“DNAを受け継ぎ活躍する現代のシンセサイザー”を検証 〜SEQUENTIAL Prophet-5〜

『FILTER Volume.01』掲載企画“DNAを受け継ぎ活躍する現代のシンセサイザー”では、現在の音楽シーンで実力を発揮しているシンセサイザーを検証。歴代の名器の機能やサウンドはどのように継承され進化したのかに注目し、各機種に迫った本記事をWebでも公開! 

今もなお世界中で愛される名器が完全復活
機能の細部まで強化された現代版Prophet

注目Point:3つのリビジョンの音色が1台に

シーケンシャルの公式SNSアカウントが突如“The Return of a Legend - Reintroducing the Sequential Prophet-5 !(伝説の復活。Prophrt-5再登場!)”と呟いたのは日本時間2020年10月2日1:35のことだった。筐体写真付きのこの投稿は瞬く間にSNSを駆け巡り、“Prophet-5再発!”の話題で騒然となったのは言うまでもない。

1978年、デイヴ・スミス氏が設立したシーケンシャル・サーキットから生まれた世界初のプログラマブル・ポリフォニック・シンセProphet-5は一躍世界的な人気となり、時代を代表するシンセとなった。当時、その特徴的な音色で彩られたYMO『BGM』やJAPAN『Tin Drum』など不屈の名作アルバムからProphet-5に憧れた人も多かったのではないだろうか。

製造が終了する1984年までにRev1(182台)、Rev2(約1000台)、Rev3(約6000台)の合計約7200台が作られ、その後の中古市場でも花形シンセであった。しかし経年劣化で状態の良い筐体は年々減り続け、それに伴い修理に必要なカーティス製のチップも次第に枯渇していく流れにあった。中古市場に出る筐体も減り続け、いよいよ寿命も間近かと噂され始めてもいたのだが、チップの特許消滅後にVCOクローンが作られ、2016年には本家カーティスからCEM3340 RevGが復活し、チップ枯渇問題は落ち着きを取り戻していた。

シーケンシャル・サーキットは80年代に社名をシーケンシャルに変更しており、1987年に事業停止したあとの同社の資産とブランド名はヤマハが所得していた。デイヴ氏は2002年にD.S.I を設立していたのだが、2015年ローランドの故・梯郁太郎氏の働きかけもあってヤマハより親善の意を込めてデイヴ氏へブランド名を返還。Prophet-5が40周年を迎えた2018年にD.S.Iの社名がシーケンシャルに変更された。そうした流れの中で2020年秋、本家シーケンシャルの名を冠したProphet-5復活という電撃的な発表があったのだ。

前置きが長くなったが、こうしたドラマチックな経緯をも含む伝説のシンセがこのProphet-5なのである。それでは、我々の時代に蘇った“Rev4”ならではの特徴を探りたい。なお、Rev4は同時発音数5ボイスと10ボイス(Prophet-10)の2バージョン、そしてそれぞれのテーブルトップ・モジュールがラインナップされている。

VCOにはシンク可能な2基のOSC、そしてホワイト・ノイズ1基を搭載している。もちろんOSCのチップはカーティスCEM3340 RevGだ。OSC A、Bともにノコギリ波と矩形波、OSC Bにのみ三角波も備わっている。これらの波形はボタン選択式となっているので、同時押しで波形のミックスができる。また、OSC BはLo Freqボタンが付いておりLFOとしても活用できる。

VCFには旧Rev1&2に使われていたSSM2040の最新版SSI-2140と、旧Rev3に使われていたCEM3320という特性の異なる2種類の-24dB LPFが搭載され、ボタンで切り替え可能となっている。これらのキャラクターの差は特にレゾナンス発振時に顕著に現れる。Rev1&2はレゾナンスが強烈でエグみを出すことができ、一方のRev3はレゾナンスを発振させてもマイルドな響きを失わず、和音の響きも崩れない。どちらも甲乙つけがたい魅力がある。また内部温度に影響されず動作が安定しているという点でも評価できる。なにより、これまではRev1から3まで揃えないと手にできない音色が1台ですべて手に入るというのは至極の悦びである。

