ビート・メイクで活躍する現行リズム・マシン/シンセサイザー〜KORG Drumlogue

『FILTER Volume.06』掲載特集“シンセサイザーとビート”では、ビートに使える注目のリズム・マシン/シンセサイザーをピックアップ。それぞれの機種でのビート・メイクの仕方や特徴に着目しレビューした記事をWebでも公開!

アナログを軸に独創的なデジタル技術を導入した
次世代型ハイブリッド・マシン

コルグDrumlogueは端的に言って21世紀型のリズム・マシンだ。アナログ、デジタル(PCM、ユーザー・サンプル)、シンセサイザー・サウンド(ノイズ、VPM、ユーザー・シンセ)といった多様なサウンドを生成するハイブリッド音源を持ち、マルチ・エフェクトやマルチ・アウトプットも装備されている。

ひと言でハイブリッドと言っても、本機のアナログとデジタルの混ざり具合は非常に特徴的だ。メインとなるBASS DRUM、SNARE DRUM、TOMS(High Tom、Low Tom)はまさにアナログそのもののサウンドだが、補助的にアタック音やスネアのスナッピーに関してはデジタル(PCM)が使われている。生ドラム音をサンプリングして加工したPCM音をレイヤーするというより、かつてのアナログ・リズム・マシンの名機のニュアンスを加えていくような感じなのである。アナログ音源のイメージをよりよく完成させるために、本物のアナログに加えてデジタルを活用するというのは、20世紀にはなかった発想だと思う。

そしてハイハットやシンバルなどの金物類やハンド・クラップなどに関してはデジタル音源が使われているが、トータルでキットとして聴こえてくる出音はファットでアナログ的な印象だ。そこにサンプルやシンセサイザー系のヒット音(コード感のある柔らかい音色なども作れる)やビープ音、ベース音なども加えられるので、全体としてはリファインされたアナログ・リズム・マシン+αといったハイブリッド具合となり、(サンプルベースの)他のハードウェアやソフトウェアとは全く違ったコンセプトのマシンだと言える。

Drumlogueは、ユーザー・エディット可能な128個のドラム・キットを内蔵できるが、A/B バンクに含まれるドラム・キットは、コルグ元祖のリズム・マシン“ドンカマチック”やその後のKRシリーズなど、かつての歴史的アナログ・リズム・マシンがそうだったのではないかと思われるくらい(今回は直接比較できなかったのであくまで想像だが)音が柔らかく中低域が豊かで、EQ(本機の内蔵マスター・エフェクトにも含まれていて、通すか通さないかは楽器ごとに設定できる)の効きもいい。一方でCバンク始めに含まれるキットはトラップ用として前面に出てくるサウンドに仕上げられており、これだけでも筆者はほしいと思ってしまった。どちらもぜひ楽器店やメーカーWebなどで確認してほしいキット・サウンドだ。

本機のBD、SD、LT、HTは基本的にはアナログ音源なので、大きなツマミでレイアウトされている各楽器3 つほどのパラメーターが、実に有機的でスムーズに音の変化を作ってくれる。これこそがサンプルベースのサウンドにない強みだ。

本機のシーケンサー機能は11パート(楽器)、64ステップをパターンの基本構成とし、キットとパターン両方を含むものをプログラムと呼んでいる。プログラムをチェイン・モードでつないだり、ループ・モードで繰り返したりして曲にしていくわけだが、興味深い機能はループ・モードでのパターン再生中にリアルタイムで再生ステップを指定して(限定させて)フィルインとしたり、その再生順をランダムにもできることだ。これはライブでも面白い効果を生むはずだ。

またパターン作成のための特徴的な機能として、本機はリズムやベロシティにクセを作るグルーブのテンプレートを多数持っていて(パート=楽器ごとの指定も可能)、そのタイムやベロシティ値の強度も指定可能だ。16分音符や8分音符スウィングの表現、ある楽器を全体に遅らせたり速めたり強めたり弱めたりできる(ConstOffset)のはもちろん、ボンゴやコンガやトライアングルといったパーカッションのグルーブや、LofiやBaileといったもたったりつんのめったりするもの、拍ごとに加速と減速を繰り返し“楕円形”の揺れを作り出すもの、パターン内でクレッシェンド/デクレッシェンドやリタルダンド/アッチェレランドを作り出すものなど、独創的なものが豊富に収録されている。時間をかけて実験していくことで、個性的なグルーブを作っていけそうだ。

Drumlogueはアナログ・サウンドを主軸としながらも、要所要所で独創的なデジタル技術を加えた、そういった意味でもハイブリッドなマシンと呼べると思う。(文:堀越昭宏)

製品情報

KORG Drumlogue

メーカー希望小売価格⚫93,500円

Specifications

●最大同時発音数 11 ボイス *ユーザー・シンセはMIDI経由でポリフォニックの発音も可能です。ボイス数についてはユーザー・シンセの実装に依存します。●サウンドエンジン:アナログ×4、PCM/ユーザーサンプル×6、マルチエンジン(NOISE、VPM、ユーザーシンセサイザー)×1●プログラム数(リズム・パターン含む):128(工場出荷時は64プリセット・プログラム)●ドラム・キット数:128(工場出荷時は64プリセット・キット)●エフェクト:REVERB、DELAY、MASTER●入出力端子:ヘッドホン端子、OUTPUT(L/MONO、R端子、AUDIO、OUT 1-4)端子、SYNC IN/OUT端子、AUDIO IN端子、MIDI IN/OUT端子、USB A端子(MIDIデバイスとの接続用)、USB B端子(ホストとの接続用)●外形寸法:317(W)×189(D)×73(H)mm ●質量:1.4 kg

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