シンセ・ベースの名器〜novation Bass Station II

『FILTER Volume.03』掲載企画“シンセ・ベースの名器”では、ハードウェアからソフトウェア、さらにモジュールまで、強力なシンセ・ベースを生み出す現行機種をピックアップしました。そのレビューをWebでも公開!

フィルターにこだわりのAcidモードを搭載し
太く過激なサウンドを生み出す
シンセ・ベース演奏にも適したモノシンセ

毎日ヤマハQY20というコンパクトな音源内蔵シーケンサーを持って高校に通っていた筆者にとって、ノベーションとの出会いはMM10-XというQY20をマウントできる2オクターブのMIDI鍵盤ユニットで、その後も初代Bass Stationを2度買い直したり、同Bass Station Rack、K-Station、LaunchPadシリーズと愛用してきたので、発売当初からずっと気になっていたBass Station II。

名前こそBass Stationだが、シンク、リングモジュレーションも可能な2つのオシレーター+サブ・オシレーターにマルチモード・フィルター、LFOもEGを2機ずつ搭載し、ドライブ回路も2系統用意され、さらにシーケンサーやアルペジエーターも搭載し、音色プリセットにも対応と、十分なスペックでリードやSEにも対応できるアナログ・シンセサイザーである。そしてなんと発売から5年も経ってから、無償アップデートにより2つのオシレーターを個別に鍵盤演奏できるパラフォニックに対応するなど、機能を大幅に拡張。さらに翌年には、後述するAFXモードという驚きの新機能まで追加されるなど、発売から10年近く経った今でも競合する製品に十分に張り合える魅力だらけの製品である。

アナログ・シンセ・リバイバルブームの初め頃、1993年に初代Bass StationがTB-303を強く意識して登場した製品だったこともあり、本機も当然のごとくアシッド・ベースには適している。なにせフィルターには12db、24dbのマルチモードのほかに、こだわりのAcidモードを搭載しているほどで、さらにドライブ回路が2系統用意されていて、Overdriveはフィルターの前段にあり、上げるほどに全体の音は太く丸い印象に。これに対してDistortionはVCAの直前に配置されており、レゾナンスによって強調された帯域をさらに過激なビキビキとしたサウンドに変貌させてくれる。

守備範囲の広さはそんな基本スペックからもわかるとおりだが、2系統のオシレーターはそれぞれのピッチを自在に変更できる。SubOscは-1、-2オクターブ切り替えが可能で、波形も3種類から選択できる上にアップデート後はチューニングも変更もできるので、いわゆるモーグ系ベースのような3OSCならではの表現まで可能となっている。また、2機搭載されたLFOは各部変調によって金属音が生じるギリギリくらいの周波数に止まっているが、心配には及ばない。本体右端のEFFECTSというセクションにOsc Filter Modというツマミがあって、これにより可聴範囲を超えるほどの周波数でフィルターを変調できる。また、オシレーター1、2を個別のレートでグライドできるモードも追加されていて、非常に気持ちの良い効果が得られる。

特筆すべきはAFXモードで、各鍵盤にシンセの基本パラメーターすべてを使った別々の音色を割り当てて、瞬時に弾き分けられる。検証したところ、25鍵+上下1つずつ27のまったく異なる音色を何のラグを感じることもなく演奏、またはシーケンサーからドラム・パターンのように鳴らすことが可能だった。ドラム・キットのような極端に異なる音色を割り当てることで、ウォブル・ベースをはじめ、EDMなどに見られる突拍子もない過激な音色変化をさせることもできるし、1つの音色として通常のキー・トラッキングなどでは得られないような、各鍵盤で微調整された効果を得ることも可能だ。

シンセサイザーが特別な存在でなくなり、ベーシストがベースを持ったままシンセ・ベースを弾くこともごく当たり前なった昨今、本機は軽量コンパクトなシンセでは珍しくアフタータッチにも対応していて、片手でもビブラートがかけられるなど、まさにそういったプレイヤーにもピッタリの1台だと言えそうだ。(文:Yasushi. K)

製品情報

novation Bass Station II

価格●オープンプライス(市場予想価格:59,400円)

Specifications

●25鍵盤シンセアクションキーボード(アフタータッチを行い変調可能:フィルター周波数、LFO 1からOsc Pitch、Osc 2スピード)●プリセット×64、ユーザーパッチ用のスロット×64●オシレーター:Osc 1、Osc 2、Sub Osc(3)、ノイズジェネレーター●Osc 1と2:波形間の選択=サイン波、三角波、ノコギリ波、矩形波/可変パルス幅、機能=シンク1と2、デチューン、オクターブレンジ、ピッチベンド、モジュレーションエンベロープおよび/またはLFO 1からのピッチモジュレーション、モジュレーションエンベロープおよび/またはLFO 2からのパルス幅モジュレーション●OSC 1にトラックされるSub Osc(3):波形間の個別選択=サイン、スクエア、ナローパルス、機能=Osc 1にトラックされるすべてのモジュレーションとチューニング、個別オクターブ選択●フィルター:タイプ=アシッドタイプ(ダイオードラダーフィルターデザイン)、クラシックタイプ(オリジナルバスステーションから派生)、機能=カットオフ、レゾナンス、オーバードライブ、モジュレーションエンベロープデプスに対するフィルター周波数、LFO 2デプスへのフィルター周波数、フィルターの選択=ローパス、バンドパス、ハイパス、12dBスロープ、24dBスロープ●エンベロープ:2つのADSRエンベロープ(アタック/ディケイ/サステイン/リリース)、アンプエンベロープ、モジュレーションエンベロープ、両方のエンベロープを組み合わせた操作●LFO:2つのLFOそれぞれで選択可能=トライアングル、ノコギリ、スクエア、サンプルとホールド、両方のLFOでレートとディレイタイムを個別に調整可能、Key Sync LFO 1&2、LFO 1と2でのLFOスルー(LFO波形上でのローパスフィルター)●入力と出力MIDI用USB 2ソケット(ホストコンピューターを介したBass Station IIの接続と電源供給用)、1/4インチTRSジャックでのモノ出力、1/4インチTRSジャックでのヘッドフォン出力、1/4インチTRSジャックでの外部出力、1/4TSジャックでのサステインペダル入力、5ピンDINのMIDI入出力ポート、DC電源入力、電源オフ/DC電源/バスパワーの切替●外形寸法:457(W)×273(D)×76(H)mm

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