注目Point:演奏者の心をくすぐる出音の良さ

目を引くのは新たに搭載されたVINTAGEツマミだ。デイヴ氏によれば、Rev1〜3はボイス毎にVCO、VCF、EGそれぞれ応答速度差や周波数の揺らぎがあることで有機的なサウンドとなっていたそうで、それを再現するためのツマミだそう。試しにAmp EGのアタックを1時方向にセット、他はゼロにセットして和音を弾いて確認してみると、ツマミを回すにつれボイスごとのピッチや挙動がバラバラになっていくのがわかる。実際にRev3機で同じ設定を試すと同じ挙動となるので、こうしたところまで再現されたのには恐れ入る。

UNISONモードの機能も強化されている。ボイス・スタック数やデチューン量が設定でき、シャープな音から分厚い音まで即座に鳴らすことができる。またコード・メモリー機能も新たに追加されており近代和声的な平行和音のコード進行も容易だ。

POLY-MOD部はProphet特有の音色を生み出した機能で、OSC BやVCF EGでOSC AのPitchとPW、Filterを変調することができ、坂本龍一作品でも聴かれる過激な音色や複雑な倍音を持つ音を生み出すこともできる。

特筆に値するのが出音の良さである。Rev4でさまざまな音色を作ってみると、豊潤な響きの音色をも余裕をもって細部まで鳴らしきっていると感じられる。ギターに例えると、最高品質のボディが醸しだすふくよかな響きといったところだろうか。Amp EGのリリースを長めに設定して弾いてみると、まるでリバーブをかけているかのように音が消えてゆくその瞬間まで繊細で滑らかなのだ。推測だがこれは電源周りの品質の高さによるものだと思う。ここはぜひチェックしてみてほしい。個人的に最も感動したのはこの出音の確かさと繊細さだった。

その他、LFOにはさりげなくINITIAL AMOUNTツマミが増設されていたり、ベロシティやアフタータッチにも対応したりと、まだまだ紹介しきれていない部分も多いのだが、このRev4は単なるRev1〜3の復刻版ではなく正統進化した現代のProphetとして最高のシンセに思う。約50万と高価ながらもこの豊かな響きは楽曲の中で存在感を発揮するだろうし、演奏することの心地よさや創作意欲への刺激をも鑑みるとむしろ破格かもしれない。何よりProphet-5が部屋にあるってだけでも最高の気分なのだ。(文:西田彩ゾンビ)

▲同時発売されたProphet-10

製品情報

SEQUENTIAL Prophet-5

価格●オープンプライス(市場予想価格:499,800円)

Specifications

●最大同時発音数:5音●鍵盤:61鍵(ベロシティ、アフタータッチ対応)●オシレーター:1ボイスにつき純正のCEM 3340 VCO×2基、オシレーター毎に設定可能なパルスワイズ、ハード・シンク、ローフリーケンシー・モード (オシレーターB)、キーボード・トラッキングのオン/オフ(オシレーターB)●ローパス・フィルター:4ポール・レゾナント・ローパスフィルター、Rev1/Rev2フィルターに使われていた SSM2040 チップの現代版 SSI-2140モード、Rev3 に使われていた純正の CurtisCEM3320 チップを使用したモード●エンベロープ・ジェネレーター:4ステージ(ADSR)●ローフリーケンシー・オシレーター:3つの波形(ノコギリ波、三角波、矩形波)を同時に使用可能、イニシャル・アマウントとモジュレーションホイールによるコントロール ●ポリ・モジュレーション:ソース=フィルター・エンベロープとオシレーターB、デスティネーション:オシレーターAフリーケンシー、オシレーターAパルスワイズ、フィルター・カットオフ●入出力:モノラル出力、ヘッドホン出力、MIDI IN/OUT/THRU、USB、CV入出力、GATE入出力、ローパス・フィルター・カットオフ用エクスプレッション・ペダル入力、ボリューム用エクスプレッション・ペダル入力、サスティン用フット・スイッチ入力 ●外形寸法:952.5(W)×416(D)×124(H) mm●重量:14.06kg

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