FM/ウェーブテーブルの現在〜NORD Nord Wave 2

『FILTER Volume.02』掲載企画“FM/ウェーブテーブルの現在”では、シンセ・シーンで再び注目を集めているFM/ウェーブテーブル・シンセサイザーを特集。各メーカーからリリースされている最新のFM/ウェーブテーブル・シンセのレビューをWebでも公開! 

豊富なウェーブテーブル音色と
独立した4パートを活用して広がる
新しいサウンド・メイキング

今ではユーザーもかなり増えてきて、多くの現場で見かけることもあるノード製品。今回はNord Wave 2のウェーブテーブル音色を中心にレビューをしてみようと思います。

まずは音色のラインナップについてですが、はじめに私の思うノードの楽器そのものの持つイメージや印象に触れたいと思います。順番に音色を確認したり弾いていくと、とても懐かしいようなノスタルジーに溢れた音色が並んでいます(これは年代世代によるかもしれませんが)。

私が子供の頃、おもちゃに近いような電子ピアノやキーボードを友人や通っていた学校が所有しており、自由に弾ける機会がありました。トランペットやクラリネット、ストリングスといったようなプリセット・ボタンが並んでおり、押せば音色が簡単に変えられるようなそんな楽器です。今でもその音色がなんとなく頭の片隅に記憶としてあるのですが、Nord Wave 2のウェーブテーブルはそんなノスタルジーを感じさせてくれる音色が揃っています。大きく分けて、Bells/Tines、Acoustic、Digital、Organ、Keys、の5種が揃っており、それぞれの中に多いところでは10種類以上の音色が備わっています。

そもそもウェーブテーブルとは“波形テーブル上に複数分1周期波形を並べて、時間経過などに対応して波形を次々と切り替えて音色変化する”ということになるのですが、もともと生楽器というのは音が鳴り始めてから音が切れるまで少しずつ音色が変化していくものではあるので、それをシンセサイザー的にシミュレートしたりエディットしてできた音色というものは、とても耳馴染みのある音色であるのは容易に想像できます。そして、もしかしたらノード社の開発サイドがノスタルジーに結びつくようなベルやアコースティック系の楽器、オルガンなどの音を目指したり、ネームを付けたりしたのかな、などと考えたりします。

Nord Wave2には、ウェーブテーブルのほか、バーチャルアナログ、FM、サンプルの4つの⾳源を搭載

そしてバーチャル・アナログ・シンセとして名を馳せたノードだけあり、このウェーブテーブル音色にもエディットを加えることができます。これは内蔵されている他の音源(アナログ、サンプル、そしてFM)にも共通した話ではあるのですが、Nord Wave 2にはUNISONと書かれたボタンがあり、これを押すとコーラス・エフェクトにも似たデチューン・サウンドが得られ、3段階によるステレオ・イメージを加えることが可能です。これは音色のイメージを簡単に変えることのできる手軽な方法なので、まずはこのボタンを押してどのような音の広がりを見せてくれるのか、体感してほしいです。

それから個人的に特筆すべきは、オルガン音色とエフェクトのVIBEの相性がとても良かったこと。先ほどからノスタルジーという言葉を使わせてもらっていますが、この組み合わせはその雰囲気をさらに大きく助長してくれる、そんな効果が得られるような気がします。

さらにデジタル音色とフィルターとの相性もとても良かったです。Nord Wave 2のフィルターは以前のノード製品のものと比べると非常に“効き”が良くなった気がします。Digitalには14種ほどの音色がそろっていますが、耳をつんざくような尖った音色が多く内蔵されており、そのせいもあってフィルターで少しずつ角を取ってみたり、レゾナンスを調整してオリジナルの音色を目指したり、とてもエディットし甲斐のある音色だと思います。

充実したフィルター&エフェクトで、多彩なサウンド・メイキングを楽しめる

また、Nord Wave 2は完全に独立した4パートをレイヤーしたりスプリットしたり、自由にアサインが可能な楽器でもあります。この4パートをうまく使いこなすことができれば、本当に自由な音作りが可能であり、例えばモーダル・エレクトロニクスArgon8のような世界観や、コルグmodwaveのユニークなサウンドにも迫ることが可能です。

1つ、ノード製品全体に共通していると思うことが個人的にあるのですが、それは“知っている音が鳴ってくれる”ということです。僕自身にはこれはとても大事なことだと思っていて、今回のNord Wave 2のウェーブテーブル音色のことも懐かしささえ感じる音が、エフェクトの効果やエディットを通して知らない音、つまり新しい音へ変化していく過程が体験できることが、創造者としては冥利につきるからです。ぜひみなさんも、バーチャル・アナログという枠を飛び越えたその先の音を体感して、新しい音に遭遇してほしいなと思います。(文:田中佑司)

独立した4パートをレイヤー、スプリットして、自由にアサインすることが可能

製品情報

NORD Nord Wave 2

価格●オープンプライス(市場予想価格:330,000円)

Specifications

●鍵盤:61鍵ウォーターフォール鍵盤 アフタータッチ付●音源:サンプル、バーチャル・アナログ、ウェーブテーブル、FM●最大同時発音数:48●パート数:完全独立4パート●パフォーマンス:アドバンスドアルペジエーター(ポリフォニックトリガーモード付き)、ゲートエフェクト、モーフコントロール、アルペジエーター/LFO/エフェクトをマスタークロック同期可能、ビブラート(3 タイプのディレイ設定、ホイール・アフタータッチへのアサイン可能)●オシレーター:アナログ=ベーシック波形/シェイプ/マルチ/シンク/ノイズ(16タイプのオシレーター)/サンプル、ウェーブテーブル、アドバンスドFM音源(正次倍音、非正次倍音) トゥルーユニゾンモード●モジュレーションLFO:5 タイプの波形、フレキシブルなシンク、ルーティング設定AD/AR エンベロープ●アンプ:ADSRエンベロープ、トランジェントアタックモード●フィルター:12、24dB/Octローパスフィルター、ローパス M、バンドパスフィルター、ハイパスフィルター、ローパス+ハイパスフィルター、フィルタードライブADSR エンベロープ●エフェクト:FXセクション(トレモロ、パン、リングモジュレーター、コーラス、アンサンブル、バイブ)/EQ セクション(ドライブ付き)、ディレイセクション、リバーブセクション●外形寸法:990(W)×295(D)×100(H)mm●重量:8.75kg

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