シンセ・ベースの名器〜ROLAND TB-03

『FILTER Volume.03』掲載企画“シンセ・ベースの名器”では、ハードウェアからソフトウェア、さらにモジュールまで、強力なシンセ・ベースを生み出す現行機種をピックアップしました。そのレビューをWebでも公開！

音楽の一大ムーブメントを引き起こした
ベース・シンセサイザーTB-303を
現代の制作環境にフィットする機能を搭載し再現

世界のダンス・ミュージック・シーンに衝撃を与えたTB-303が、大幅な機能アップとともに復活を遂げた。2014年にACBテクノロジーを採用したAIRAブランドのベース・シンセサイザーTB-3が発売された後、2016年に本機TB-03がRoland Boutiqueシリーズの一環として発売されたのだ。印象的なシルバーの外観とコンパクトなサイズ、単3電池4本（またはUSBバスパワー）での動作、オリジナル同様のパラメーター・ノブなど、名機TB-303へのリスペクトを強く感じさせるモデルである。

特筆すべき機能としては、オーバードライブやディレイ／リバーブの内蔵エフェクト、パワード・ミニ・スピーカーの搭載、さらにCV／GATE以外にMIDIやUSB接続も可能となった点。外部のオーディオ入力に対応するMIX IN端子と24bit/96kHzのオーディオ・インターフェース機能は、DAWとの併用にも格段にユースフルだ。パターン・ライトのステップ・レコーディング・モードや4桁LEDディスプレイも追加されており、操作性を向上させる配慮が随所にうかがえる作りとなっている。

使用法の解説の前に、シーケンサー部の用語を説明しておく。1小節を16ステップに分割した演奏情報を“パターン”、複数のパターンを並べたものを“トラック”と呼ぶ。本機は96個のパターンと7個のトラックが使用可能である。

まずプリセットのパターンを聴いてみよう。MODEツマミをPATTERN PLAYにセットし、PATT. GROUPツマミでパターン・グループ（I〜IV）を選択、任意のパターンを選び、RUN／STOPボタンを押せばフレーズが流れ出す。TUNING、CUT OFF FREQ、RESONANCE、ENV MOD、DECAY、ACCENTの各ツマミを感覚的に回転させれば、リアルタイムで音色が変化して、うねりのあるスライドが特徴的なアシッド・サウンドが出力される。パターンのトランスポーズや、WAVEFORMスイッチでのノコギリ波／矩形波の切り替えも可能だ。リズムに関する細かな数値設定としては、小数点以下のテンポの変更やシャッフルの跳ね具合の調整にも対応している。

オリジナルのパターンを作るには、パターン・ライト・モードを使う。初心者には、上述の通り追加となったステップ・レコーディング・モードから習得するのがお勧めだ。システム設定でステップ・レコーディング・モードを選択して、ディスプレイでステップ・ナンバーを確認しながらノートや休符、タイやアクセントなどの演奏情報を入力する、という一般的なステップ・レコーディングと同様の方法となる。一方、デフォルトとなっているオリジナル・モードは、ピッチとタイミングを別々の行程で入力するというTB-303を再現した独自の操作となるが、入力用のボタンをあえて即興的にランダムに押してみると、思いがけずグルービーなフレーズが生まれることもあるので、この方法にもぜひトライしてほしい。

複数のパターンを組み合わせれば、オリジナル・トラックの完成となる。トラック・ライト・モードに設定し、トラック（1〜7）を選択してパターンを選んで順序を指定する、という手順を続けていけば良い。作成したトラックの修正（パターンのデリート／インサートなど）以外にも、ダル・セーニョ／セーニョやダ・カーポを用いた反復部分の設定も可能だ。

本家ローランドによる復刻モデルとなるTB-03は、ほかのRoland Boutiqueシリーズのみならず、TR-808などのビンテージ機器との同期や鍵盤ユニットK-25m（別売）も使用可能であり、外部との親和性と高い完成度を考慮すれば、ベース・シンセサイザーの最右翼と言っても過言ではないマシンだろう。（文：カトウミキオ）