MONTAGE MのAN-X音源を増田隆宣がチェック!

ここでは、キーボーディストの増田隆宣にMONTAGE Mを試奏してもらった。アナログ・シンセの音作りに精通する増田は“AN-X”にどのような手応えを感じたのだろうか?(『FILTER Volume.06』より転載)

“デジタル・シンセでありながら、
これだけのアナログ・コントロールを
スムーズかつ感覚的にできるのはすごいこと”

Profile:日本では数少ないロック系のセッション・キーボード・プレイヤーとして、B’z、浜田麻里を30年近くに渡りサポート。ヘビーなギター・サウンドにも負けない、ハモンド・オルガンやアナログ系シンセでの長年の経験による熟練のプレイと音色、80年代に培ったピアノ・アプローチで幾多のアーティストのライブを支える。2016年、音楽スクール“T-Music Yokohama” を開校、プロミュージシャンの活動を続けながら、音楽指導にも尽力している。
Impression by Takanobu Masuda

まずAN-X音源で作られたプリセットを試奏しましたが、どれもアナログの特徴が活かされたとても良い音だと感じました。ヤマハのシンセらしいクセのないサウンドで、さまざまな用途に使えると思います。ただ僕は、どんなシンセでもプリセットは使わず、自分の音をイチから作っていきます。それは思い描いたとおりの音を出したいからなのですが、今回AN-Xのイニシャルの波形からの音作りをいろいろ試してみました。

通常のアナログ・シンセはパネル上にオシレーター、フィルター、エンベロープなどのツマミがありますよね。だから視覚的にわかりやすいし、リアルタイムのコントロールもしやすい。ただ難点としては、そんなに多くのパラメーターを並べられないことです。一方、現代のデジタル・シンセは膨大なパラメーターを持っていて、それらを呼び出してコントロールします。音作りの幅は広いですが、視覚的な操作がしづらい。でもMONTAGE Mでは、メインのディスプレイとサブ・ティスプレイを使い分けることで、普通のアナログ・シンセと同じような感覚で操作ができました。アナログの音作りの基本はフィルターとエンベロープですが、サブにフィルターのパラメーターを、メインにエンベロープを表示することができるので、いちいち切り替えなくていいというのはとても快適でした。

サブ・ディスプレイに呼び出されているパラメーターは本当に使いやすくて、3つあるオシレーターの出し入れも自由。僕のようにイニシャルの波形からエディットする人でも、フィルター、エンベロープをかけて、またオシレーターに戻ってバランスを調整したりという移動が簡単にできます。フィルターは種類がいろいろ選べて、細かい設定の1つ1つをツマミでできるというのは良かったです。PCM音源のシンセでは、ここまでノコギリ波とスクエア波の良い音は出せないですし、エディットして作り込むことも難しいですからね。

デジタル・シンセでありながら、これだけのアナログ・コントロールをスムーズかつ感覚的にできるというのはすごいことです。もし迷ったとしても、NAVIGATIONボタンを押せばどこのパラメーターをいじっているのかをすぐに表示してくれます。従来のデジタル・シンセに比べて、かなり素早く目的にたどり着けると思います。ソフトシンセを使えば、同じようなことはできるでしょう。ただ、ハードウェアのツマミをいじって操作するというスピード感にはやっぱり敵わないと改めて思いました。

そして、特に良いと思ったポイントの1つがエフェクターです。アナログ・シンセの音はバリエーションがないので、そこに色を付けるエフェクターはとても重要です。MONTAGE Mにはコーラス、ディレイの種類がいろいろあって、リバーブも専用のものが用意してある。特にストリングス系など広がりのある音はうまく作れると思いますし、アナログ・シンセの音に磨きをかけるには必要十分なものが載っています。このエフェクトの技術はこれまでヤマハが培ってきたものだと思いますが、MONTAGE Mの新しいアナログ・サウンドにそれらを使えるというのはすごくいいなと思いました。

今回はMONTAGE M8xで試奏を行なったのですが、ポリフォニック・アフタータッチの威力には驚きました。ブラス系の音色を運指のコントロールでブワーッ!と出せるのはすごい。昔のCS-80、DX1以来の感じで、久しぶりに感動しました。こういったことができるシンセは他にあまりないですよね。僕は76鍵が好きなので、いつかMONTAGE M7にもこの鍵盤が搭載されたら嬉しいです(笑)。

AN-X音源を中心に試奏させてもらいましたが、音の良さはもちろんのこと、とにかくコントロールのしやすさに驚きました。アナログ・シンセは何よりもそれが大事になると思うので、そういう意味でもMONTAGE Mはすごく使いやすく優れた楽器だと思います。

製品情報

YAMAHA MONTAGE M

メーカー希望小売価格●MONTAGE M6:440,000円、MONTAGE M7:473,000円、MONTAGE M8x:517,000円

Specifications

【鍵盤】61鍵FSX 鍵盤(イニシャルタッチ/ アフタータッチ付)、76鍵FSX 鍵盤(イニシャルタッチ/ アフタータッチ付)、88鍵GEX鍵盤(イニシャルタッチ/ポリフォニックアフタータッチ付)【音源部】●音源方式:Motion Control Synthesis Engine/AMW2:最大128 エレメント、FM-X:8 オペレーター、88アルゴリズム、AN-X:3オシレーター、1ノイズ●最大同時発音数:AWM2=256音(ステレオ/モノ波形いずれも)、FM-X=128音、AN-X=16音●マルチティンバー数:内蔵音源16パート、オーディオ入力パート(A/D、USB)●波形メモリー:プリセット=10GB 相当(16bit リニア換算)、ユーザー=3.7GB●パフォーマンス数:3,369●フィルター:18 タイプ●エフェクト:リバーブ×12タイプ、バリエーション×88タイプ、インサーションA×88タイプ、インサーションB×89タイプ、マスターエフェクト×26タイプ、A/Dパートインサーションは83タイプ、マスターEQ(5バンド)、1stパートEQ(3 バンド)、2ndパートEQ(2 バンド)【シーケンサー】●容量:1パターン/ソング=約 130,000音●音符分解能:四分音符/480●パターン:パターン数=128、トラック=16シーケンサートラック、テンポトラック、シーントラック●アルペジエーター:最大8パート同時オン可、プリセット=10,922タイプ以上、ユーザー=256タイプ【その他】●ライブセット数:プリセット=128以上、ユーザー=2,048●接続端子:USB TO DEVICE [1] / [2]、[USB TO HOST]、MIDI [IN] / [OUT] / [THRU]、FOOT CONTROLLER [1] / [2]、FOOT SWITCH [SUSTAIN] / [ASSIGNABLE]、OUTPUT(BALANCED) [L/MONO] / [R](TRSバランス出力端子)、ASSIGNABLE OUTPUT(BALANCED)[L] / [R](TRSバランス出力端子)、[PHONES](ステレオ標準フォーンジャック)、A/D INPUT [L/MONO] / [R](標準フォーンジャック)●寸法:61鍵=1,037(W)×396(D)×131(H)mm、76鍵=1,244(W)× 396(D)×131(H)mm、88鍵=1,446(W)× 460(D)× 170(H)mm ●重量:61鍵=15.3kg、76鍵=17.6kg、88鍵=28.1kg

お問い合わせ

ヤマハお客様コミュニケーションセンター シンセサイザー・デジタル楽器ご相談窓口 TEL.0570-015-808 つながらない場合は TEL.053-460-1666