ライブで輝くシンセサイザー 〜 SEQUENTIAL Take 5

現在、ライブ向けのシンセサイザーとして多種多様なモデルがリリースされています。『FILTER Volume.05』掲載企画“シンセサイザーとライブ”では、独自のキャラクターを持つ注目機種をピックアップ。“ライブで使用する”という視点でそれぞれをレビューした記事をWebでも公開！

コンパクトにまとめられた優良な設計により
ライブでのカットオフの確実な操作と
幅広い帯域での両手演奏を実現

シーケンシャルから発売されている5ボイスのアナログ・ポリフォニック・シンセサイザーTake 5 は、コンパクトで低価格なスタンダード・モデルでありながら、あのProphet-5の血統を継ぐフィルターなどを装備し、非常に高機能、高品質の内容となっている。

まず第一印象は、ちょうど良いコンパクトさ。44鍵で、厚さもそれほどなくスマートにまとまっていながら、安物感が全くない。心地良い重厚感、ツマミもしっかりしていて、コンパクトさと高級感の両方を兼ね備えている。フィルターのカットオフ・ツマミが中央に大きく鎮座し、特徴的なデザインになっている。

基本的な内容を見ていくと、アナログのオシレーター2つに加えてサブ・オシレーター、ピンク／ホワイト・ノイズがミックスできるようになっている。基本波形は、ツマミでサイン波→ノコギリ波→矩形波→矩形波のデューティー変化が連続的に変えられるようになっている。Prophet譲りのオシレーター・シンクのボタンが用意されているほか、オシレーターのミキサー部分にFMのボタンも用意されているので、伝統的なシーケンシャルのアナログ・サウンドとともに、かなり幅広い音作りが期待できる。

フィルターは、Prophet-5 Rev.4の血統を継ぐ4ポールのアナログ・ローパス・フィルター。大きなツマミのカットオフとレゾナンスに加え、フィルター部分で音を心地良く歪ませるドライブ・ツマミも用意されている。エンベロープ・ジェネレーターは2つ。ディレイ・パラメーターやLFOのように動きをループさせるリピート機能まで搭載されている。LFOは、全体にかかるタイプとボイスごとに機能するタイプの2つが用意されているのも憎い配慮だ。

エフェクターは、各種ディレイ、フランジャー、フェイザー、ディストーション、Lo- Fiなどの切り替え選択ができるマルチ・エフェクターと、リバーブを装備。アルペジエーターや、簡単に入力再生ができる最大64ステップのポリフォニック・ステップ・シーケンサーも用意されている。モジュレーションはさまざまなパラメーターに対して設定できるようになっているが、ディスプレイ画面を見ながら設定する形なので、パネルが複雑にならずに済んでいる。

鍵盤は定評のあるイタリア・ファタール社製で、アフタータッチにも対応しており、鍵盤を押し込むことで演奏時も両手でモジュレーション操作ができるので、ライブなどでは威力を発揮するだろう。なお、16バンク×16の256のプリセット・サウンドに加え、同等のユーザー・プリセットも登録可能になっている。

ライブでの活用を考えた場合、何と言っても他のツマミより数倍大きなフィルターのカットオフ・ツマミが活躍する。演奏しながら瞬時に目的のパラメーターのツマミを動かしたいことが多いが、実際によく操作するツマミといえば、圧倒的にこのカットオフのツマミだ。ここまで他のツマミと大きさに差があると間違えるはずがないし、見なくてもカットオフを操作できるだろう。過去にもカットオフ・ツマミが大きい製品はあったが、このスタイルが主流になるべきだと思うほど便利なものだ。

もう1つのライブで威力を発揮する機能がロー・スプリット機能だ。いわゆるスプリット機能と似ているのだが、鍵盤の左端から中央やや下のBまでをローとして、1オクターブ下または2オクターブ下にボタン1つでトランスポーズさせるというもの。両手で演奏する時のことを考えてみてほしい。左はベース、右がコードあるいはメロディやソロといったパートを演奏することが多いが、1〜2オクターブ空けて肩幅より少し広い感じで演奏することになる。そこでロー・スプリット設定すると、この間を詰めて少ない鍵盤で高域と低域を両方演奏することができるわけだ。44鍵（3オクターブ半）という幅でありながら、61鍵（5オクターブ）や73鍵（6オクターブ）に匹敵する音域を両手で演奏することができるのは、Take 5 の最大の魅力と言えるだろう。（文：松前公高）