ライブで輝くシンセサイザー 〜 GAMECHANGER AUDIO Motor Synth MKII

現在、ライブ向けのシンセサイザーとして多種多様なモデルがリリースされています。『FILTER Volume.05』掲載企画“シンセサイザーとライブ”では、独自のキャラクターを持つ注目機種をピックアップ。“ライブで使用する”という視点でそれぞれをレビューした記事をWebでも公開!

アナログでもデジタルでもない
〝モーター〟が生成するサウンドで味わえる
今までにないライブ体験

何と言っても目を引くのは存在感ある8つのモーター。このモーター音こそ、Motor Synth MKⅡにおけるオリジナル・オシレーターと言っても良いのではないでしょうか。SCALEで各VOICEの音域を高めにすればするほどモーター音が大きくなるので、もはやその回転音はサウンドの一部。ライブの時は、このモーター音を拾うためのマイクを1つ筐体上部にセッティングして、スイッチを入れてモーターが起動する音をイントロとして披露したいくらい。さらにモーターが回り出すところはプロジェクターに映したい!

そんなMotor Synth MKⅡでのパフォーマンスは、アンプ・エンベロープとピッチ・エンベロープの使い方が重要になってくると思います。アンプ・エンベロープは、ADSRを基本にした5タイプのほかに、DADSR(アタックの前にディレイを調整)やAD LOOP(アタック、ディケイをループできる!)も。エンベロープは3オシレーターごとに個別設定できるので、他のVOICE、DCOとミックスするほど面白い効果を生み出せます。本体に鍵盤として演奏できるキー・パッド(適宜音階をアサイン可能)は8つしかなく4音ポリフォニーですが、独立した時間軸を持つ3つのオシレーターを同時に発音してダイナミックさを出せるし、ギミックの効いた動きのある音色が作れるので、独特なドローン・シンセとしても活躍します。もちろんパッド系の演奏はMIDI鍵盤をつなげばより豊かになりますが、Motor Synth MKⅡはあまりにオリジナリティのあるシンセサイザーなので、私はあえてこの8つのキー・パッドの手弾きに挑戦したくなってしまいます。

ピッチ・エンベロープの変化はモーター・オシレーターの回転速度にも直結するので、このマシンの特性を楽しめる要素の1つ。“FROM/TO”“ ACCEL/BREAK”ノブで詳細なグライド効果を作り出します。“FROM”はー12〜+12の音程の始点として、“ACCEL”で設定した時間をかけて実際のノートに到達します。ALT+“TO”と“BREAK”で立ち下がりエッジ(ノートのリリース後に発生するピッチ変化)も設定でき、CURVEも使えば溜めてから一気に上昇する動きなど、1ノートのピッチ変化をとても細かく描けるのがグッド。BREAKを最大値にしてリリースを短めにすると、実音は鳴っていないのにモーター音のピッチだけは下降/上昇していく、という状況も作れますよ。

このように、アンプ・エンベロープとピッチ・エンベロープの作り込みをベースに、MOD1〜MOD3に適宜変調させたいパラメーターをアサインして音作りしていく楽しさは、ウェーブテーブル・シンセシスにも近いものを感じます。パフォーマンスにおいても、音作りの独自性を活かせるように、ゲームチェンジャー・オーディオの画期的なペダルの数々(ディストーション、スプリング・リバーブなど)と合わせてリアルタイム・サウンド・メイキングを楽しむようなステージができたらいいなと思います。

最後に、メインの2 VOICEは、Sine、Saw、Squareに続く4つ目の波形が“ 電磁誘導波形”というもの。なかなか聞き慣れない言葉ですが、“回転する”、“電磁誘導”で思い出すのはハモンド・オルガンです。トーン・ホイール(金属の歯車)が回転することで磁界が揺れ、コイルとの電磁誘導で生じた正弦波を音として出力した初期のオルガンをイメージしつつ、ノコギリ波の掛け算でざらっとした感触を
前面に出したり、オクターブ下のパルス波を重ねて少し柔らかくしたり。F Mっぽいニュアンスが出しやすいモーター・シンセのキャラクターも相まって、シンセ・オルガンの音色作りはクセになります! モーターの回転する空気感がレスリー・スピーカーのようで(?)、より雰囲気を盛り上げてくれますよ。(文:AZUMA HITOMI)

製品情報

GAMECHANGER AUDIO Motor Synth MKII

価格●649,000円(税込)

Specifications

●モーターオシレーターエンジン:瞬時に正確に回転速度を変えることができるモーターのシステムを搭載。3種類の光学式波形(Sine、Saw、Square)、電磁誘導波形(M)の4種類の異なる波形を作り出すことが可能●モーターボイス:2つの独立したボイス毎にVOLUME、SCALE、WAVE、AMP ENVELOPE、PITCH ENVELOPEのコントロールを装備●マルチモードアナログフィルター:DRIVE、CUTOFF、RESONANCE、ENVELOPE SHAPE & AMOUNT、FILTER TYPEを調整可能(両モーターボイスに搭載)。24dB LP、12dB BP、12dB HP、12dB AP(オールパス)の4種類を選択可能●デジタル・ボイス(DCO):単独で使用することも、MOTORボイスの生音を補強することも可能。様々なクラシック波形(ウェーブシェーピング付き)やノイズジェネレーターとして使用可能●モジュレーションセクション:正負のAmountを調整可能な3つのLFOを搭載。各LFOは、2つのモジュレーション・スロットA、Bに分かれており、ほぼすべてのノブやエンコーダーの値に簡単に割り当てることが可能●クロスモジュレーションとデチューンオプション:ボイス1またはボイス2とのクロスモジュレーションを作るための専用回路を用意。Detune / Driftノブでは、2種類のオシレーターデチューンが可能●アルペジエーター:ノートアクセント、パターンシフト、ノートリピートなど、さまざまなパラメーターをコントロール可能●Motion Record Lanes:すべてのパラメーターに割り当て可能な、独立した複数のモーション・レコード・レーン●シーケンサー:マイクロタイミング、発音確率、ラチェット、パターン長、パターン保存、チェインなどのコントロールが可能なモノフォニックシーケンサーを内蔵●キーボード:4つのピッチエンコーダーを備えた非ベロシティセンシティブな8鍵キーボード●MIDI&CVコントロール:ノートとクロックの情報を送受信するMIDI IN & MIDI OUTコネクター/複数のMODホイールとチャンネルプレッシャー(MIDIアフタータッチ)スロットは、デプスコントロールで任意のパラメーターに割り当て可能/3系統のCV入力(3.5mm)をアサイン可能/トリガー入力(3.5mm)3系統を割り当て可能/MIDI入出力およびMICRO SDカードへのファイル転送にUSBを使用●入出力:シングルTRS 1/4'OUTPUTジャック(スプリットボイスルーティング調整可能/MONOアウトとしても使用可)、2系統のSEND/RETURNループ端子(3.5 mm TRS/各MOTORボイスのプリVCF、ポストVCA用)、ヘッドホン出力、入力信号処理用MONO 1/4'INPUTジャック×1系統

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