ライブで輝くシンセサイザー 〜 UDO AUDIO Super 6 Desktop

現在、ライブ向けのシンセサイザーとして多種多様なモデルがリリースされています。『FILTER Volume.05』掲載企画“シンセサイザーとライブ”では、独自のキャラクターを持つ注目機種をピックアップ。“ライブで使用する”という視点でそれぞれをレビューした記事をWebでも公開!

アナログ・シンセのような直感的操作で
ゴージャスなサウンドを自由自在に操り
バイノーラル・モードで響かせる

レビューのため最初に音を出した途端、うん?と強烈に不思議な違和感を覚える。サウンド自体は聴き覚えがあるのだが、何かがはっきりと違う。しばらくパッチのプリセット・サウンドをいろいろ鳴らしてみてようやく気づいた。聴こえ方だ。今までのシンセ・サウンドとは質感が大きく違う。非常に上質なそのサウンドは、単に音が太いとか、派手でエフェクティブな音が出せるとかの話ではなく、音の定位や広がり方、揺れが新次元なのだ。結果このシンセは極めて現代的で、音色のみならず、その音色の空間における響かせ方や、聴こえ方までこだわりたいクリエイターは虜になるに違いない。シンセ・マニアの誰しもが好きであろう、伝統的なアナログ・シンセのサウンドとデザインを最先端のシンセシスと融合させ、品を失うことなく(ここが1番の推しポイント、結果このシンセはとにかく音楽的である)次なるサウンドの創造と可能性を目指した機種と言える。目をつぶれば、自宅のモニターの前にいながら広大なサウンド空間に自分が浮かんでいるような感覚。そしてそのサウンドは、繊細なものからアグレッシブなものまで非常に多彩でありながら、総じて上質、ゴージャスさを兼ね備えている。それではこのイギリスらしさ全開の新感覚シンセをライブに使うなら、という視点でレビューしてみよう。

ライブにお勧めしたい第1のポイントは、本機の操作が非常にシンプルで、直感的操作が可能なところである。新たに登場する新感覚シンセの中には、操作やサウンド・メイキングが難解すぎるものも多い。しかし本機はアナログ・シンセをいじったことがある人なら誰でもすぐに操作可能だ。2オシレーター、VCF、VCA、2ADSR、2LFO、アルペジエーター/シーケンサー、ディレイ、コーラスとまさに昔のアナログ・シンセのようなパネル構成。ツマミやスイッチ類はビンテージ・シンセ好きにはたまらないデザインとなっており、各セクション配置もシンセを知り尽くしているからこそと言える。そしてすべてのノブやスイッチに瞬時にアクセスでき、同時にいくつもを任意の量だけ動かしながら、サウンドの変化や偶発性を存分に楽しめる。その操作フィーリングは、シンセ好きなら誰でも経験がある“サウンド実験没入モード”にすぐさま突入せずにはいられない。各パラメーターの操作性も、現代シンセらしく非常にスピードとキレのある感を受けた。

昔のシンプルなアナログ・シンセを楽しむように操作ができるのに、出てくるサウンドは非常にビビッド(DDSオシレーターの周波数特性や定位感は恐ろしく良い)というこのギャップ、ぜひこの新感覚はご自身の耳で確かめてほしい。

本機最大の特徴であるバイノーラル・モードでは、ステレオよりも遥かにダイナミックな3次元に音を動的変化させることが可能だ。この新感覚で多様な音のうねりや移動、揺れ、こういったものを最大限活かしたライブができたなら、それは洒落ているだろうなと思う。シンセという楽器を知らない人にもその面白さを伝えることができるかもしれない。12ボイスがペアとなったスーパー・ボイスがもたらす豪華なサウンド空間、各スーパー・ボイスのパラメーターを左右独立してコントロールして、複雑に音を変化させるのもいいだろう。

楽曲を聴かせるためのライブももちろんいいが、こういった現代的な機種は、もっと現代音楽的な発想のライブやセッション、実験、音楽以外のアートとのコラボレーションなどにも活かすべきシンセと言える。このシンセを生み出したジョージ・ハーン氏も言っている。“実験し、演奏し、持ち歩き、学び、そしてシンセを愛してください”。まさにそれが可能な機種だ。これが2つ目のポイント。もちろんライブでなく、サウンド・デザインに並々ならぬこだわりを持つすべてのクリエイターにお勧めできる機種と言える。

操作こそ簡単だが、そこは現代シンセ。DDSオシレーター1の波形はなんと32種類選択可能で、モジュレーション・マトリクスも充実しており、サウンド・デザインは無限である。(文:YANCY)

製品情報

UDO Audio Super 6

価格●499,800円

Specifications

●DDS 1(オシレーター1):FPGAベースの50MHzサンプリングされたスーパーウェーブ・オシレーターコア+セントロイド・オシレーター、波形=サイン/ノコギリ波/矩形波/三角波/ノイズ/およびユーザーによるダウンロードが可能な16種類の代替波形●DDS 2(オシレーター2):FPGAベースの50MHzサンプリングされたアルゴリズム・オシレータ・コア、波形=サイン/ノコギリ波/矩形波/三角波/ノイズ/パルス、DDS 1にハードシンク可能、LFOモード、サブ・オシレーター・モード●DDSモジュレーター:DDS 1とDDS 2のピッチをLFOとエンベロープでモジュレーション可能、DDS 1は1/2スーパーモードとフルスーパーモードを選択可能、スーパー波形のシスター・オシレーターによるデチューン・スプレッド・コントロール、パルス波のパルス幅コントロール、LFOまたはENV 1を使用したスーパー波形のシスター・オシレーターによるデチューン・スプレッド・モジュレーション、標準波形のパルス幅をモジュレーション可能、DDS 2からDDS 1へのクロス・モジュレーション●LFO 1:ローフリーケンシーとハイフリーケンシー・モード、バイノーラル・サウンド・エンジンを利用したステレオ・エフェクト、ワンショット・モードで追加のエンベロープとして動作、ハイフリーケンシーLFOのキーボード・トラッキングモード、ドローンまたは第3のオシレーターとして使用可能●フィルター:アナログ4ポール・ローパス・フィルター(自己発振可能)、2段階のオーバードライブ、固定フリーケンシーのハイパス・フィルター、またはローパス・フィルターにリンクしたバンドパス・レスポンス●アンプ:固定または可変エンベロープ(ENV 2)モジュレーションを選択可能なアナログVCA●ENV 1:反転可能なホールド、アタック、ディケイ、サスティン、リリース ステージ、モジュレーション・マトリクスでマッピング可能、LFOやFMソースとして使用できるルーピング・モード●ENV 2:アタック、ディケイ、サスティン、リリース、複数のディスティネーションを選択可能●エフェクト:デュアルモード・ステレオ・コーラス、同期/モジュレーション可能なステレオ・ディレイ●アルペジエーター/シーケンサー:MIDI同期可能なマルチモード・アルペジエーター、64ステップシーケンサー、●入出力:オーディオ入力(ステレオ3.5mmジャック)、メインL/R出力(アンバランス3.5mmジャック)、MIDI In/Out/Thru、USB IO(MIDI コントロール、パッチ、シーケンス、波形管理用)、エクスプレッション・ペダル入力、サスティン・ペダル入力、ヘッドフォン●外形寸法:452(W)×293(D)×103(H)mm(ノブを含む)●重量:5.5Kg

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