FM/ウェーブテーブルの現在〜WALDORF Iridium

『FILTER Volume.02』掲載企画“FM/ウェーブテーブルの現在”では、シンセ・シーンで再び注目を集めているFM/ウェーブテーブル・シンセサイザーを特集。各メーカーからリリースされている最新のFM/ウェーブテーブル・シンセのレビューをWebでも公開! 

ウェーブテーブルの元祖が放つ
膨大なシンセシス機能を搭載し
自在な音作りを実現した音源モジュール

80年代、ウェーブテーブル・シンセシスという画期的な音源を搭載し、その後も常にデジタル・シンセをリードしてきたウォルドルフ。同社から発売されたIridiumもとんでもないモンスター・マシンだ。

過去の製品同様、ドイツらしい頑丈なボディとツマミを持つ。高級感があり、音源の内容も超ド級。基本的には以前発売されたキーボード・タイプのQuantumの機能をほぼすべて盛り込んで、さらに進化させ16音ポリフォニック音源モジュール・タイプにしたシンセだ。ものすごい量のパラメーターが用意されていて、そのサウンドも素晴らしいものだった。デジタル系シンセサイザー最強兵器と言ってもよいだろう。

しかしながらパネルのツマミを見てみると、ある程度シンセを触った人なら、一般的なアナログ・シンセとそこまで大きくは変わらないことに気付くだろう。ツマミはシンプルに、ディスプレイでは特化されたパラメーターを細かくエディット、さらに一般的なオシレーターで実際に生成されている波形や、ウェーブテーブル波形の3D表示、フィルターのカットオフの図も、フィルター・エンベロープで実際にカットオフ値が変わっている動きがダイナミックに視覚化されている。

ウェーブテーブル波形が3D表示。フィルター・エンベロープの動きなどもダイナミックに視覚化される。

オシレーターは3つで、それぞれ5種類のアルゴリズムで音源タイプが選べるようになっている。まず最初はウォルドルフ社の代名詞ウェーブテーブル・ジェネレーターで、複数の1周期波形をPOSITIONというパラメーターで変化させ複雑な音色変化を作り出す。2つ目は一般的なシンセ波形を生成するウェーブフォーム・オシレーター。ノコギリ波、矩形波、ノイズなどでWARPパラメーターで変形なども可能だ。次にパーティクル・ジェネレーター。これはオーディオ・サンプルを使うものだが、グラニュラー・モードもあるので単なるプレイバック・サンプラーにはない驚きのサウンドを生成する。もちろん波形のインポートも可能だ。4つ目はレゾネーター。物理モデリングで打楽器系、木管系の音は非常にリアルなサウンドを作り出す。最後はカーネル・モードというもので進化したFM音源といった感じだ。

フィルターはローパス、ハイパス、バンドパスなどを選択する一般的なフィルターが2つ。それぞれ12/24dB、サチュレーション、ダーティーなどのバリエーションもある。そして各種ローパス、ハイパスとComb、Bitcrusher、リング・モジュレーターといったフィルターの枠を超えてエフェクティブな加工をするデジタルフォーマーの合計3つが用意されており、さらに3オシレーター、3フィルターのルーティングもかなり自由度が高い。

エンベロープはフィルター1、2、アンプ、フリー用に3つの計6つ。LFOも6つ。その他多数のモジュレーション・ソースがあり、40スロットのモジュレーション・マトリクスでさまざまなパラメーターに対してモジュレーションが行える。

オシレーターは3基。5種類(Wavetable、Waveform、Particle、Resonator、Kernels)のアルゴリズムで音源タイプを選ぶ

その他にも、内蔵エフェクトが5つ同時に使用できたり、パネルをXYパッドとして使用したり、最終出力のオシロスコープや周波数アナライザー表示など、まだまだ紹介しきれない機能が満載されている。有名アーティストによる相当数のプリセット・サウンドが用意されている上、音色タイプ、制作者などといった分類をして選択できるので使いやすい。とにかく機能が多すぎるので、全くゼロから音を作るのはちょっと大変だが、プリセット・サウンドを使ってもエディット次第でまたたく間に新しいサウンドへと変化するのも魅力だ。

