ルックスもサウンドも魅力の現行シンセサイザー ~ KORG multi/poly

『FILTER Volume.08』掲載特集“シンセサイザーのデザイン”では、魅力的なルックスを持ち個性的なサウンドが出せるシンセサイザーをピックアップ。それぞれの機種の特徴に着目しレビューした記事をWebでも公開!

Mono/Polyのデザイン骨子を引き継ぎ
多角的に発展したアナログ・モデリング・シンセ

コルグmulti/polyは、1981年に同社からリリースされたアナログ・シンセの名機Mono/Polyを発想の大元としながら、多層的、多角的に発展させたモデルだ。Mono/Polyはその名が示すとおり、モノシンセとしてもポリシンセとしても使えるというのがコンセプトだった。

Minimoogの3オシレーターを超える4 オシレーターを持ち、4オシレーターのモノシンセとしても、同時発音数最大4音のポリシンセとしても使うことができた。そうは言っても搭載していたフィルターやアンプは1つずつだったので、標準的構成のシンセサイザーの1ボイスごとにオシレーター、フィルター、アンプが確保されたものとは違う仕様だったわけだが、その一方で、4つのオシレーターをさまざまなセッティングを駆使して作るインパクトのあるリード音などは、まさにMono/Polyの独壇場だったと言っていい。

そしてmulti/polyの持つ特徴的な、紺と黒を基調としたパネルとサイドウッドといったデザインの骨子は、もちろんこのMono/Polyから引き継いだものだ(ちなみに兄弟機とも言えるPolysixも同系統の配色およびデザインであった)。他の機種にない構成のモジュラーをコンパクトなボディに入れ込むというこのマシンのコンセプトどおり、各セクションが黒線で区切られ、直観的にうまく配置されている。パネル中央のディスプレイやパネル左上のKaoss Physicsコントロール・パッドも印象的だ。赤く光るボタン類も緑に光るオクターブ・ボタンもとてもスタイリッシュで機能的だと思う。

multi/polyの内部構成は、Mono/Poly4台分(=4レイヤー)プラスアルファを基調としていて、サウンド面でも正当な後継者ぶりを発揮しているわけだが、もちろんmulti/polyはMono/Polyの単なるデジタル・リメイク版ではまったくない。

まずオシレーターは、歴史的なイースト・コースト・タイプである“CLASSIC”、ウエスト・コースト・タイプである“WAVESHAPER”、そして最新のデジタル・ウェーブテーブルから選ぶことができ、シンクやMono/Polyで特徴的だったクロス・モジュレーション、さらにはその同時使用も可能だ。アナログ・シンセのピッチの不安定さ、そしてそこから来る音の厚みの設定も可能。ポルタメントのカーブも有名ビンテージ・シンセなどの6タイプから選ぶことができる。

2機あるフィルターはいずれもMono/Poly、MS-20、Mini、SEなどをシミュレートしている。エンベロープ・カーブはMono/Poly、MS-20、Arp Odysseyなどの特徴をプリセットしていて、それら名機のVCAレスポンスまでもモデリングしている。リトリガー時のエンベロープの挙動が、リリースが長い場合は0以上の値から立ち上がるようになっているのもアナログ・モノシンセ的だ。Mono/Polyのトリガーごとに発音オシレーターが入れ替わる“ラウンド・ロビン・オシレーター・トリガー”は、“Layer Rotate”という機能で再現されている。まさに4台のモノシンセを1つの鍵盤ユニットでコントロールするようなモジュラー構成となっているわけだ。

multi/polyには、Mono/Polyにも装備されていたアルペジエーター、コード・メモリーに加え、wavestateの機能を発展させたモーション・シーケンシング2.0、modwaveに搭載されたX-Yパッド上でさまざまな音色変化を演出できるKaoss Physicsが追加されている。KaossPhysicsをオンにすると、懐かしの“ブロック崩し”ゲームなどのようにX-Yパッド上でのコントロール・ポイントが転がったり、壁にぶつかったりするボールのように動くようになり、ディスプレイ表示もサウンド変化も非常に楽しい。

こうして過去の名機と現代の技術やサウンドを結びつけていくmulti/polyは、ある意味後継機種の理想型と言っていいのではないだろうか。(文:堀越昭宏)

製品情報

KORG multi/poly

メーカー希望小売価格●99,000円(税込)

Specifications

●鍵盤:37鍵、セミ・ウェイテッド (ベロシティおよびリリース・ベロシティ対応)●最大同時発音数:60ボイス(設定によっては最大ボイス数が変化)●音源システム:アナログ・モデリング・シンセシス●コントローラーMod Wheel、Pitch Wheel、Kaoss Physics、4xMod Knobs●その他のソース4xEnvelopes、5xLFOs、8xMod Processors、3xKey Track、Seq Lanes A-D、Step Pulse、Tempo、Program/Performance Note Count、Program/Performance Voice Count、Poly Legato、Velocity、Exponential Velocity、Release Velocity、Gate、Gate+Damper、Note-On Trigger、Note-On Trigger+Damper、Note Number、Aftertouch and Poly Aftertouch (external MIDI only)、MIDI CCs+/-、MIDI CCs+●Pre FX:デシメーター、グラッフィックEQ、ギター・アンプ、モダン・コンプレッサー、パラメトリックEQ、レッド・コンプレッサー、リング・モジュレーター、トレモロ、ウェーブ・シェーパー、ビンテージ・ディストーション●Mod FX:ブラック・コーラス/フランジャー、ブラック・フェーズ、CX-3ビブラート・コーラス、EPコーラス、ハーモニック・コーラス、モダン・コーラス、モダン・フェーザー、オレンジ・フェーズ、Polysix アンサンブル、スモール・フェーズ、トーキング・モジュレーター、ビンテージ・コーラス、ビンテージ・フランジャー、ビンテージ/カスタム・ワウ、Voxワウ、CX-3ロータリー・スピーカー●Delay:L/C/Rディレイ、マルチバンドModディレイ、リバース・ディレイ、ステレオ/クロス・ディレイ、テープ・エコー●リバーブ:アーリー・リフレクション、Overb●マスターEQ:4バンド・パラメトリックEQ●入出力端子:ヘッドホン端子、OUTPUT L/MONOとR端子、DAMPER端子、MIDI IN/OUT端子、USB B端子●外形寸法:565(W)×319(D)×93(H)mm●質量:3.5kg

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