【製品レビュー】OBERHEIM TEO-5
多彩な音作りが可能な創業者のイニシャルを冠した
5ボイス・アナログ・ポリフォニック・シンセ

今回紹介するオーバーハイム社のTEO-5は、コンパクトなボディにアナログ・シンセの魅力をギュッと詰め込んだシンセサイザーだ。誌面の許す限りその魅力を紹介していこう! まず、TEOという名前はトーマス・エルロイ・オーバーハイム(Thomas Elroy Oberheim)のイニシャルであり、彼は1973年にオーバーハイム社を設立し、数々の魅力的なシンセを作り出した人物だ。あえてそんな機種名にしたということは、オーバーハイム社としても自信を持って発表したシンセということの表れで、音を出す前から期待が高まる。
箱から出した第一印象は“可愛いけどしっかりしている!”だ。3.5オクターブ(44鍵)の鍵盤は、個人的にはもう少し欲しい気もするが、オクターブ・シフトボタンがすぐ手の届くところに配置され、ロー・スプリット機能で鍵盤の低い部分のみオクターブ(−1、−2)下げられるので演奏できる幅は広い。何よりこの小ささだとちょっと机の上に置いて使うにも良いし、持ち運びもしやすいのでかなり使い勝手が良いだろう。電源はアダプターではないタイプなのでそれも嬉しい。
それでは音を出してみよう! ファクトリー・バンクにあらかじめ256音色が用意されているので、まずはそれを聴いてみる。オーバーハイムらしいシンセ・ブラスやシンセ・パッドをはじめ、図太いシンセ・ベースやオシレーター・シンクを使用した激しいリード、ノイズを使用したパーカッシブな音など、想像力をかき立てられ、即戦力となる音色が満載で弾いていて楽しい! 実際の音に関しては残念ながら直接伝えられないので、ぜひ店頭などで聴いてみてほしい。この時パネル右上のPLAYボタンを押すと各音色の紹介フレーズ的なシーケンスが再生されるので、わかりやすくておすすめ!
次に詳細を解説していこう。TEO-5は5ボイスのシンセサイザーで、ユニゾン・モードでは1〜5ボイスを同時に発音することができる。本体の中央上部にはディスプレイが用意されているが、これがかなり便利。例えば、前述のユニゾン・ボイス数はユニゾン・ボタンを押し続けると表示され、ディスプレイ下のバリュー・ツマミで変更できたりと、かなり感覚的に操作することができる。また、パネル上にない細かい音作りのパラメーターやグローバル・パラメーター(チューニング、MIDIなど)の設定もこのディスプレイ周りのボタン、ツマミで設定できる。

即戦力となる256音色がファクトリー・バンクに用意されている。
音源的にはメインのアナログ・オシレーターが2基で、それぞれがノコギリ波、矩形波〜パルス、三角波を同時に使用可能。さらにサブ・オシレーターとノイズ(ホワイト、ピンク)ジェネレーターも用意されている。オシレーターはハードシンクやスルーゼロFMを備えたX-Modで変調できるので、かなり複雑な倍音変化の音色を作ることもできる。個人的に気に入ったのは、ポルタメント・タイムの値がオシレーター1と2で別の値を設定できるようになっていること! これにより、ちょっと変わった音程変化で演奏させることができるのでぜひ試してみてほしい。
フィルターは、オーバーハイム社のシンセの特徴とも言えるSEMステート・ヴァリアブル・フィルターが搭載され、ローパス〜ノッチ〜ハイパスとモーフィングさせるモードとバンドパス・モードのどちらかに切り替えて使用することができる。
エンベロープは2基、LFOは全ボイス同時に変調するグローバルLFOと、ボイスごとに独立して動くパー・ボイスLFOの2種類が用意されている。パー・ボイスLFOは使い方によって面白いことができ、例えばユニゾン時にノート・リセットをオフにして軽くピッチ・モジュレーションすると、各ボイスの揺れのタイミングがずれ、デチューンとはまた違った滲み感を出すことができる。
エフェクトはデジタル・リバーブ専用が1つと、デジタル・ディレイ、コーラス、ロータリー・スピーカーなどから選択可能なものが1つ、合計2基搭載されている。また、その2つとは別で左上にオーバー・ドライブ・ツマミがあり、これを上げることでいい感じに歪ませることができるので積極的に使ってみると良い。
そして各パラメーターは、モジュレーション・マトリクス機能によってソース(変調元)19種類、ディスティネーション(変調先)64種類のパラメーターから組み合わせ、最大16系統変調することができる。設定の操作も分かりやすく、例えばモジュレーション・ホイール(以降MW)でカットオフをコントロールしたい場合にはMODセクションのSOURCE(ソース)ボタンを押しながらMWを動かすことでMWがソースに設定され、DESTINATION(ディスティネーション)ボタンを押しながらCUTOFFツマミを動かすことでカットオフがデスティネーションに設定され、ディスプレイ下のVALUEツマミで変調する強さを上げるとMWでカットオフをコントロールできるようになる。これ、文字で読むと複雑に感じるかもしれないが、一度やってみるとかなり感覚的な操作性でとてもわかりやすい。

パラメーターを組み合わせて最大16系統変調することができる。
また、TEO-5は現代のパーツを採用したアナログ・シンセなので安定したチューニングで使えるが、VINTAGEツマミを上げていくと昔のビンテージ・アナログ・シンセのようにボイスごとにピッチがずれ、独特の柔らかさを出すことができる。
他にも64ステップのポリフォニック・ステップ・シーケンサーやアルペジエーターが搭載されていたり、まだまだ紹介しきれないおすすめポイントがいっぱいのTEO-5、ライブや曲作りなどさまざまな場所で大活躍できるシンセだと言える! 特にデジタル・シンセしか使用していない環境では、アナログ・シンセならではの出音の存在感が生きてくると思うのでぜひ活用してみてほしい。おすすめです!(文:守尾崇)

製品情報
OBERHEIM TEO-5
価格●オープン・プライス(市場予想価格:299,750円/税込)
Specifications
●ボイス:5●鍵盤:44鍵(FATARベロシティ&タッチ・センシティブ・キーボード)●オシレーター:2基(ノコギリ波、矩形波、三角波、ノイズ)●フィルター:ローパス、ハイパス、ノッチ、バンドパス●エンベロープ・ジェネレーター:2基(Delay+ADSR)●LFO:2基(LFO 1はモノで2はポリ)●パッチ・メモリー:256カスタム・ユーザー・プログラム+256ファクトリー・プログラム●エフェクト:マルチエフェクト1系統+リバーブ1系統●シーケンサー:64ステップ・ポリフォニック・シーケンサー●その他:VINTAGEツマミ、アルペジエーター、UNISONボタン、OVER DRIVEツマミ、LOW SPLITボタンなど●入出力:USB MIDI端子(USB-B)、MIDI IN/OUT/THRU、フット・スイッチ入力(TRSフォーン)、エクスプレッション・ペダル入力(TRSフォーン)、オーディオ出力LEFT/RIGHT(それぞれTSフォーン)、ヘッドフォン出力(ステレオ・フォーン)●外形寸法:635(W)×112(H)×324(D)mm●重量:7.8kg
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