FM/ウェーブテーブルの現在〜MODAL ELECTRONICS Argon8

『FILTER Volume.02』掲載企画“FM/ウェーブテーブルの現在”では、シンセ・シーンで再び注目を集めているFM/ウェーブテーブル・シンセサイザーを特集。各メーカーからリリースされている最新のFM/ウェーブテーブル・シンセのレビューをWebでも公開! 

モーフィング可能なウェーブテーブルと
多彩なモディファイアにより
想像を超えるサウンドを生成

モーダル・エレクトロニクスのArgon8(アルゴン・エイト)は、イギリス製のシンセサイザーである。発売から1年余りを経て61鍵バージョンのArgon8Xも追加され、デスクトップ・モジュールのArgon8Mと併せて3つのラインナップになったのだが、コレ実はかなりすごいシンセサイザーなのだ。

モーダル・エレクトロニクスのシンセサイザーは日本ではあまり馴染みがなかった。3年前に発売された小型のデスクトップ・シンセ、Skulptでその存在を知った方も多いと思うが、実はそれ以前にModal 001(デュオフォニック)、002(12音ポリ)という実験的かつマニアックなスペックを持つウェーブテーブル・シンセサイザーが存在した。Argon8はその流れを洗練させつつコンパクトに、さらに大変リーズナブルなお値段にまとめてリリースしてきた意欲作である。

ウェーブテーブル・シンセと言うと、古くはPPG WaveやコルグWavestationのように、1周期ごとの波形をカスケード接続したものがまずイメージされるが、最近はその流れをさらに細かくしたり(グラニュラー)、読み出しのポイントやカスケード接続の編集が自由自在になったり(ウェーブ・シーケンス)、という方向で進化して来た。しかしArgon8はまたちょっと違った方向で圧倒的な音色バリエーションを生み出している。つまり、デジタル・オシレーター部分での圧倒的多数な元波形のストックと、そのリアルタイムな相互変調の方法に今までにないくらいのバリエーションがそろっているのだ。もちろんフィルター・セクションもエフェクトも、シーケンサーも優秀なのだが、ことこのシンセに限っては何と言っても発音部の奥深さにトドメを刺すと思うので、今回はそこを見ていきたいと思う。

コンパクトなサイズとリーズナブルな価格も魅力

オシレーター・セクションはWave1とWave2に大きく分かれ、それぞれ24バンク(Wave1)と24+4バンク(Wave2)の波形が使用可能。この“バンク”の中にいくつもの波形がセットで存在しているのだが、これをすべて連続可変でモーフィングすることが可能で、コレがまず基本である。非常に倍音の鋭いメタリックな波形から、アナログ・シンセらしいシンプルな波形まで、つながりが非常にスムーズなモーフィングだ。演奏しながらここをグリグリやってもきちんと追従してくるので気持ちいい。パネル中央にはわかりやすいディスプレイがあり、波形のエディット中はグラフィカルに変化が表示される。

ピッチはそれぞれtuneのノブで半音単位で±2オクターブ、shiftを押しながらさらに微調整が可能なタイプ。また、Wave1とWave2間のインターバルもSpreadノブでコントロールができる。気が利いているのは、パラメーター半分まではデチューン効果の微調整、半分から上は3rd、4th、5th、octなどクォンタイズされたインターバルになること。エディットが非常にラクでかつ楽しい。

オシレーター・セクションでは“バンク”の中に用意された波形をすべて連続可変でモーフィングできる

さて、ここまで来てやっと“基本の波形”になるわけだが、その後Wave1と2間のクロス・モジュレーションする方法が8通りあるのもすごい。Phase Modulation(かつてのカシオのPD方式より過激。深く変調すると音程感がメチャクチャに)、Ring Modulation、Amp Modulation、Hard Sync、Wind Sync、Shaper(クロス・モジュレーションさせる信号を歪ませる)、Inverter(位相逆転)、Sync RMなど、おおよそ考えうる2つの波形の相互干渉・変調のすべてがリアルタイムでコントロールできる。

