シンセ・ベースの名器〜VERMONA PerFourMer Mk II

『FILTER Volume.03』掲載企画“シンセ・ベースの名器”では、ハードウェアからソフトウェア、さらにモジュールまで、強力なシンセ・ベースを生み出す現行機種をピックアップしました。そのレビューをWebでも公開!

4基のアナログ・シンセと強力なフィルターで
ファットなベース・サウンドを生み出し
高度な音作りも可能なモジュール・シンセ

説明書を読まずにパネルを眺めただけですべてを把握できる優れたユーザー・インターフェースは、即興音楽だけにとどまらず、スタジオワークでの音作りにおいてもどれだけのパフォーマンスを発揮してくれることだろう。ヴァーモナPerFourMer MkⅡの第一印象はまさしくこのようなものであった。

基本構成は優秀なアナログ・シンセサイザーが4基搭載されており、4つ同時にモノラルとして、また4つバラバラにマルチティンバーとしての使用が可能だ(もちろんポリフォニック・シンセサイザーとしても使用可能)。モノモードにすれば、デチューンの効いた野太いシンセ・ベースが容易に作れる仕様だ。オシレーターにはサイン波、三角波、パルス波形(可変式)、ノコギリ波形、そしてノイズと、計5つの基波形が用意されている。オクターブチェンジ・ノブはしっかりとしたクリックストップがかかる仕様で4’ 8’ 16’ 32’ さらにHI とLOを搭載し広いレンジをカバーしてくれる。それぞれのモジュールごとのオシレーターに用意されたGLIDE、EG INT、LFO INTにより、オシレーターへのさまざまな変調を個別に、そして瞬時に行うことができ、色分けされたファインチューニング・ノブも程良いトルク感で微調整しやすいので、特にファットなシンセ・ベースなどの音色が作りやすい。

またオシレーター・セクションの左側に搭載されたエクステンテッド・オシレーター・ファンクションでは、マスターとなる1基目のシンセ・モジュールに対し、2〜4までのスレーブ・シンセサイザーを使いさまざまなモジュレーションを行うことができる。例えばオシレーター・シンクやFM変調など、驚くほど簡単に複雑な倍音を生成可能。

そしてPerFourMer MkⅡの強力なフィルター・セクションは、ヴァーモナ社が明言しているようにモーグと同じ設計の24dB/Octのローパス・フィルターが採用されている。これは“シンセ・ベースを作れ”というメッセージとも取れる。PerFourMer MkⅡは波形を加工するだけではなく、ウェーブフォームにてOFFを選ぶことで、外部から入力されたオーディオをフィルタリングすることが可能だ。また、特筆すべきは、オシレーター波形をOFFにした状態でレゾナンス値を上げ、カットオフ・フリケンシーの値を下げて行くとフィルターだけで自己発振を起こしサイン波形が鳴り始める。そこにEG INTの量を上げていき、タイトでキレの良いエンベロープ・カーブを作れば重低音のサイン波によるキックやベースを容易に生成できる。語るまでもないのだが、Minimoogと比較しても引けをとるどころか、さらにパワフルで野太いシンセサイザー・ベースのサウンドが容易に得られる。

エンベロープ・セクションではADSRの4ポイント・タイプが採用され、そのキレは見事なものがある。この柔軟なエンベロープを使えば、音量コントロールの他に、さまざまなモジュレーション効果を生む装置として機能する。EGも他のモジュールと同様に各シンセ・モジュールに用意され個別の設定が可能であるため、1つのシンセ・ベースを作った場合、レイヤーごとに立ち上がりや残響を変えることでユニークなサウンドを作り出せる。

オシレーターやフィルターへ周期的変化をもたらす機能であるLFOセクションには、ノコギリ波/パルス波、サイン波、そしてS/H(サンプル&ホールド)が用意されており、ウォブル・ベースやタイトなシーケンス・ベースなどを容易に作り出せる。またLFOの回転速度が優秀で、デジタル・シンセサイザーで起こりがちな最高回転にした時に処理が追いつかず音が潰れる現象がなく、音楽的な発振を見事に生み出してくれる。

最終のVCAセクションで驚かされたのは“PAN”が搭載されているということだ。このパンニング・セクションとエクステンテッド・オシレーター・ファンクション、そしてLFOを組み合わせることで、位相のコントロールが行え、全く新しい無限な音像効果を手に入れられるだろう。(文:齋藤久師)

製品情報

VERMONA PerFourMer Mk II

価格●オープン・プライス(市場予想価格:227,800円)

Specifications

【VCO】●波形:サイン波/三角波/矩形波(PW可変)/ノコギリ波/ノイズ/外部オーディオ入力●ピッチ・モジュレーション:LFO/EG/MIDIピッチベンドによるモジュレーションに対応●パルスウィズ・モジュレーション:LFOとMIDI モジュレーション・ホイールによるコントロールに対応●グライド:レガート演奏によるオートグライド対応●隣り合うシンセサイザーチャンネルへのオシレーターシンクに対応●隣り合うシンセサイザーチャンネルからのフリケンシーモジュレーションに対応●発振範囲:32’、16’、8’、4、Hi(約5Hz ~3.3kHz、ノート情報を無視)、Lo(約1Hz ~410Hz、ノート情報を無視)【VCF】●24dB/Oct ローパス・フィルター(自己発振可能)●キーボード・トラッキング(OFF/50%/100%)●カットオフ・フリケンシーモジュレーション(LFO/ENV/MIDIアフタータッチ)●隣り合うシンセサイザーチャンネルからのカットオフ・フリケンシーモジュレーションに対応応【VCA】●アンプリチュード・モジュレーション(ドローン/GATE/EG)●MIDIベロシティによるエンベロープ・アマウントのモジュレーションに対応【LFO】●周波数:0.05Hz〜250Hz●波形:サイン波/下降ノコギリ波/ 矩形波/サンプル& ホールド●隣り合うシンセサイザーチャンネルのLFO スピードにシンク対応応●MIDIクロックにシンク可能●タップボタンによるMIDIクロックのシンク可能●0°~180°範囲で位相可変に対応【ENV】●ADSRタイプ●シングル/マルチトリガー切替【入出力】マスターアウトプット(L/R)、外部入力(Tip)/VCO アウト(Ring)×4、パラアウト(Tip/インサーション(Ring)× 4、MIDI IN、MIDI THRU【外形寸法】435(W)×315(D)×105(H)mm【重量】3.8Kg

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