ライブで輝くシンセサイザー 〜 YAMAHA MODX+

現在、ライブ向けのシンセサイザーとして多種多様なモデルがリリースされています。『FILTER Volume.05』掲載企画“シンセサイザーとライブ”では、独自のキャラクターを持つ注目機種をピックアップ。“ライブで使用する”という視点でそれぞれをレビューした記事をWebでも公開!

オーディオ信号のテンポを検知し
DAWやシンセとシンクさせるなど
実現の難しいシステムを容易に構築可能

PCを中心としたシンプルなライブ・セットを考えた時に、“ステージ・セットはどうするか?”といったことに悩んだことはありませんか。USBキーボードをPCに接続して、プラグイン・シンセを演奏する方も多いかと思います。しかし、走っているDAW上でライブ演奏するとなると、レイテンシーやPCの安定性の問題で躊躇する方もいるでしょう。また、別途ハード・シンセサイザーを用意するとなると回線が増えますし、ホストとの同期を考えるのであれば機材や配線が増えてシステムが複雑になりがちです。そんな時に活躍するのがMODX+シリーズ(以下MODX+)。本機のサウンドが素晴らしいことは周知のことと思われますので、ここではライブでの活用方法に絞って解説したいと思います。

本機がライブで重宝する機能の1つがA/Dインプット。実はここにどんなオーディオ・ソースも入力できます。ボーカル・マイクを入力すれば、そのままMODX+から高音質なボーカル・サウンドが出力され、すなわち本機をミキサー代わりに使うことができます。さらに優れているのは、この入力したソースにリバーブやディレイなどのエフェクトがかけられる点。さらにはボコーダーとしても機能します。

また、このA/DインプットにDAWなどの出力を入力すれば、ステージ上でバック・トラックとシンセが簡単にミックスできるのも魅力の1つ。このA/Dインプットにはゲインも装備されており、ミキシング・バランスも簡単に取れます。個人的に気に入っている点は、このインプットにアナログ・シンセなどを接続して、“MODX+のデジタル・サウンドの良さ”と“アナログ・シンセの良さ”を本機で簡単にミックスして演奏できることです。もちろん入力したアナログ・シンセにエフェクトもかけられるので、ステージ上にエフェクターなどを置く必要もありません。ライブ・セッティングがとても楽になるのです。

そして特筆すべき点は、このA/Dインプットにビートシンク機能が装備されていることです。普通、楽曲のテンポにシンセサイザーをシンクさせたい時、MIDIシンクが一般的ですが、なんとMODX+は入力したソースのオーディオ信号のテンポを検知して、アルペジエーターやシーケンサーをシンクさせることができるのです。筆者がこの機能をチェックしてみたところ、かなりの精度で同期しました。これまでは、シンクさせたいDAWやシンセなどとはUSBやMIDI接続する必要がありましたが、その必要性がありません。また、これまでシンクが難しかったシンク機能のないビンテージ・リズム・マシンとも簡単にシンクさせられる魅力は、とても大きいでしょう。そしてライブ・ステージ上では、ドラムなどの“返し”を入力すれば生演奏に合わせてアルペジエーターやシーケンサーが楽曲に正確に追従するといった、今までなかなか実現が難しかったシステムを簡単に構築することもできるのです。

DJなどがこの機能を使うと、本機のアルペジエーターやシーケンサーをDJのプレイするトラックに簡単に同期させることが可能です。個性的なD Jプレイが簡単な接続で可能になるメリットはかなり大きいでしょう。すなわち、こういったカテゴリーのシンセでは珍しい、マシン・ライブの機材としても使いやすい仕様になっています。MODX+はキーボードの枠を超えて、多種多様なライブで活用できる環境が整っているのです。

最後に、ライブ・セッティング時におすすめしたい機能がUSBインプット。このUSBインプットを使えば、USBメモリーの中のWAVファイルをサンプラーのように鍵盤にアサインできるのはもちろん、バック・トラックなどの楽曲ファイルも再生させられます。また、iPhoneのUSBカメラ・アダプターを使えば、スマホの中の楽曲もMODX+に入力できます。さて、あなたならMODX+を使ってどんなライブ・セットを考えますか?(文/江夏正晃:FILTER KYODAI/marimoRECORDS)

製品情報

YAMAHA MODX+

メーカー希望小売価格●143,000円/MODX6+、176,000円/MODX7+、203,500円/MODX8+

Specifications

●鍵盤:MOD X8+=88鍵G HS鍵盤(イニシャルタッチ付)、MOD X7+=76鍵セミウェイテッド鍵盤(イニシャルタッチ付)、MOD X6+=61鍵セミウェイテッド鍵盤(イニシャルタッチ付)●音源方式:Motion Control Synthesis Engine(AWM2=8エレメント、FM-X=8オペレーター、88アルゴリズム)●最大同時発音数:AWM2=128音(ステレオ/モノ波形いずれも)、FM-X=128音●マルチティンバー数:内蔵音源16パート、オーディオ入力パート(A/D、USB)、ステレオパート●波形メモリー:プリセット=5.67GB相当(16bitリニア換算)、ユーザー=1.75GB●パフォーマンス数:2,227●フィルター:18タイプ●エフェクト:リバーブ×12タイプ、バリエーション×88タイプ、インサーション(A、B)×88タイプ、マスターエフェクト×26タイプ、A/Dパートインサーションは83タイプ <各エフェクトタイプにプリセットプログラム搭載> マスターEQ(5バンド)、1stパートEQ(3バンド)、2ndパートEQ(2バンド)●シーケンサー容量:約130,000音(1パターンまたは1ソング)●ストア領域:約520,000音(パターン)、約520,000音(ソング)●アルペジエーター:パート=最大8パート同時オン可、プリセット=10,239タイプ、ユーザー=256タイプ●モーションシーケンサー:レーン=最大8+1系統●ライブセット数:プリセット=256、ユーザー=2,048●接続端子:USB、MIDI(IN/OUT)、FOOT CONTROLLER、FOOT SWITCH、OUTPUT(L=MONO/R )、PHONES、A/D INPUT (L=MONO/R)●外形寸法:MODX8+=1,333(W)404(W)×160(H)mm、MODX7+=1,144(W)331(W)×134(H)mm、MODX6+=937(W)331(W)×134(H)mm●重量:MODX8+=13.8kg、MODX7+=7.4kg、MODX6+=6.6kg

お問い合わせ

ヤマハお客様コミュニケーションセンター シンセサイザー・デジタル楽器ご相談窓口 TEL.0570-015-808 つながらない場合は TEL.053-460-1666