ビート・メイクで活躍する現行リズム・マシン／シンセサイザー〜KORG Nautilus AT

『FILTER Volume.06』掲載特集“シンセサイザーとビート”では、ビートに使える注目のリズム・マシン／シンセサイザーをピックアップ。それぞれの機種でのビート・メイクの仕方や特徴に着目しレビューした記事をWebでも公開！

ライブ／楽曲制作の現場で
柔軟に即戦力のリズムを作成できるワークステーション

コルグNautilus ATは機能満載のフラッグシップ・シンセですが、今回は“リズム”という視点でレビューしていきましょう。まずNautilus ATのプリセット音色のサウンドは、各音色とも明瞭な音の輪郭が見えるような粒立ちの質感があります。ドラムやパーカッション音色に関してはアタック感のある個性的なサウンドが特徴的で、非常に多数のドラム・セットや音色が用意されています。リズムを演奏させる上でアタック感ある粒立ちの音色は、エッジの効いたグルーブ感を出しやすいので、アクセントの効いたリズムを作る上でもメリットになります。

プリセットは音色だけでなく、ドラム・トラック用にも使用できるリズム・パターンも豊富です。ポップ、ロック、ジャズといったオーソドックスなリズム・パターンはもちろん、テクノやトランス、エレクトロニカなどのダンス系、さらにはワールドやトラディショナルといったパーカッションや伝統的な音楽のリズム・パターンなどが用意されています。例えば楽曲のアレンジの際に“〇〇風のリズム”など具体的なアレンジの方向性が決まっている場合には、これらの中から選ぶだけでイメージを膨らませていきやすくなります。さらにこれらのジャンルが細分化されていますので、より具体的なリズム・パターンを探すことも容易に行えるのが便利です。

また、Nautilus ATに収録されている効果音に関しては、素材集的な専門のライブラリー音源並みのクオリティだと感じたとともに、リズム・ループのアクセントとしても活用できるだけでなく、ワンショット系の音色を組み合わせたトリッキーなリズム・パターンを作ってみるのも良いでしょう。

Nautilus ATはプログラム・モードに装備しているステップ・シーケンサーのほか、MIDIトラック、オーディオ・トラックそれぞれを16トラック有した本格的なMIDIシーケンサーやオーディオ・トラック・レコーダー機能を搭載しています。オーディオ、MIDIともに編集の際に必要なメニューはひと通り揃っていますので、楽曲制作についてもNautilus ATだけで完結させることができる点は、ワークステーション・タイプのシンセにおける最大の長所だと言えます。

オーディオ・トラックに関しては、演奏録音の際のハードディスク・レコーディングやオーディオ・トラックのバウンス、2ミックスの作成などの設定のほか、本体のシーケンス演奏のリサンプリングやハードディスク・レコーディングのようにサンプリングが行えるイントラック・サンプリング機能を備えています。イントラック・サンプリング機能とはソングの演奏に合わせてオーディオ・ソースをサンプリングし、そのサウンドをトリガーするためのノート・データをソング中のポイントに自動的に作成する機能です。そのサンプリングしたサウンドもHD-1のシンセシス機能によってエディットできるなど、柔軟なサウンドメイクが行えます。

Nautilus ATでは単音色設定であるプログラム・モードの状態でもQuick Layer（クイック・レイヤー）やQuick Split（クイック・スプリット）機能によって、選択している音色の状態からレイヤーやスプリットの設定を組むことができます。また、プログラム・モードの音色単位で4つのステップ・シーケンサーを装備していますので、曲でメインで使用する音色とドラムのリズム・パターンやアルペジエーター設定を一緒に仕込んでおけるなど、ライブ時のパフォーマンスにおいても重宝するでしょう。サンプリング機能を活かしてシンセ・ヒットを作成し、それをリズム・ループのアクセントに使用するだけでなく、Wavestateなどにも搭載されているウェーブ・シーケンス機能も装備されていますので、ループ・フレーズを作成してトラックや演奏のバックグラウンドで使用するなど、本機1台だけで十分なパフォーマンスができます。その他ウェーブ・シーケンス自体を16ステップのループで作成し、それを元にドラムのパターンに絡む音色を作ってみるのもリズム・アレンジにおいてオリジナリティを出す上で効果的でしょう。（文：内藤朗／有限会社FOMIS）