シンセ・ベースの名器〜IK MULTIMEDIA UNO Synth Pro

『FILTER Volume.03』掲載企画“シンセ・ベースの名器”では、ハードウェアからソフトウェア、さらにモジュールまで、強力なシンセ・ベースを生み出す現行機種をピックアップしました。そのレビューをWebでも公開!

現代のアナログらしい贅沢な仕様による
太く迫力のあるベース・サウンドと
自由度の高いサウンド・メイキングが魅力

UNO Synth Proは、なんと3VCO、2VCFといった現代のアナログ・シンセならではの贅沢な仕様になっている。今回はそんなUNO Synth Proを、シンセ・ベース作りにどのように活用できるかにフォーカスしてみた。まずは簡単に、心臓部とも言えるフィルター・セクションとオシレーター・セクションについて解説しよう。

UNO Synthでも採用されたOTAマルチモード・フィルターに加え、自己発振する2ポール/4ポールSSI製ローパス・フィルターの2系列が用意されている。どちらのフィルターもレゾナンスを上げても音痩せしにくく、レベル・コントロールもしやすい。そしてこの2つのフィルターは、直列にも並列にもルーティングすることができる。まずは慣れるために、それぞれのフィルターを個々に試しながらクセをつかむと良いだろう。

次に注目すべきはオシレーター・セクション。3つのオシレーターは、三角波から矩形波までモーフィングさせながら波形を決めていく。そしてここで特筆すべきは、この3つのオシレーターのうち2つは、WAVE1(OSC1)にSYNC、FMアマウントが可能なのだ。ただ気を付けなければならない点もある。オシレーターが3つもあるので、太いサウンドを作ろうとして無理矢理3つの波形をミックスすると、逆に音痩せすることもあるので注意だ。この後音を太くするコツを説明していこう(カッコ内には参考までにパラーメーターの数値を記してある)。

●超ド級Minimoog的極太シンセ・ベース “Phat Bass”
WAVE1と2で同じノコギリ波を使い、WAVE2を軽くデチューンさせる。WAVE3をサブオシレーターとして、三角波を1オクターブ下に設定。フィルターはSSI製の4ポール・フィルターをシングルで通し、レゾナンスはかけずにフィルターを9時方向程度(25)に絞る。ここでFILTER ENVアマウントを3時方向程度(40)に設定し、FILTER ENVのアタック(30)とディケイ(50)を軽く上げる。ざらつき感を加減したいときは、フィルター・エンベロープのアマウント量を調整すると良いだろう。

●音痩せしないダブルSYNCベース “SSync Bass”
3つのWAVEはすべて矩形波。WAVE2、3は、WAVE1にSYNCをかけて、WAVE2は高い不規則倍音を足すためにTUNEをあえて+17st。WAVE3は低い倍音を足すために-2st。これだけでかなり強烈なシンク・サウンドになる。フィルターは2つを直列に。シンク・サウンドをより強烈にするために、レゾナンスはどちらも3時方向(104)、両方ともCUTOFFは絞り気味にして、両方のFILTER ENVを軽く上げて、アタック(30)、ディケイ(50)でフィルターに軽く動きを付ける。高域の不規則倍音に動きを付けるために、LFO1をOSC2 Levelに、マトリクスを使ってモジュレーション(64)させる。これだけ過激なセッティングをしても、音はあまり痩せることはないのがすごい。

●軽やかでも太さも持ち併せたFMベース “Thick FM Bass”
WAVE1をノコギリ波から少し矩形波側に。+1オクターブ上の矩形波WAVE2を、WAVE1に80%でFMアマウントする。そしてここに太さを出すために、WAVE3を軽くデチューンさせたものをさらにWAVE1に80%でFMアマウントする。ポイントは、FMアマウントが強すぎると音程感を失うので、ギリギリを攻めるのがコツ。FILTERは自由にかけて問題ないが、ここではあえて並列に。FILTER1は絞って低音を作り、FILTER2は軽く絞ってFMらしさを残した。

いかがだろう。UNO Synth Proのシンセ・ベース・サウンドの守備範囲はかなり広いことがわかっていただけたと思う。専用エディターも用意されているので、音作りはとてもしやすい。バラエティに富んだシンセ・ベース・サウンドを作りたいなら、UNO Synth Proはアリだ!(文:江夏正晃 FILTER KYODAI/marimoRECORDS)

専用エディターの画面

製品情報

IK MULTIMEDIA UNO Synth Pro

価格●オープン・プライス(市場予想価格:107,800円)

Specifications

●鍵盤:Fatar製フルサイズ37鍵シンセアクションキーボード(ベロシティー/アフタータッチ対応)●音源タイプ:アナログ方式●オシレーター:3基(同時発音数:1ボイスまたは3パラフォニック)●ノイズ:ホワイト●連続可変ウェーブフォーム:三角波、ノコギリ波、パルス波(PWM可能)●フィルター:2基(2ポールの OTA HPF/LPF、2ポール/4ポールのSSI LPF)●LFO:サイン波、三角波、矩形波、ノコギリ波、ランダム、サンプル&ホールド●モジュレーションディスティネーション:16マトリックス●エンベロープジェネレーター:2基のADSR(フィルター用、アンプ用)●プリセット:合計256プリセット(プログラマブル)●シーケンサー:64ステップシーケンサー、ステップ/リアルタイムレコーディング対応、最大40パラメーターのオートメーション●アルペジエーター:10種類のモード、4オクターブ幅●オーディオエフェクト:アナログドライブ、3スロット合計12種類のデジタルエフェクト(リバーブ、ディレイ、モジュレーション)●接続端子:オーディオアウト(6.4 mm TRSフォーンジャック)×2、ヘッドフォンアウト(3.5 mmフォーンジャック、ミニステレオ)、オーディオイン(3.5 mmフォーンジャック、ミニステレオ)、MIDIイン/アウト(標準5ピンDINおよびUSB)、CV/Gate(アサイナブル2系統、3.5 mmミニステレオジャック)、USB(Micro USBタイプ、USB-MIDI)●電源:専用ACアダプター(付属)●外形寸法:550(W)× 300(D)×70(H) mm●重量:5.8kg

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フックアップ TEL.03-6240-1213