ビート・メイクで活躍する現行リズム・マシン/シンセサイザー〜SOMA LABORATORY Pulsar-23

『FILTER Volume.06』掲載特集“シンセサイザーとビート”では、ビートに使える注目のリズム・マシン/シンセサイザーをピックアップ。それぞれの機種でのビート・メイクの仕方や特徴に着目しレビューした記事をWebでも公開!

リアルタイムに凝った音作りができる
セミモジュラー・タイプのリズム・マシン

ロシアの電子楽器メーカーSOMA LABORATORY(ソーマ・ラボラトリー)から、シンセ魂を揺さぶるモジュールが届いた。デザインも機能もユニークすぎる製品がラインナップされている中、筆者が最初に知ったのはオーガニック・ドローン・シンセサイザーと呼ばれるLyra-8であった。このPulsar-23にも同様なタッチセンサーがありデザインも踏襲されているが、ツマミの量やパラメーターが拡大している。セミ・モジュラー・シンセの形相ではあるが、カテゴリー的にはリズム・マシンのようだ。そして何より個性的なのが、ワニ口クリップでパッチする仕様になっていること。豊富なパッチ・ポイント、最大限にオープンな構成をコンパクトなサイズとコストで実現するためのアイディアだそう。本体の色は日本国内では白、黒、青、オレンジの4色から選ぶことができるようだ(本国サイトでは9色!)。

ルックスや仕様だけで驚いている場合ではなく早速電源を入れてみる。何もパッチしない状態で、BD、BASS/PERC、SD、HHTという4つの音源セクションのボリュームを上げタッチセンサーを叩くだけで上質な出音が確認できた。その4つのセクションは、シンセとミキサーが融合したような構成になっており、それぞれの音源に適合されたピッチ、フィルター、ウェーブシェイパーなどに加えEG、エフェクトのセンドがまとめられている。

この、シンセのようなリズム・マシン、左上のCLOCKジェネレーターの各クロック・ソースと音源4つのTRIGをパッチすれば、直ちにテクノ的なビートを生成させられる。それを左側のSHAOS(擬似ランダム・ジェネレーター)セクションでモジュレートするだけでもビートに多彩な変化を付けることができる。個人的にワクワクしたのは、TEMPO右のAMT(アマウント)をLFOやタッチCVなどでモジュレートすることでテンポ揺らしが可能なこと。

本機の真骨頂は、各セクション下段のREC/PLAYと丸いタッチセンサーを使って、4つの独立したレコーダー/ルーパーとしても活用できることだ。しかもノートの開始だけでなく長さも記録できるため、ドローンを生成させることもたやすく、それをモジュレーションさせることで実に有機的な動きを生み出せる。逆に、ステップ入力のようなリズムの構築はできず、そこを求めるならDAWシーケンサーをMIDI接続してPulser-23を鳴らすことを勧めるという潔さ。この役割の明確さこそが通常のリズム・マシンとは一線を画すところ。

右上にはFX(エフェクト)セクションがありディレイとリバーブを選択できる。全体のアウトプットは基本モノラルにまとめられているが、1/4インチ・ジャックの6ピンを使って6つあるパラアウトに接続できる。エフェクトの成分だけを取り出すといったことも可能だ。

左端上にはユーロラックと接続するための8つのミニジャック→コネクトピン・アダプターも完備。またアッテネーターやスイッチ、インバーター、VCAなどのセクションもあり、それらを駆使すればサイドチェインのような効果を生み出すこともでき、工夫しがいがある。

MIDIキーボードを接続してメロディックに演奏できるのはBASS音源セクションのモノシンセ(上位キー優先)であるが、4音源とも鍵盤にアサインできる。また左端中央のMIDI CVセクションはその名のとおりのコンバーターで、MIDIコントローラー4チャンネルを簡単にアサインできる。試しに4つのTRIGとつないでMIDIコントロールしてみたところ、ビートがドローンに移行するような効果を得られた。

ワニ口クリップはコネクトピンに複数噛ませられるので、マルチプルを省けて柔軟性も高いが、長時間つまんで操作していると指や腕に負担がかかるかもしれない。模索の段階では挟まず接触させるだけにするなどコツが必要だ。

オシレーターが上質な上にパラメーターも練られているため、出音の良さは絶品! しかもリアルタイム指向。ぴったり収まるキャリングケースも同梱されており、これ1台を持ち運んでライブをやりたくなる逸品だ。(文:坪口昌恭)

製品情報

SOMA LABORATORY Pulsar-23

価格●オープン・プライス(市場予想価格:357,000円)

Specifications

●4つのドラム・チャンネル:Bass Drum, Bass/Percussion, Snare Drum, Cymbals/Hi-Hat●4つのエンベロープ・ジェネレーター:ドラム・チャンネルのサスティンを生成し、ノイズ/ドローン・シンセサイザーに変える独自の機能●4つのLR(ルーパー/レコーダー):独立したクロックを設定可能。オーディオ信号ではなく、トリガーイベントを記録。クォンタイズ可能●クロック・ジェネレーター:リズムを生成するための非常に強力なツール。ディバイダー付き●LFO(0.1–5000Hz):波形を連続可変させることが可能●Shaos:シフトレジスター・ベースのユニークな擬似ランダム・ジェネレーター。4つの独立した出力、サンプル&ホールド他クールな機能●CVコントロール可能なFXプロセッサー:DSP のサンプル・レートを CV コントロール可能●ディストーション●2つの CV コントロール可能なゲート●2つのCVコントロール可能なVCA●2つのインバーター●MIDIコントロールとシンクに対応●4つのアサイン可能なアッテネーター●2つのダイナミックCVセンサー:CVを生成可能●入出力:CV、オーディオ信号電圧=0から+10V(Pulsarのインプットはオーバーロード・プロテクションを備えており、-20〜+20V までの信号を長時間受けても不具合は生じません)、メイン・アウトプット電圧振幅=2V、1/4インチ・ジャック×7、ミニジャック (ユーロラック接続用)×8、MIDIインプット(スタンダード DIN 5Pin)、ヘッドフォン・アウトプット(3.5mmミニジャック)、電源電圧=12V (センタープラス)、消費電力=0.3A●外形寸法:380(W)×280(D)×80(H)mm●重量:4Kg

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