ビート・メイクで活躍する現行リズム・マシン/シンセサイザー〜YAMAHA MONTAGE M

『FILTER Volume.06』掲載特集“シンセサイザーとビート”では、ビートに使える注目のリズム・マシン/シンセサイザーをピックアップ。それぞれの機種でのビート・メイクの仕方や特徴に着目しレビューした記事をWebでも公開!

高品位なドラム・サウンドを搭載し
多彩なビート・メイクが可能なフラッグシップ・シンセ

ヤマハ最高峰機種であり、前代のMOTIFシリーズ同様に世界中の著名ミュージシャンにも愛用されているMONTAGEの最新機種であるMONTAGE M(以下本機)。今回は本機のドラム系サウンドのポテンシャルを検証してみたいと思う。

DTMではドラム系ソフトウェア使用がメインの昨今であるが、ロック系生ドラムはトランジェントの良さが肝要だ。1980〜90年代のサンプリングやPCM系ハードウェア・リズム・マシンのエッジーなサウンドが今斬新に聴こえてくるのも頷ける。2001年発売の初代MOTIFにして伝統の“AWM2”によるドラム・サウンドは即戦力とクオリティの高さにおいてすでに完成領域であり、アレンジ仕事にも貢献してくれた。

2023年発売の本機では同じAWM2ではあるが約10GBにも及ぶ膨大なメモリー搭載により解像度が劇的にアップ、中低域のプッシュ感やステレオ感溢れるアンビエンスなど、PCM系のガッツなテイストにソフトウェア系の繊細なテクスチャーを加味した極上のドラム・サウンドに仕上がっている。膨大なプリセットの印象だが、生ドラム系は高品位ドラム音源ソフトを意識しつつも芯のある存在感でどんなジャンルにも対応するキットのバリエーションを収録、イマジネーションが沸きまくること請け合いだ。

最大73種のパーツが鍵盤上に並び、ドラム系以外にパーカッションや効果音、キックやスネアの別バージョンなども多種スタンバイ。フロア・タムの余韻も胴鳴りがピッチ・ダウンするディケイ感まで十分な再現力を持つ。あまり例を見ない“ロートタム”の絶品な仕上がりにもニンマリ。もちろん808や909系など歴代の名機リズム・マシン、ヒップホップ&EDMからトランス系、各国エスニック系も豊富に収録されており足りない音はないほどの充実ぶりだ。

他にはFM-Xを使用したメタリックなビート・シーケンスを奏でる変調系プリセットも隠し味として有効だろう。バーチャル・アナログのAN-Xを使用したエレドラ系もソフト音源とはひと味違う懐かしくも威圧感のある王道サウンドだ。

また刷新されたDAコンバーターの搭載により、ハイエンドなマイクプリを通したようなシルキーリッチな立体感が、派手なオケ中にも屹立とした音像を確立する。ベロシティに対するレイヤーもスイッチ感もなくスムースかつ超リアルな音色変化だ。

1パーツ(鍵盤)ごとの音色変更もカテゴリー検索を併用すればオリジナル・キットの構築も簡単。ピッチなどの基本パラメーターの他に、2バンドまたはパラメトリックEQも施せるのでキックのビーター感やスネアのピークなど全73パーツ独立してEQ加工できる。さらにインサーション・エフェクト(A&B)のグループ適用も鍵盤ごとに可能ゆえ、キック類にディストーション、タム類にバスコンプをかけたりすることもOKだ。その後、3バンドEQと2バンドEQを通過し、マスター・エフェクトとして4種をルーティング可能。複雑なサウンドメイクも新機能の“ナビゲーション”画面からスピーディーに構築できる。VCM技術を駆使したEQやコンプレッサーなどの効き具合もアナログ風味満載で実戦的だ。

また最大16ステップの“モーション・シーケンス”を駆使すれば逆再生やグリッチなどトリッキーなフレーズも生み出せるのは本機独自のアドバンテージ。さまざまなパラメーターを複数同時に操る“スーパーノブ”によるアルペジエーターやリズム・パターンのカラフルなビートメイクも唯一無二だ。クリックをアサイナブル・アウト化、ヘッドフォン分配でメンバーがモニターすれば、本機をドラマーにしてのライブも楽しめる。

なお2024年初頭にソフトウェア版“Expanded Softsynth Plugin(ESP)”のリリースがアナウンスされており、MONTAGE Mシリーズ購入者のみ無償配布される。今回紹介したリズム系音色をはじめハードウェア同等のサウンドがDAW内で起動するメリットは計りしれない。(文:近藤昭雄)

製品情報

YAMAHA MONTAGE M

メーカー希望小売価格●MONTAGE M6:440,000円、MONTAGE M7:473,000円、MONTAGE M8x:517,000円

Specifications

【鍵盤】61鍵FSX 鍵盤(イニシャルタッチ/ アフタータッチ付)、76鍵FSX 鍵盤(イニシャルタッチ/ アフタータッチ付)、88鍵GEX鍵盤(イニシャルタッチ/ポリフォニックアフタータッチ付)【音源部】●音源方式:Motion Control Synthesis Engine/AMW2:最大128 エレメント、FM-X:8 オペレーター、88アルゴリズム、AN-X:3オシレーター、1ノイズ●最大同時発音数:AWM2=256音(ステレオ/モノ波形いずれも)、FM-X=128音、AN-X=16音●マルチティンバー数:内蔵音源16パート、オーディオ入力パート(A/D、USB)●波形メモリー:プリセット=10GB 相当(16bit リニア換算)、ユーザー=3.7GB●パフォーマンス数:3,369●フィルター:18 タイプ●エフェクト:リバーブ×12タイプ、バリエーション×88タイプ、インサーションA×88タイプ、インサーションB×89タイプ、マスターエフェクト×26タイプ、A/Dパートインサーションは83タイプ、マスターEQ(5バンド)、1stパートEQ(3 バンド)、2ndパートEQ(2 バンド)【シーケンサー】●容量:1パターン/ソング=約 130,000音●音符分解能:四分音符/480●パターン:パターン数=128、トラック=16シーケンサートラック、テンポトラック、シーントラック●アルペジエーター:最大8パート同時オン可、プリセット=10,922タイプ以上、ユーザー=256タイプ【その他】●ライブセット数:プリセット=128以上、ユーザー=2,048●接続端子:USB TO DEVICE [1] / [2]、[USB TO HOST]、MIDI [IN] / [OUT] / [THRU]、FOOT CONTROLLER [1] / [2]、FOOT SWITCH [SUSTAIN] / [ASSIGNABLE]、OUTPUT(BALANCED) [L/MONO] / [R](TRSバランス出力端子)、ASSIGNABLE OUTPUT(BALANCED)[L] / [R](TRSバランス出力端子)、[PHONES](ステレオ標準フォーンジャック)、A/D INPUT [L/MONO] / [R](標準フォーンジャック)●寸法:61鍵=1,037(W)×396(D)×131(H)mm、76鍵=1,244(W)× 396(D)×131(H)mm、88鍵=1,446(W)× 460(D)× 170(H)mm ●重量:61鍵=15.3kg、76鍵=17.6kg、88鍵=28.1kg

お問い合わせ

ヤマハお客様コミュニケーションセンター シンセサイザー・デジタル楽器ご相談窓口 TEL.0570-015-808 つながらない場合は TEL.053-460-1666