“DNAを受け継ぎ活躍する現代のシンセサイザー”を検証 〜NORD Nord Wave 2〜

『FILTER Volume.01』掲載企画“DNAを受け継ぎ活躍する現代のシンセサイザー”では、現在の音楽シーンで実力を発揮しているシンセサイザーを検証。歴代の名器の機能やサウンドはどのように継承され進化したのかに注目し、各機種に迫った本記事をWebでも公開! 

バーチャル・アナログの元祖メーカーが放つ
音色の個性が魅力的なNord最新モデル

注目Point:4種の音源を完全独立の4パートにアサイン可能

バーチャル・アナログ・シンセ(アナログ・モデリング・シンセ)の元祖は1995年に発売されたクラビア社のNord Lead。ダンス、テクノの音楽界を中心に世界で一大Nordブームを引き起こした。そのNord Leadが2、3、4と進化を遂げて、さらに登場したのがあらゆるサンプルをオシレーターとして使用でき、その波形を加工して新感覚のサウンドを思うがままに創り出せるNord Wave。そしてこれらの機種の進化をすべてまとめて1台に集約したのが本機Nord Wave2である。バーチャル・アナログ・シンセの最進化形と言えるだろう。

さらに、FM音源まで搭載されており、なんでもありの非常に自由度が高いシンセであるが、一新されたインターフェースにより音作りから音の加工、モーフィングやレイヤー、スプリットの設定、エフェクト、ホイールなどへのコントロール先の割り当てまですべてが徹底的にシンプルに扱えるようになった。Nord史上最も自由度が高いシンセでありながら、旧モデルよりはるかに簡単に操作できるという非常にユーザーにとって嬉しいモデルである。またプリセットを弾いてみるとどのサウンドもノード社らしい洒落たセンスが散りばめられ、総じて現代的で深みがあり、次々にアイディアが湧いてきてプレイヤーをその気にさせてくれる。

本機はバーチャル・アナログ、ウェーブテーブル、FM、サンプルという4つの音源を持ち、完全独立の4パートに自由にアサインできる。バーチャル・アナログのシンセを4つ重ねてとてつもなくファットなサウンドを作ることもできれば、サンプルに読み込んだリアルな生のストリングス・セクションにシンセ・パッドを加えたり、FM音源のキラキラした金属音やウェーブテーブル音源の個性的なサウンドと生楽器を混ぜたり、あるいは同音色のアタックをずらして並べたり、オクターブを変えて配置、デチューンさせたりととにかく可能性は無限大だ。4系統が完全独立し、4種の音源を持つというのがミソ。贅沢極まりない。

その中でもサンプル音源は特に秀逸だ。本体にもたくさんのサンプルを保存できるが、Nord Sample Library 3.0のページには、生楽器から数々の名機シンセ、メロトロンまでとにかくどれもハイクオリティで即使用可能な、Nordが自信を持つ音色が目白押しである。4つの異なる音源を自由に組み合わせるだけでも楽しいが、生楽器サウンドをNordSample Editor 3で加工して読み込めるのでサウンド・メイキングの可能性も無限と言える。

お家芸のバーチャル・アナログ音源は、さまざな基本波形の他にShapeカテゴリーの波形を選べばOSC CTRLツマミで波形を自由にスムーズに変化させられる。またMultiやSuperといったカテゴリーでは異なる波形が複数重なっており、それらをOSC CTRLツマミでさっとデチューン具合を決めるなんてことも可能。これは気が利いているし、時短になる。さらにSyncカテゴリーを選べばシンク具合がOSC CTRLツマミでスムーズに変化する。

注目Point:Nordらしい個性的な音色を素速くシンプルに作成

フィルター・セクション、アンプ・エンベロープ・セクションもシンプルにまとまっている。Nordらしいキレのいいフィルターも6種類と豊富だ。音作りに関わるすべてのセクションにはGROUPボタンがあり、このボタンがONの場合は立ち上がっている音源を一括して調整することも可能だ。LFOセクションもディスティネーションが3つとシンプルであるが逆にそれが良い。複雑なディスティネーションを選べても使えるサウンドにならないことも多いからだ。こういう割り切り方は、演奏者の欲しいサウンドがわかっているからこその潔さだと感じた。

