シンセ・ベースの名器〜YAMAHA reface CS

『FILTER Volume.03』掲載企画“シンセ・ベースの名器”では、ハードウェアからソフトウェア、さらにモジュールまで、強力なシンセ・ベースを生み出す現行機種をピックアップしました。そのレビューをWebでも公開!

ユニークなオシレーター・セクションを持ち
スタンダードな音色から複雑で現代的な音色まで
作成可能なアナログ・モデリング・シンセ

refaceシリーズは4機種(CS、CP、DX、YC)が発売され、どれも場所を取らず可搬性の良いミニ・キーボード仕様でありながら、プロレベルのサウンド・クオリティを持っている。“CS”は70年代以降に発売されたヤマハのシンセサイザー・シリーズから命名されている。

reface CSはアナログ・モデリング・シンセサイザーなので、後述するOSCセクションとEGセクションの特徴以外、一般的な減算合成方式のシンセサイザーとほぼ同じ構造を持っている。音色のメモリーができないのでスマホなどでパネルの写真を撮っておくか、Soundmondoアプリを使えば音色の保存・管理ができるようになっている。

OSCセクションの特徴とは、まず波形選択(TYPE)スライダーで単波形を選ぶのかと思いきや違っていて、ほかのシンセだったらOSCを2つ以上使って作るいわば波形カテゴリー(マルチソー、パルス、オシレーター・シンク、リングモジュレーション、フリケンシーモジュレーション)を選び、その上で単波形の音色からどれほど変調させていくかをTEXTUREとMODの2つのスライダーでコントロールす
るシステムになっている点だ。これによって、わずか3つのスライダーだけでシンプルな音色から複雑で現代的な音色までをカバーしている。

EGセクションはADSRが1系統しかないが、変調先をFILTERのみ(FEG)、AMPのみ(AEG)、その中間というように設定でき、これによって多彩な音色を得ることができる。

さて、それではreface CSを使ってシンセ・ベース音色を作っていこう。3つの方向性に分けてみたが、PORTAMENTセクションでMONOを指定し、ポルタメント速度を必要に応じて設定することは一緒だ。

●サブベース系
倍音が少なくダークな音色のサブベースは、ボトムを支えるためにとにかく太い音が必要とされる。この機種では、OSCセクションでマルチソー波形を選ぶとTEXTUREスライダーでオクターブ下のサブオシレーター量を決められるので、まずはそれを最大にしよう。コーラスなどはかけないのが普通だが、もしかけたい場合、MODスライダーを上げていくとモノ定位のコーラス効果が得られる。EFFECTセクションのステレオ・コーラスと使い分けよう。EGはのちの変更を考えつつまずはFEGにしておき、ADSRのS(サステイン・レベル)はとりあえず最大(ゼロだとほぼ音が出ない)、A(アタック・タイム)、D(ディケイ・タイム)、R(リリース・タイム)は逆にほぼゼロで大丈夫だ。FILTERセクションのRESONANCEは基本的にゼロで、CUTOFFで最終的な音色の明るさを調整していく。

●ファンキー系
ベースやギターのワウ・エフェクトにも似た“シンセ・ベースといえばこれ!”という定番的な音色だが、これもやはり太い音にしてあげたい。サブベース同様に、OSC波形はマルチソー、TEXTUREでサブオシレーター量を最大に設定する。EGはFEG、ADSRのSは半分以下で、Dで減衰ないし音色変化時間を調整する。RESONANCEはこの機種では半分ほどを基準にすると良いようだ。そしてCUTOFF、ADSRのDやSを行き来して調整していくと出来上がりだ。

●特殊・過激系
現代的な変調感や広がりが欲しい場合には、マルチソー波形+MODスライダー上げによるSuperSaw波形や、パルス波形+LFO(→OSC)によるPWM波形、EFFECTセクションのCHO/FLAを試してみよう。さらに過激な音が欲しい場合には、EFFECTセクションのDIST(ディストーション)を使うのが最も手っ取り早いが、オシレーター・シンク/リングモジュレーション/フリケンシーモジュレーションを選び、TEXTUREやMODを上げ下げするだけでも多種多様な音色が得られるので、ぜひ試してみてほしい。(文:堀越昭宏)

製品情報

YAMAHA reface CS

メーカー希望小売価格●55,000円(税込)

Specifications

●鍵盤:37鍵HQ(High Quality)MINI鍵盤※イニシャルタッチ付き●音源方式:AN音源 (Analog Physical Modeling)●最大同時発音数:8●音色:タイプ数5●エフェクト:ディスト―ション、 コーラス/フランジャー、 フェ―ザ―、 ディレイ●フレーズルーパー●接続端子:OUTPUT(L/MONO、R/標準フォーンジャック)、AUX IN(ステレオミニジャック)、 MIDI(ミニDIN IN/OUT)、ヘッドフォン(ステレオ標準フォーンジャック)、フットコントローラー、USB(TO HOST)、DC IN(12V)端子●アンプ/スピーカー:アンプ出力2W×2、スピーカー3cm×2●電源:電源アダプターPA-130B(またはヤマハ推奨の同等品)、または単3乾電池×6(別売)※充電式ニッケル水素電池対応●寸法:530(W)×175(D)×60(H)mm●重量:1.9kg

お問い合わせ

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