鍵盤のないハードウェア音源タイプなので、MIDIキーボードで演奏、あるいはUSB接続でDAWに連携することが前提となるが、本体にも16個の演奏用パッドが用意されていて、半音単位のノート、さまざまなスケール・ノート、自由に登録できるコードなどが演奏可能になっている。

ソフト音源でもデジタル・シンセが多く発売されているが、これだけの高性能、高品質となると、おそらく現在のパソコンにはまだ荷が重すぎるだろう。ハードウェアだとその心配もないし、音楽スタイルによっては本体だけでも演奏できる上、ライブでも負荷なく使える。ハードウェアの良さを生かした素晴らしく強力な武器になるだろう。(文:松前公高)

5つ同時使用可能な内蔵エフェクト、XYパッドとして使用できるパネル、最終出力のオシロスコープや周波数アナライザー表示など機能満載

製品情報

WALDORF Iridium

価格●オープンプライス(市場予想価格:278,800円)

Specifications

●ボイス数:16ボイス・ポリフォニー、デュオ・ティンバー※Waldorf Quantumシンセエンジンとの互換性あり●オシレーター:3基、オシレーター・モード=Wavetable、Waveform (ヴァーチャル・アナログ)、Particle (サンプリング/グラニューラー・サンプリング)、Resonator、Kernels (オーディオレートでFMを介して相互リンクできる最大6つのサブ・オシレーター)●フィルター:ボイスごとに3基(ステレオ・フィルター)、デュアル・デジタル・フィルター(独立した2つのモードのフィルター)、12/24dB LP/HP/BP をすべて組み合わせ可能、Nave, Largo, PPG, Quantum and StateVariableモデル●デジタルフォーマー:Waldorf Nave、Largo、PPG 3Vからの HP/LP/BP/Notch フィルター・モデル、Combフィルター、Bitcrusher、Drive、RingMod、StateVariable mode、フィルタービューにアナライザーを表示、モジュレート中にフィルター・カーブを移動表示(オプション)、調整可能なパンとレベルを備えたフィルター・ルーティング機能●モジュレーション:6基のエンベロープ、6基LFO、Komplex モジュレーター(カスタム形状のエンベロープやLFOを生成)●モジュレーション・マトリクス:40スロット、Fastアサイン・モード、1つの追加コントロールとアマウント量を設定可能、モジュレーション・マトリクスがすべて使用されるまで、すべてのソースとデスティネーションを使用可能●パッド:RGBバックライト付き4x4シリコン・パッド・マトリックス、パッドによるノート、コード、アルペジオ、シーケンスの演奏、ラッチ・モード●パフォーマンス機能:アルペジエーター、ノートとパラメーター用の最大32ステップのステップ・シーケンサー、パッチをすばやく呼び出すためのお気に入り画面、オンスクリーンMod ホイール、ピッチベンド、アフタータッチ●パッチ:1000 以上のファクトリーサウンド、7000パッチ・メモリ・スロット容量、Quantum からのパッチのロード(その逆も可)、パッチリストのカテゴリ・フィルター、2GB のユーザー・サンプル・フラッシュ・メモリー●接続端子:2つのTS(アンバランス)出力、2つのTS(アンバランス)入力、ゲインコントロール付きのヘッドホン出力、DIN MIDI IN/OUT/THRU、USB MIDI、ストレージおよびMIDIデバイス用のUSBホストMicroSD スロット、ケンジントン®ロック●CV接続:4CV入力、ゲート・イン、トリガー・イン、クロック・イン、クロック・アウト、入力は、モジュレーション・マトリックスのモジュレーション・ソースとして使用可能●440(W)×305(D)×85(H)mm(コントロールを含む)●重量:5.4kg

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