FM/ウェーブテーブルの現在〜KORG modwave

『FILTER Volume.02』掲載企画“FM/ウェーブテーブルの現在”では、シンセ・シーンで再び注目を集めているFM/ウェーブテーブル・シンセサイザーを特集。各メーカーからリリースされている最新のFM/ウェーブテーブル・シンセのレビューをWebでも公開! 

充実したウェーブテーブルを内蔵
現代的かつユニークな機能を搭載し
シンセサイズの可能性を追求

コルグmodwaveは、wavestateやopsixと兄弟のようなデザインを持つ最新機種で、本機はウェーブテーブルに特化しながらも多数のモディファイアが使用できるなど、現代ならではのさまざまな機能を付加したモデルとなっている。

突拍子もない音色変化が得られるということで近年再び注目されるウェーブテーブルだが、本機では単一サイクルの波形を最大64種類並べたものを1つのウェーブテーブルとし、そのポイントを自由自在に移動して音色を劇的に、または滑らかに変化させられる。ウェーブテーブルはあらかじめ200以上用意されており、それらを2つ個別に選択し、ブレンドすることで全く新たな波形を生成することも可能。しかもそれぞれに30種類以上のモディファイアや波形をさまざまに変化させられる13種のモーフ・タイプを装備している。

と、すでにこれだけでも果てしないが、ウェーブテーブルはSerumフォーマットやユーザー・オリジナルのものをインポート可能。さらにオシレーターはもう1系統用意されており、ここまでのほぼ全機能が使用できる上にモーフ・タイプにはAM、FM、RINGなども用意されている。また、オシレーターは個別にサンプル・モードにも切り替え可能であり、ピアノやドラムなどの一般的なPCMシンセサイザーで考えられるさまざまな波形や、生楽器のアタック部分のみの波形も豊富に用意されている。

200以上のウェーブテーブルを内蔵し、30種類以上のモディファイアや13種のモーフ・タイプを装備

Polysix、MS-20タイプなど選択可能なフィルターだが、マルチ・フィルターではHP+LPなど複合型のフィルターをさらに2系統クロスフェードすることも可能。エフェクターもレイヤーごとに3系統と、マスターには同社OasysやKronosに搭載されたOverbと呼ばれる高品質なリバーブなどが使用できる。さりげなくレイヤーに触れたが、実はmodwaveはここまで紹介したフィルターや後述のモーション・シーケンシングも含むすべてのシンセ・エンジンを2系統レイヤーで贅沢に使用できるモンスター・マシンなのだ。

ユニークな機能が、パネル左上に搭載されたKaoss Physics。ゲームなどに用いられる物理計算であたかも慣性や重力が働いているかのようにボールが壁に跳ね返ったり、設定を変えるとすり鉢状になっているかのように回転しながら中心に向かって転がり落ちていくような動きを得られるというもので、パッドに触れると画面上をボールがさまざまに動き回る。このボールを各パラメーターのモジュレーションに用いることで、これまでになかった有機的な変化を生み出せるようになっている。

Polysix、MS-20タイプのフィルターを装備。マルチ・フィルターでは複合型のフィルターをさらに2系統でクロスフェード可能

モジュラー・シンセの世界ではさまざまセンサーを利用して水や光、時には昆虫といったものの動作をモジュレーション・ソースに利用するような試みがされるが、それに近い感覚で浮遊感や重力感のある変化が得られる。modwaveに搭載されたモーション・シーケンシング2.0はとても柔軟なステップ・シーケンサーで、スタートやループのポイント、ステップ数も自由に設定できる4つのレーンの組み合わせを、さらにシェイプ、タイミング、ピッチというレーンで制御できる。それぞれのステップ数は最大64で、これらの組み合わせで果てしない確率を生み出すことが可能。

あまりに膨大なシンセサイズ機能を持つ本機だが、PC/Mac用のエディターを利用すれば各機能が細かい部分まで見渡せるので、一度全体像を把握すれば本体のパネルがとても効率的に配置されていることにも気づく。これだけの音色変化が得られる本機では、それ自体を楽しむドローン的な使い方でも効果を発揮する。さらに、アルペジエーターとともにホールド専用のボタンも用意されているし、押すたびにパラメーターをランダム変化させるボタンや最終段の波形をモニターできるアナライザーなど、細かい部分まで行き届いているmodwave。試奏する際は鍵盤だけでなく、ぜひパッドや赤い4つのノブ、ホイール類を触ってみてほしい。(文:Yasushi.K)

レーンでの制御による柔軟なステップ・シーケンサー、モーション・シーケンシング2.0

製品情報

KORG modwave

価格●110,000円

Specifications

●鍵盤:37鍵(ベロシティおよびリリース・ベロシティ対応)●最大同時発音数:32ステレオ・ボイス●音源システム:modwaveシンセシス・エンジン●コントローラー:Mod Wheel、Pitch Wheel、Kaoss Physics、4×Mod Knobs●その他のソース:4×Envelopes、5×LFOs、2×Mod Processors、2×Key Track、Seq Lanes A-D、Step Pulse、Tempo、Program/Performance Note Count、Program/Performance Voice Count、Poly Legato、Velocity、E×ponential Velocity、Release Velocity、Gate、Gate+Damper、Note-On Trigger、Note-On Trigger+Damper、Note Number、Aftertouch and Poly Aftertouch (e×ternal MIDI only)、MIDI CCs+/−、MIDI CCs+●デスティネーション:個々のモーション・シーケンス・ステップのパラメーターを含む、ほとんどのパラメーターをモジュレート可能。モーション・シーケンスの長さに応じて、プログラムごとに1,000以上のモジュレーションを設定可。●エフェクト:<Pre FX>デシメーター、グラッフィックEQ、ギター・アンプ、モダン・コンプレッサー、パラメトリックEQ、レッド・コンプレッサー、リング・モジュレーター、トレモロ、ウェーブ・シェーパー<Mod FX>ブラック・コーラス/フランジャー、ブラック・フェーズ、C×-3ビブラート・コーラス、EPコーラス、ハーモニック・コーラス、モダン・コーラス、モダン・フェーザー、オレンジ・フェーズ、Polysixアンサンブル、スモール・フェーズ、トーキング・モジュレーター、ビンテージ・コーラス、ビンテージ・フランジャー、ビンテージ/カスタム・ワウ、Voxワウ<Delay>L/C/Rディレイ、マルチバンドModディレイ、リバース・ディレイ、ステレオ/クロス・ディレイ、テープ・エコー<リバーブ>アーリー・リフレクション、Overb<マスターEQ>4バンド・パラメトリックEQ●入出力端子:ヘッドホン端子(ステレオ・フォーン)、OUTPUT L/MONOとR端子 (TRSフォーン、インピーダンス・バランス)、DAMPER端子 (フォーン、ハーフ・ダンパー非対応)、MIDI IN/OUT端子、USB B端子●外径寸法:565(W)×338(D)× 92(H)mm●重量:2.9 kg

お問い合わせ

コルグお客様相談窓口
TEL.0570-666-569