにより、本体だけで音作りを楽しめるようになっている。鍵盤は37鍵のコンパクト鍵盤“HQ Mini”を搭載、スピーカー内蔵で電池駆動もでき、いつでも手軽に演奏を楽しむことができる。実際に触ってみると、refaceシリーズのコンセプト“ハイグレード・コンパクト”のとおり、デザインや質感、弾き心地など、コンパクトでありながら高級感があってとても良い。実際筆者も所有していて、ちょっとしたときに電源を入れればすぐ本格的な音が出せるので重宝している。

FM音源の基本については、本誌のシンセ・ベース歴史解説ページの中でも簡単に紹介されているので、ここではもう少し詳しく説明しよう。FM音源は、オペレーターという発振器が複数組み合わさって構成され、各オペレーターはシンプルな波形しか発振しないが、実際に音を出すオペレーター(キャリアと呼ぶ)を変調用のオペレーター(モジュレーターと呼ぶ)で変調し、それぞれをEGやベロシティでコントロールすることで音作りをしていく。なんて難しいことを書くと“え? 何言ってるの?”となると思うが(笑)、ぜひ覚えておいてほしいポイントとして、アナログ・シンセを代表とする減算方式のシンセは、倍音の多い明るい音をフィルターで削るという、その名のとおり減らしていく音源方式なのに対して、FM音源はシンプルな波形(基本的にはサイン波)をスタートに、変調を加えることで複雑な音を作るという増やしていく音源方式だという大きな違いがある。

reface DXに関しては、4オペレーター、12アルゴリズムのFM音源が搭載され、各オペレーターはサイン波を基本に、フィードバック機能を使用することで鋸歯状波や矩形波へ変化させることもできる。音色は4バンク×8で32音色メモリーしておくことができ、上書きした場合でもFUNCTIONボタンからVOICE RECALL機能を使用することで、工場出荷時の音色を呼び戻すことができる。

では、工場出荷時の音色の中からシンセ・ベース系の音色を紹介しよう。Bank1-2の“WobbleBass”は、今のジャンルにFM音源の特徴をうまく落とし込んだと言える、その名のとおりウォブル・ベース。LFOでの変調をオペレーターごとに多少変えることで、フィルターとはまたちょっと違った倍音の歪み感を楽しめる。

Bank3-3の“AttackBass”は、これぞFMベース!と言うべき、一世を風靡したDX7のプリセット・ベースを彷彿とさせる音色。キャリアとモジュレーターの周波数比を1:9や1:18にすることで発生する、独特の金属的な倍音が堪らない!!

せっかくなので、音色エディット方法も簡単に紹介しよう。例えばBank1-6の“DarkBass”の明るさを変えたい場合、まずは画面の下半分を確認することからスタート。ここに表示されている1〜4が各オペレーターで、□で囲まれているものがキャリア、○で囲まれているのがモジュレーターの役割をしている。モジュレーターが変調することで倍音を作っているので、LEVELボタンを押し、データー・エントリーでモジュレーター(この音色では2〜4)の変調レベルを上げると明るく、下げると暗く(丸く)なっていく。ベース的には高域成分が減ることで相対的に太く感じるので、3と4のレベルを下げることで太い音にすることができる。

さらに2系統のエフェクターやルーパーを内蔵していたり、KT-refaceという別売のアタッチメントを使用することでショルダー・キーボードとして使用できたりと、魅力が満載のreface DX。時代を超えたFM音源の魅力をぜひ楽しんでみてください!!(文:守尾崇)

製品情報

YAMAHA reface DX

メーカー希望小売価格●55,000円(税込)

Specifications

●鍵盤:37鍵HQ(High Quality)MINI鍵盤※イニシャルタッチ付き●音源方式:FM音源●最大同時発音数:8●音色:タイプ数12(アルゴリズム)、ボイス数32●エフェクト:ディスト―ション、 タッチワウ、 コーラス、 フランジャー、 フェ―ザ―、 ディレイ、 リバーブ●フレーズルーパー●ディスプレイ:フルドットLCD(128×64ドット)●接続端子:OUTPUT(L/MONO、R/標準フォーンジャック)、AUX IN(ステレオミニジャック)、 MIDI(ミニDIN IN/OUT)、ヘッドフォン(ステレオ標準フォーンジャック)、サステインペダル、USB(TO HOST)、DC IN(12V)端子●アンプ/スピーカー:アンプ出力2W×2、スピーカー3cm×2●電源:電源アダプターPA-130B(またはヤマハ推奨の同等品)、または単3乾電池×6(別売)※充電式ニッケル水素電池対応●寸法:530(W)×175(D)×60(H)mm●重量:1.9kg

お問い合わせ

ヤマハお客様コミュニケーションセンター シンセサイザー・デジタル楽器ご相談窓口 TEL.0570-015-808 つながらない場合は TEL.053-460-1666