ライブで輝くシンセサイザー 〜 KORG Nautilus AT

現在、ライブ向けのシンセサイザーとして多種多様なモデルがリリースされています。『FILTER Volume.05』掲載企画“シンセサイザーとライブ”では、独自のキャラクターを持つ注目機種をピックアップ。“ライブで使用する”という視点でそれぞれをレビューした記事をWebでも公開!

さまざまなエディットも“クイック”に実行し
使いたい音色に瞬時にアクセス可能な
アフタータッチ装備のフラッグシップ機

コルグのフラッグシップNautilusに、アフタータッチ機能を搭載、Nautilus ATへと進化した。9種のサウンド・エンジンを装備する万能シンセサイザー、ここではライブでの使用にフォーカスして、その魅力を探っていこう。

Nautilus ATは、ベーシックなキーボードとしても非常に充実している。ピアノには、専用のSGX-2音源を内蔵。豊富なサンプルと、弦の共鳴など実機さながらの挙動を再現。コルグらしく硬質な芯がありながら、豊かに響くサウンドも素晴らしい。モノラル・ピアノにステレオのアンビエンスをミックスできる専用の音色があるのも素晴らしく、ビシっと音像が決まり、ライブP Aとの相性も抜群だ。さらに、伝統のM1ピアノやOasysから受け継がれた小容量サンプル・ピアノはエレクトロ系ライブで活躍しそうだ。

エレピにはEP-1音源、オルガンにはCX-3音源と、専用音源により実機のサウンドを高精度に再現している。何より素晴らしいのは、アンプやスピーカーのセッティングも含めて簡単に調節できるところだ。強く弾くといい感じに歪むグルービーなエレピや、和音で滲むようにオーバードライブするハードなオルガンなど、ライブ・プレイ中に威力を発揮するだろう。また、MOD-7 音源によるFMエレピも可能。サンプルではなく、実際にシンセシスしているので、タッチによる生々しい変化が楽しめる。なお、Nautilus ATでは、タッチスクリーンでドローバーを操作することも可能だ。

Nautilus ATの操作は、大型タッチスクリーンと能率良く配置された操作ボタンやツマミで見た目以上に簡単に行える。6つのクイック・アクセス・ボタンは、階層に関係なくメイン画面やエディット画面の主要パラメーターに瞬時にアクセスできる。音色エディットでは、3モード×6つのリアルタイム・ツマミが活躍。フィルターやエンベロープ、エフェクトなど、ライブ演奏時にキモとなるパラメーターを即座に変更できるし、こちらもユーザー定義可能。

鍵盤のタッチには、専用のダイナミクス・ツマミを装備。右に回すと弱いタッチでも強い音色になり、繊細な表現から力強い表現まで、演奏に対する反応をアジャストできる。また、これらのツマミはプッシュしてパネル面と同じ高さに押し込めるのも気が利いている。ライブ中に誤って触ることもないし、セッティングや移動中の破損対策にもなる。

Nautilus ATには、膨大なサンプルや多彩なシンセシス・エンジンを装備し、あらゆるジャンルに対応可能。ライブで求められることの多いブラスやストリングス、シンセ・リードやパッドなどにも高い水準で応えられる。さらにそれらの音色は、クイック・レイヤー、クイック・スプリット機能を使って簡単に組み合わせて演奏でき、リハーサル中のアレンジ変更にも即座に対応可能。

Nautilus AT は、基本になる音色(プログラム)を選んで演奏するプログラム・モードだけでなく、最大16プログラムを組み合わせられるコンビネーション・モード、MIDI/オーディオのシーケンサー・モードも装備している。これらはどのモードであろうとセットリストに入れておけば瞬時に切り替えて演奏できる。イントロはピアノ・ソロ、途中からリズミックなシーケンス、エンディングではレイヤーによる壮大なオーケストラ・サウンド、といった展開も簡単に実現できる。

特筆すべきは、音色切り替え時に音が途切れずスムーズにつながることだ。押さえている鍵盤の音色を保持したり、音色の余韻(リリース)やリバーブを残したままで次の音色で演奏できる。パフォーマンスがスムーズにつながるのはもちろん、余裕を持って音色を切り替えられるのが嬉しい。

ピアノタッチ88鍵とライトタッチ61鍵の2モデルを備えたNautilus AT、ライブ・キーボードとしても検討してみてはいかがだろうか。(文:高山博)

製品情報

KORG Nautilus AT

価格●275,000円/61鍵、374,000円/88鍵(税込)

Specifications

●鍵盤:88鍵=RH3 (リアル・ウェイテッド・ハンマー・アクション3)鍵盤、61鍵=ナチュラル・タッチ・セミ・ウェイテッド鍵盤※いずれもベロシティ対応、アフター・タッチ対応●シンセシス方式:9種類(SGX-2=アコースティック・ピアノ、EP-1=エレクトリック・ピアノ、HD-1=PCM、AL-1=アナログ・モデリング、CX-3=トーンホイール・オルガン、STR-1=フィジカル・モデリング、MOD-7=VPMシンセシス、MS-20EX=CMTアナログ・モデリング、PolysixEX=CMTアナログ・モデリング●最大同時発音数:40〜200ボイス(音源により変動)●プリセットPCM:RAM 496MB/DISK 2.3G(ROM1,771マルチサンプル、3,955ドラムサンプル)●PCM RAM:約2GB●ウェーブ・シーケンス:プリロード377種、ユーザー・メモリー598種 ※ステレオ・マルチサンプル対応、各ノートごとにシンク可能、テンポ・ベースで設定可能●エフェクト:インサート・エフェクト12系統、マスター・エフェクト2系統、トータル・エフェクト2系統、ティンバーEQ1ティンバーにつき1基の3バンドEQ、エフェクト・タイプ197種、モジュレーション、エフェクト・コントロール・バス、エフェクト・プリセット●アルペジエーター:プログラム・モード1基/コンビネーション、シーケンサー・モード:2基●ドラム・トラック:プリセット・パターン1,272、ユーザー・パターン1,000●外形寸法:88鍵=1,437(W)×387(D)×139(H)mm、61鍵=1,062(W)× 386(D)×116(H)mm ●重量:88鍵=23.1kg、61鍵=13.0kg

お問い合わせ

コルグお客様相談窓口 TEL.0570-666-569