【製品レビュー】CME WIDI Bud Pro／WIDI Master／WIDI Uhost／WIDI Jack

Bluetooth MIDI機能搭載の機材と自動ペアリングでき
超低レイテンシーの接続環境と
インターフェースなしの演奏を実現したアダプター・シリーズ

音楽制作をするミュージシャンのほとんどが使用しているであろう、MIDIキーボードやコントローラー。また、ライブ演奏時もそれらを使用して別のハード音源やソフト音源を鳴らしている、という方も多いはず。そんな場面で煩わしくなるのが、MIDI信号をやり取りするための配線（USBケーブルやMIDIケーブル）の手間。例えばライブ・ステージでショルダー・キーボードやウィンドシンセをコントローラーとして使用したい時は、数メートル〜十数メートルの長さのケーブルが必要となるし（ケーブルの取り回し問題も出てきますね……）、制作の場面ではコントローラーの数だけケーブルも増えるので、USBハブやMIDIインターフェースが必要になったりする。近年では、Bluetooth MIDIを使用し、ワイヤレスでMIDI信号をやり取りする機材も増えてきたが、筆者自身は正直なところ、毎度ひと手間かかるBluetoothペアリングや遅延が嫌で、Bluetooth MIDI機材は補助的にしか使用していなかった。しかし今回紹介するCME WIDIシリーズは、そんな煩わしさを大きく軽減してくれるものだと言えそうだ。現在4つの製品があるので、接続やそれぞれの特徴についてお伝えしたい。

まず接続について。WIDIシリーズの最大のポイントの1つに“自動ペアリング・モード”がある。筆者の元に製品が到着し、キーボードのMIDI端子にWIDI Masterを挿して鍵盤を弾きながら、さて次の設定は……と考えようとした瞬間に、もう音が出てきてびっくり！　Bluetooth MIDI機能を搭載した別のデジタル・ピアノと自動でペアリングされていたのだ。その簡単さと早さは驚きだ。そして気になる遅延だが、WIDIシリーズはBluetooth 5の採用やスマート・アルゴリズムによる伝送の最適化により、超低レイテンシーを実現している。接続環境に多少左右はされるだろうが、2つのWIDIデバイス間でのテストでは3msという驚きの数字。実際前述のWIDI Masterとデジタル・ピアノの接続では、ワイヤレスということを忘れてしまいそうなほど遅延や発音のヨレが少なく、これなら普通に演奏して使用できると感じた。

WIDI Bud Proは、このシリーズの最新製品。USBドングル・タイプのものになっており、デバイスのUSB端子に接続すればバスパワーで動作するので、非常にコンパクト。これだけでBluetooth MIDI環境が実現し、ノート／CC／MIDIクロック／SynExを含むメッセージの送受信がワイヤレスで可能になる。端子がUSB-Aなので、コンピューターに接続するのが一番よくある使い方かと思われるが、コンピューター内蔵のBluetoothを使用することなくダイレクトにBud Proとコントローラーを接続することで、WIDIの超低レイテンシー技術の恩恵を受けることができる。特にWindowsユーザーには嬉しいところだろう。またなんと言っても魅力的なのは、iOSアプリとのペアリング。Bud Proを使用せずにmacOSとiOSをペアリングすることも可能だが、iOSにシンセ音源アプリを立ち上げ、Mac側のDAWからMIDIノートを送信してみたところ、Bud Proを使用するのとしないのとではレイテンシーの差が歴然。筆者の環境下ではあるが、Bud Proでのワイヤレス環境を使用すれば十分実戦で使用できるレベルだと感じた。

WIDI UhostはBud Proと同じくUSB接続する製品になるが、USB-Cの入出力用端子と電源供給用端子を備えているため、USB-BをはじめとしたさまざまなUSB端子の組み合わせがしやすくなっている。コンピューターはもちろん、USB-B端子を備えたキーボード、ウィンドシンセなどのMIDIコントローラーなどに最適。ワイヤレスでのライブ・パフォーマンスも存分に楽しめそうだ（ただしUSB-B端子使用時は電源供給が必要。モバイル・バッテリーの使用が良いだろう）。

WIDI MasterはMIDI端子接続の製品。MIDI端子しかないような機種でもMIDIインターフェースいらずで、しかもBluetoothでワイヤレス接続できるようになるのは非常に嬉しいところ。MIDI IN端子は別個になっており、必要時だけ接続すれば良い形になっているので非常にコンパクト。

WIDI JackはMasterと同じくMIDI端子接続の製品だが、MIDI端子以外に6ピン・ミニDIN、2.5mm TRS オス、3.5mm TRS オス、6.35mm（1/4インチ）TRS オスといった形状のMIDI端子にも対応可能なのが特徴。さらにUSB-Cの電源供給用端子も備わっているので、MIDI OUT端子から電源供給を行わないデバイスとの接続も可能となる。実際、ブレス・コントローラーなどで接続できるメス端子を持ったデバイスが非常に限られているという話も聞くので、そういった場合にJack（ 必要に応じて音源側にもう1台Bluetooth MIDI製品）を使用すれば、制限が基本的になくなるのはかなり嬉しいところ。

以上、4台それぞれの特色があるので、ご自身の環境に合わせてチョイスしていただきたい。また、WIDIシリーズには専用iOSアプリ“WIDI APP”が用意されている。デバイスのファームウェア更新と“グループ”を作成することが可能で、これは最大5台までのWIDIグループを構築できる機能（1台のセントラル・デバイスと、4台までのペリフェラル・デバイス）。アプリは英語なので取っ付きにくいかもしれないが、国内販売元であるフックアップのWebサイトに詳しく説明が載っているので、筆者もスムーズに操作することができた。

最後に、フックアップでは動作検証用としてデモ機を用意しているそうなので、ご自身が使用するMIDIデバイスとの互換性が不明確な場合は、ぜひデモ機を利用し確認していただきたい。その際には普段ご利用されている販売店までご相談を。（文：大迫杏子）