しかしこれでようやくフィルターに進めるかと思ったら大間違い。さらに各Waveに独立してかけられる32種類のウェーブテーブル・モデファイアが搭載されており、これはサンプルレートやビットレートのローファイ化、さまざまなアルゴリズムを利用したバリエーションの生成などとてもここには書き切れないほど。

そして特筆すべきは、音源の部分だけでもこれだけ多機能なのにエディットがしやすく楽しいこと。もはやウェーブテーブルだからどう、FMだからどうという次元ではなく、デジタルで波形を思いどおりに、いや、思いもつかないところまで作り出していく気にさせてくれるシンセサイザーだ。(文:飯野竜彦)

各Waveに独立してかけられるウェーブテーブル・モデファイアを32種類搭載

製品情報

MODAL ELECTRONICS Argon8

価格●オープンプライス(市場予想価格:96,700円)

Specifications

【音源】ポリフォニック・ウェーブテーブル・シンセサイザー【同時発音数】8ボイス・ポリフォニック、ポリチェイン機能を使用すると2台のARGON8シリーズを使用して16ボイスに拡張可能【MPE】MPE対応のMIDIコントローラーに対応【オシレーター】●1ボイスあたり4基、32種類のウェーブテーブル・オシレーターを搭載●120個のウェーブテーブルは5つのモーフィング可能な波形セットの24バンクに分割、オシレーター2では追加のPWMバンクと3つのノイズ/モジュレーション・バンクにアクセス可能●32の静的ウェーブテーブル・モディファイア(De-rez, Wave Folders, Wave Shapers, Phase Shapers Rectifire など)を搭載●Phase Mod(FM)、Ring Mod、Amp Mod、Hard Sync、Windowed Syncを含む8種類のオシレーター・モディファイアを搭載●Voice Drift、Width コントロールを装備【フィルター】4種類のフィルター(2ポール・ステイトバリアブル・フィルター)【モジュレーション】●アンプ、モジュレーション、フィルター用の3つの専用エンベロープ・ジェネレーターを搭載しネガティブ(リバース)にも設定可能、エンベロープは個別または3つすべてを同時に設定可能●2基のテンポ同期も可能なオーディオレートLFO (1つはポリ、1つはグローバル)●8基の割り当て可能なモジュレーション・スロット、11のモジュレーション・ソースと52のモジュレーション・デスティネーション、共通のアサインを行うための4つの追加の固定モジュレーション・ルーティング【シーケンサーとアルペジエーター】●512ノートのポリフォニック・リアルタイム・シーケンサーとステップ・シーケンサー、4つの記録可能/編集可能なパラメーター・アニメーション(ディレイFX、LFO、シーケンサー、アルペジエーターは内部または外部でクロック設定可能)●ステップ・シーケンサー:最大64ステップ、1ステップあたり8ノート、4レーンのパラメーターロック・アニメーション、ステップ入力モード、ゲート・モードとレスト機能を含む複数の再生モードを搭載●32ステップのプログラム可能なアルペジエーターを内蔵、休符をプログラム可能、リピートせずに最大2048ステップまでのランダム再生【エフェクト】●ウェーブシェイピング・ディストーション●3つの独立したFXエンジンにエフェクトを呼び出し、任意の接続順で使用可能●エフェクト・タイプ:コーラス、フェイザー、フランジャー(Pos)、フランジャー(Neg)、トレモロ、LoFi、ロータリー、ステレオディレイ、ピンポン・ディレイ、クロスオーバー・ディレイ、リバーブ、任意の順番に入れ替え可能【鍵盤】FATAR 37鍵キーボード(ベロシティとチャンネル・アフタータッチ付き)【入出力】デュアルモノ・ライン出力、ヘッドフォン出力、ステレオ・オーディオ入力、MIDI DIN入出力、アナログ・クロック・シンク入出力、USB 接続によるクラス・コンプライアントMIDI、エクスプレッション・ペダル入力、サスティン・ペダル入力【外形寸法】555(W)×300(D)×98(H)mm【重量】5.6Kg

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