エフェクトもコーラス/揺れ系、EQ、ディレイ、リバーブがそれぞれ別セクションに分かれており非常に使いやすく、演奏中にもエフェクト操作を積極的にできるだろう。多機能なシンセでは設定が面倒なことも多いレイヤーやスプリットの設定も本機ではいたってシンプル。本体中央のLAYER CONTROLセクションに4つのスライダーが並び、音量やオン、オフ、現在の設定も確認でき作業効率、視認性とも抜群。アルぺジエーターはポリフォニック・モードとゲート・モードがあり、必要十分な機能がわかりやすく配置されている印象だ。MASTERCLOCKボタンでアルぺジエーターやLFO、エフェクトを楽曲に同期させることも可能。ライブ・モードではレイヤーやスプリット、エフェクトなど細かなセッティングを5パターン保存できる。また本モードではノブを触ればその設定を自動記憶しておいてくれる。

Nord伝統のMORPHセクションでは1つのコントロール・ソースで複数のパラメーターを同時にコントロールできる。複数のサウンドのバランスをホイールの動きで変えたり、エフェクトのかかり具合をタッチでコントロールしたりと、ステージにおける表現力にも優れている。またこれらの設定もMORPHボタンを押しながら、コントロールしたいノブやフェーダーを開始位置から終了位置まで動かすだけという一瞬の操作で完了する。

Nord LeadにもあったIMPULSE MORPHボタンも強力だ。さまざまなパラメーターがボタンを押している間だけ変化するというものだが、例えばボタンを押している間だけ4つの音源のフィルターが全開になるよう設定しておけば、ボタン連打でリズミックにコードを鳴らすなんてことも可能だ。あるいはLFOの周期を変えたり、波形を切り替えたりレゾナンスを上げたりと設定次第で斬新な表現ができる。

以上のように本機は音作り、表現の自由度が恐ろしく高いのに、すべての操作・設定が驚くほどにシンプルでわかりやすい。そしてサウンドはNordらしさに溢れ、キレがいい音色から微妙な色彩感をもつ音色までを作成でき、斬新なスピード感のある表現をする機能も持ち合わせている。センス重視のクリエーターや、演奏でアナログ・シンセとは一線を画した新たな表現をしたいプレイヤーに強力にオススメできる機種である。(文:YANCY)

製品情報

NORD Nord Wave 2

価格●オープンプライス(市場予想価格:330,000円)

Specifications

●鍵盤:61鍵ウォーターフォール鍵盤 アフタータッチ付●音源:サンプル、バーチャル・アナログ、ウェーブテーブル、FM●最大同時発音数:48●パート数:完全独立4パート●パフォーマンス:アドバンスドアルペジエーター(ポリフォニックトリガーモード付き)、ゲートエフェクト、モーフコントロール、アルペジエーター/LFO/エフェクトをマスタークロック同期可能、ビブラート(3 タイプのディレイ設定、ホイール・アフタータッチへのアサイン可能)●オシレーター:アナログ=ベーシック波形/シェイプ/マルチ/シンク/ノイズ(16タイプのオシレーター)/サンプル、ウェーブテーブル、アドバンスドFM音源(正次倍音、非正次倍音) トゥルーユニゾンモード●モジュレーションLFO:5 タイプの波形、フレキシブルなシンク、ルーティング設定AD/AR エンベロープ●アンプ:ADSRエンベロープ、トランジェントアタックモード●フィルター:12、24dB/Octローパスフィルター、ローパス M、バンドパスフィルター、ハイパスフィルター、ローパス+ハイパスフィルター、フィルタードライブADSR エンベロープ●エフェクト:FXセクション(トレモロ、パン、リングモジュレーター、コーラス、アンサンブル、バイブ)/EQ セクション(ドライブ付き)、ディレイセクション、リバーブセクション●外形寸法:990(W)×295(D)×100(H)mm●重量:8.75kg

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