ライブで輝くシンセサイザー 〜 KORG Wavestate SE

現在、ライブ向けのシンセサイザーとして多種多様なモデルがリリースされています。『FILTER Volume.05』掲載企画“シンセサイザーとライブ”では、独自のキャラクターを持つ注目機種をピックアップ。“ライブで使用する”という視点でそれぞれをレビューした記事をWebでも公開!

リアルタイムに遊べる面白さに溢れた
ウェーブ・シーケンス搭載モデルが
61鍵となり鍵盤楽器としても進化

コルグのWavestate SEは、先行する37鍵モデルやソフトシンセ版に続いて61鍵でのリリースとなります。今回は、特集テーマでもあるライブでの使用という観点で見ていきましょう。

まず本機の特徴と言えるウェーブ・シーケンスについて触れておくと、コルグの歴史においては90年代のWavestation というシンセで登場し、その内容は“波形を選び、発音時間と発音ピッチを指定して、それを並べていく”というものでした。全く異なる波形が突然現れるので、音色変化には想像を超えた面白さがあったのです。波形に打楽器を選び、発音時間を音符で作っていけばドラム・パターンが作れたり、発音ピッチをコード・トーンになるように指定すれば、1ノートでコード・アルペジオが作れたりもしました。Wavestationは面白いシンセでしたが、せっかくのリズミックな音色変化を生バンドに同期させることが難しかったり、シーケンスの周期性を変えるためには作り直しになるなど(時代を考えれば仕方がありませんが)、ライブでは苦労する部分もありました。

それから時を経て、Wavestateに装備されたウェーブ・シーケンスは、Wave Sequencing 2.0という新しいものに進化。レーンという考え方を導入し、波形(サンプル)と発音時間(タイミング)、ピッチなどをそれぞれ独立したレーンとして個別にエディットやループができます。この恩恵は大きく、例えばアルペジオの場合、ピッチのレーンだけ指定して、Loop Start&EndとLoopの方向(順、逆、往復)を決めるモードをツマミで可変すれば、リアルタイムにピッチの並びを変化させられます。タイミングのレーンがそのままならアルペジオのリズム・パターンはキープしたままなので、グルーブが破綻することなく思う存分遊べるというわけ。また、リズムは偶数でループしつつ、波形やピッチは奇数でループさせてポリリズミックな変化を楽しむなど、ライブで遊べる自由度は桁違いに増しています。

さらにTAP TEMPOで、テンポをリアルタイムに追いかけていくことが可能。MIDI同期に関しても、クロックのソースを選べるのは当然として、Autoというモードがあり、外部クロックが来ている時はエクスターナル、来ていない時はインターナルと自動で切り替えてくれます。同期を使ったライブでも必ずしも全曲同期ありというわけではないことを考えると、とても実用的です。

触っていて気づいた同期の手として、NOTE ADVANCEというボタンがあります。これはノートオンするとウェーブ・シーケンスが1ステップ進むという機能ですが、これを使えば演奏者が生バンドに合わせてノートを弾いているだけで、同期している体でウェーブ・シーケンスを動かすことができます。アナログ・シーケンサーのステップをマニュアルで進めるようなイメージかな? TAPとの違いは、演奏者が弾くリズム・パターンで自由に16分音符や3連符を入れ込むこともできるので、アイディア次第では面白い手段だと思います(勝手にステップが進まないように準備は必要ですが……)。

本機の場合、ウェーブ・シーケンスがあまりに特徴的でプリセットもそこをアピールしているので忘れがちですが、膨大な波形を持ち、エディットに必要なツマミが外に出ているので、通常のPCMシンセとして使っても面白く、特に出音に雰囲気のあるフィルター部分は魅力的です。61鍵になったことで、ベーシックな鍵盤楽器として活用の場が広がっているのもありがたいですね。37鍵では、コンパクトさは捨てがたいものの、鍵盤2台持ちになりがちですし……。もちろん音色のセットリスト登録や音切れのしない音色切り替えなど、ライブ・キーボードに必須の機能も装備しています。そして近年の楽器において復権のトレンドと言えそうなアフタータッチの採用は嬉しいですね。一時期は本当に搭載する楽器が減ってしまいましたが、手の塞がりがちなライブの現場で片手でニュアンスをつけられるのは最高ですよ!

Wavestate SEは、演奏し、ノブを回し、リアルタイム・エディットする面白さに満ちた、まさに現代のシンセらしい機種でした。(文:高橋利光)

製品情報

KORG Wavestate SE

メーカー希望小売価格●247,500円(税込)

Specifications

【鍵盤】61鍵 (ナチュラル・タッチ鍵盤、ベロシティおよびリリース・ベロシティ、アフター・タッチ対応)【音源システム】Wave Sequencing 2.0【最大同時発音数】120ステレオ・ボイス【サウンド】261パフォーマンス、799 プログラム、1,042 ウェーブ・シーケンス(ユーザー・パフォーマンスを数万保存可能)【構成】パフォーマンス:4レイヤー、リバーブ、 EQ/レイヤー:プログラム、アルペジエーター、キーおよびベロシティ・ゾーン/プログラム:ウェーブシーケンス、フィルター、アンプ、プリFX、MOD FX、ディレイ【フィルター】2-pole LPF、2-pole HPF、2-pole BPF、2-pole Band Reject、4-pole LPF、4-pole HPF、4-pole BPF、4-pole Band Reject、Multi Filter、MS-20 LPF、MS-20 HPF、Polysix【モジュレーション】コントローラー:Mod Wheel、Pitch Wheel、Vector Joystick X / Y、8x Program / Performance Mod Knobs/その他のソース:3x Envelopes、Vector Envelope、3x LFO、2x Mod Processors、2x Key Track、Step Sequencer Lane、Step Pulse、Tempo、Program / Performance Note Count、Program / Performance Voice Count、Poly Legato、Velocity、Exponential Velocity、Release Velocity、Gate / Gate + Damper、Note-On Trigger / Note-On Trigger + Damper、Note Number、Aftertouch / Poly Aftertouch(external MIDI only)、MIDI CC +/-、MIDI CC +/デスティネーション:個々の波形シーケンスステップのパラメーターを含む、ほとんどのパラメーターを変調できます。 ウェーブシーケンスの長さに応じて、プログラムごとに1,000を超える潜在的な変調ターゲットが存在する可能性があります。●入出力端子:ヘッドフォン(6.3mmステレオ・フォーン・ジャック)、オーディオ出力L/MONO 、R (6.3 mm TRS フォーン端子、インピーダンス・バランス)、DAMPER(6.3 mmフォーン端子)、MIDI IN/OUT、USB B端子●外形寸法:1,014(W)x344(D)x110(H)mm●質量:8.6kg

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コルグお客様相談窓口 TEL.0570-666-569