シンセ・ベースの名器〜KORG monologue

『FILTER Volume.03』掲載企画“シンセ・ベースの名器”では、ハードウェアからソフトウェア、さらにモジュールまで、強力なシンセ・ベースを生み出す現行機種をピックアップしました。そのレビューをWebでも公開!

シンプルな操作性で簡単に音作りができる
アナログならではの太さと温かみを備えた
コンパクトなモノフォニック・シンセ

“monologue”の名が示すように、単音(モノ)に特化したアナログ・シンセ。その“コンパクト”なサイズや価格にもかかわらず、出音はかなり太いです。操作は明解で、2つのVCO、FILTER、EG、LFO、DRIVE(歪み、倍音用)など、各パラメーターをフィジカルに操作可能。パラメーターが一望できると、その分だけ脳の消費カロリーが減るので有難いですよね。また、ライブでの使用を考えると、ツマミで直接操作できるのはかなり助かります。

ところでこのmonologue、シンセ・ベース用途のキーボードとして最強クラスなのではと思います。その理由ですが、まずは可搬性の高さ。サイズは横幅35cm、奥行27.6cm、高さ7.6cm。つまり、運搬時にあまり場所を取りません。重さは1.7kgと、キーボードとしてはかなり軽い部類です。これなら、電車移動の時も2台目のキーボードとして持っていくことに躊躇しないと思います。鍵盤数は、コンパクトな筐体に合わせて2オクターブ分。ただし最低音がエレクトリック・ベースと同じE音なので、ベースの音域としては十分にカバーできていると思います。アナログ・シンセなので、音色は言うに及ばず。太さと温かみを備え、かつ迫力のある低音のサウンドを聴くことができます。

参考までに、シンセ・ベース用の音作り例をいくつか紹介します。まずはサイン波系のベース。monologueでサイン波系のベースを鳴らす場合、少しだけ工夫が必要です。というのも、VCOの波形の選択項目にサイン波がないからです。そこで、代わりに三角波を選択し、さらにカットオフで倍音を削ることによってサイン波に近い波形を作ることにします。ちなみに、この時に便利なのがオシロスコープ。有機ELディスプレイに現在鳴っている音が波形としてリアルタイムで表示されます。カットオフが全開の時は綺麗な三角波を示しますが、フィルターを絞って倍音を削っていくと、徐々に角が丸くなってサイン波の形に近づいていきます。耳だけの判断に確信が持てない時も、視覚的に確認できると安心です。

続いては、ブリブリとした音色。monologueは2オシレーターなので、VCO1はメインの音色ということでノコギリ波を選択、VCO2は色付け用、という構成にします。VCO2は波形の他にピッチも調整できるので、音を太くするために少しデチューンしてみます。この時も、ディスプレイがとても頼りになります。ピッチのノブを左右に回すと、ディスプレイに現在のピッチの値が+5などと表示されます。さらに、DRIVEという倍音・歪み成分用のツマミもあるので、調整してさらに迫力あるサウンドに仕立てることもできます。

3つめは、ハービー・ハンコック大先生によるファンクの殿堂「カメレオン」などで聴ける、いわゆる“ミョンミョン”とした音色。VCOはノコギリ波で、フィルターは絞り気味、レゾナンスを真ん中に。EG部は“ターゲット”をカットオフに設定することで、時間とともに周波数が変化するようにします。通常、シンセのEGはADSR(アタック、ディケイ、サスティン、リリース)でコントロールしますが、monologueはアタック、ディケイ(=モードによりリリース兼用)を基本に、サステイン値をマックスに固定し“ゲート”を有効にするモードを組み合わせることでさまざまな効果を得る仕組みです。

monologueは操作性がシンプルでわかりやすく、また可搬性にとても優れているので、ベースが本業の方にもぜひ持っていてほしい1台です。シンセ・ベースが使われている楽曲は、ライブの時も近い音色で再現するのが理想ですし、また見た目の面でも、このmonologueをすぐ脇に置いて所々で演奏すれば、すごく“映える”のではないでしょうか。音も見栄えも良くなるので、すごくお得な1台だと思います。(文:ヒロヒロヤ)

製品情報

KORG monologue

メーカー希望小売価格●41,800円(税込)

Specifications

●鍵盤25鍵(スリム鍵盤、ベロシティ対応)●音源:アナログ音源●プログラム:100(工場出荷時は80のプリセット・プログラムと20のユーザー・プログラム)各プログラムにはマイクロチューニングとシーケンス・データの設定を含む●主なシンセ・パラメーター:MASTER=DRIVE、VCO1=WAVE(SAW/TRIANGLE/SQUARE)、SHAPE、VCO2=OCTAVE、WAVE(SAW/TRIANGLE/NOISE)、SYNC/RING、PITCH、SHAPE、MIXER=VCO1、VCO2、FILTER=CUTOFF、RESONANCE、EG=TYPE(AD/AGD/G)、ATTACK、DECAY、INT、TARGET(PITCH/PITCH 2/CUTOFF)、LFO=WAVE(SAW/TRIANGLE/SQUARE)、MODE(FAST/SLOW/1-SHOT)、RATE、INT、TARGET(PITCH/SHAPE/CUTOFF)●シーケンサー:16ステップ・モノフォニック・シーケンサー、最大4つのパラメーターをモーション・シーケンス可能●入出力端子:ヘッドホン端子(ステレオ・フォーン・ジャック)、OUTPUT端子(モノラル・フォーン・ジャック)、AUDIO IN端子(モノラル・フォーン・ジャック)、SYNC IN端子(3.5mm ミニ・ジャック)、SYNC OUT端子(3.5mm ミニ・ジャック)、MIDI IN端子、MIDI OUT端子、USB B端子●電源:単3形乾電池(アルカリまたはニッケル水素)6本、またはACアダプター(DC9V)KA350(別売)●外形寸法:350 (W)x276(D)x76(H)mm●質量:1.7 kg

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