ビート・メイクで活躍する現行リズム・マシン／シンセサイザー〜IK MULTIMEDIA UNO Synth PRO X

『FILTER Volume.06』掲載特集“シンセサイザーとビート”では、ビートに使える注目のリズム・マシン／シンセサイザーをピックアップ。それぞれの機種でのビート・メイクの仕方や特徴に着目しレビューした記事をWebでも公開！

スタンダードなドラムから複雑なサウンドまで
幅広く生成可能なアナログ・シンセ

IKマルチメディア社のUNO Synth PRO Xは、コンパクトなボディながらハイスペックなアナログ・スタイルの音源にアルペジエーターやステップ・シーケンサーなどを内蔵した、さまざまなシチュエーションで大活躍してくれるシンセサイザーだ。この小さいながら強力なシンセを今回はちょっと違った切り口で紹介していこうと思う。

まず実際に箱から出してみると……軽い（800g）！　軽くてもパネルは金属で、ツマミの回し心地もしっかりしているので高級感があって良い。もちろん音のクオリティも高く、まずプリセットをひととおり聴いてみたが、芯があり存在感がしっかりした音で、他の楽器と混ぜても埋もれないような音だった。操作性としては、ツマミやボタンのレイアウトがよく考えられていて、一度全体のレイアウトを把握しておけばストレスなく操作できるようになっている。またパネル右上に液晶とデータ・エントリーが用意されていることにより、複雑な変調（マトリックス）など面倒になりがちな設定も簡単に行うことができる。基本的には電源アダプター使用が推奨だが、USB端子からの電源供給（5V／1.5A以上）でも使用できるのが嬉しい！　専用トラベル・バッグも別売りで用意されているので、持ち運ぶことが多い場合は購入すると良いだろう。

では、シンセサイザーとしてのスペックを紹介しつつ、本誌特集の“シンセサイザーとビート”というテーマに沿って解説してみたいと思う。音源的にはアナログ（減算）スタイルで、波形をモーフィングできるオシレーターが3基＋ノイズ・ジェネレーターが用意され、各オシレーターはシンク、FM、リング・モジュレーションによる変調が可能なので、メタル・パーカッションのような複雑な倍音も作成す
ることができる。

フィルターは2基、1つはハイパスとローパス切り替え可能な2ポールOTAベースのフィルター、もう1つはSSI2164チップをベースにした、ローパス専用（2ポール／4ポール）フィルターとなっている。2つを並列に使用することもできるので、フィルター1でノイズを少し籠らせつつ、フィルター2を発振させエンベロープでカットオフをコントロールすることで、シンセ・タム的な“ピューン”という音を同時に出すこともできる。ちなみに、本体の鍵盤的なボタンは1オクターブだが、カットオフへのトラッキングを200%まで上げられるので、パネルのボタンのみでキックとスネアの“ドン、タン、ドド、タン”的な演奏も十分可能だ。

フィルターの後には2つのダイオードを使用したアナログ・オーバードライブが用意されているのだが、これが本当に良い！　かなりいい感じに歪んでくれるので、音作りする際には左上のDRIVEツマミをとりあえず動かしてみることをお勧めする。そしてデジタル・エフェクトは3基（モジュレーション＋ディレイ＋リバーブ）同時に使用できるので、コーラスでうねりを付けつつ、タイミング良くディレイをかけてフィル的に使用するということも可能だ。

自動演奏的な機能としては、アルペジエーターと64ステップのシーケンサー（ツマミの動きも書き込み可）が内蔵されているので、本体のみでの自動演奏はもちろん、外部シーケンサーのテンポに同期して演奏させつつ、ツマミを動かして変化を付ける使い方も良いだろう。背面にはCV、GATE端子も付いているので、外部のモジュラー・シンセをコントロールしつつオーディオ・インに入力し、本機のフィルターやドライブで加工することも可能だ。またMac、Windowsそれぞれのエディターが用意されていて、音色管理など見やすく便利なので、ぜひ使ってみてほしい。

いかがだったろうか？　今回はビート的に使用する際のお勧めとしてかなり駆け足で紹介したが、シンセとして紹介したい内容もまだまだ満載の本機、コンパクトでありながら音も良く実践的なので、曲作りやライブで活用できるはずだ。（文：守尾崇）