【製品レビュー】YAMAHA MODX M
MONTAGE Mの3つの音源を継承し操作性も向上した
入門者からプロまで使える万能型シンセサイザー

前モデルMODX+から3年を経て、2025年10月に後継機として登場したのがMODX Mである。同社のフラッグシップ・モデルMONTAGE Mよりもお値段的には求めやすく、可搬性がよく、それでいてシンセ入門者からプロまで、あるいは自宅やスタジオでの制作にももってこいな万能モデルである。シンセ・サウンドから生楽器、FM音源の金属的な音まであらゆるサウンドが高いクオリティで出せる上、さまざまにサウンドをレイヤーしたり、モーフィング効果でサウンドを変化させたりもOK。ライブ使用でも、スーパーノブ、モーション・コントロール、エンベロープ・フォロワーによる表現力と高い演奏性を兼ね備えた1台。MODX+でも十分完成されたシンセであったが、今回MODX MはなんとMONTAGE M譲りのエンジンを搭載で劇的な進化を遂げた。
何と言ってもトピックは、MONTAGE Mで好評なAN-X音源を搭載したことだろう。この音源は、強力にアナログライクなぶっといシンセ・サウンドを生み出すので人気のある音源だ。3オシレーター、1ノイズ・ジェネレーター、10タイプの豊富なフィルター、FM、リング・モジュレーションなどの変調、ビンテージっぽく聴かせるVoltage driftとAgeingのパラメーターもいじれて、スピード感あるギラギラなシンセ・サウンドから、ビンテージ・ライクな揺らぎのあるまろやかなシンセ・サウンドまで、自由自在に出せるシンセ・エンジンである。そう来たか、まるでドジャースのような強力なメンバー補強ではないか。MODX Mは、1番あらゆる生楽器担当“AWM2音源”、2番金属音やDX エレピのスペシャリスト“FM-X 音源”、3番アナログライクなシンセのスペシャリスト“AN-X 音源”という盤石な布陣となった。“それってMONTAGE Mと一緒じゃん”と急に悔しくなったMONTAGE Mオーナーの皆さん、もちろんMODX Mにはアフタータッチがないとか同時発音数とかいろいろ差はありますので、ひとまず落ち着いていただきたい。
さて、MODX+から大きく進化したのはAN-X音源だけでない。見た目もMONTAGE Mに似てきたと思ったら、フェーダーが4つから8つに増えていた。弾きながらパートごとの調整もバッチリだ。オルガン音色の時にはフェーダーがドローバーに化すというのがいい。これでオルガン音色もフェーダーを動かしながら弾けるわけだ。フェーダー下部にはパート・ボタンが並ぶ。こちらも8つに増えた。他に大きなレイアウト変更は、液晶左、スーパーノブの下にあったシーケンサー・セクションが液晶右に移動して、代わりにこのスペースにSCENEボタンが8つ(MODX+では4つ)並んだ。また、スーパーノブのポジション・ボタンが2つから3つになるなど演奏者の目線に立った改良の姿勢が見える。そういえば、MODX+ではボタン類は赤であったが、MODX Mでは青、赤、緑ととてもカラフルで視認性も進化している。いろいろ変更があるが筆者が最も感心したのが、右側にPerformance(Home)、Live set、Category(カテゴリ・サーチ画面に飛ぶ)という3つのボタンを色分けして並べたこと。さすがよくわかってらっしゃる。やりたいことに応じておそらくここが一番使うボタンになるはずだ。その他、MONTAGE Mで好評だったPage JumpボタンやNavigationボタン、エフェクト・オーバービュー・ボタン、スプリット・ボタンなど、複雑なこの機種を簡単に操作できるボタンが追加された。

フェーダーやノブの数が増えるなど操作面でも進化を遂げている。
次は肝心のサウンド面。AWM2音源の波形容量が2倍近く増えてサウンドが一層リアルに聴こえる。また、エレメントも8から128へともはや意味のわからない進化。どうりで弾き始めたらえらく音が生々しいと思ったわけだ。エレピやピアノも生々しいが、弦のサウンドなどは特に顕著で、膜が取れたようにクリアで、楽器を弾く時のノイズ、部屋の残響感まで見えるのには驚いた。MODX+の時もそうだったが、FM専用の音源LSIが発音しているというFM-X音源はクリアさと異常なまでのレスポンスの速さを兼ね備えている。他社の真似のできないところだ。同時発音数もトータル268音(MODX+は192音)となった。ノブやスーパーノブ、ホイール類などコントロール系も高解像度化されており、とにかくすべてのコントロールが滑らかで演奏するのが楽しいシンセだ。また、SSS(シームレス・サウンド・スイッチング、つまり音色を切り替えても音が途切れない)に対応している音色が格段に増えた。これは複雑に重ねた音色をライブセットに並べて、楽曲の進行に合わせて切り替えていく時にとても助かる。
個人的には、CFX2という新たなピアノ・サウンドが気に入った。ヤマハの最高峰グランド・ピアノCFXというサウンドはもちろん大好きではあるが、CFX2は従来のCFXに比べて明るくクリアな印象。オンマイクで上質なスタジオでレコーディングしている時のピアノの響きと言ったらイメージが伝わるだろうか? とにかく空気感のあるCFXと、もっと音場の近いCFX2が選べるのが気に入った。もちろんさまざまな種類のピアノ、エレピもこれでもかというくらい入っている。それらピアノ系サウンドにさまざまな音色をレイヤーして、モーション・コントロールやスーパーノブで滑らかにモーフィングさせるのは快感。ピアノがメインの方はピアノ鍵盤のM8がオススメだ。M6、M7は鍵盤が新たなセミウェイテッドFSB 鍵盤ということで、反応も指にぴったりくっついてくる素晴らしい出来。横方向の遊びも少なくて、グリッサンドしやすい。本機はオルガン音色も進化(なんとYCシリーズ譲りのロータリー・スピーカー・シュミレーターも搭載)したので、オルガンもバリバリ弾きたい人、あるいはエレピやシンセをソリッドに弾きたい人にはピアノ鍵盤でないM6、M7がオススメだ。
本機はMIDI 2.0に対応。さまざまなDAWソフトのコントローラーとしても使える上、オーディオ・インターフェース(10OUT4IN)にもなる。また、プラグイン・バージョンもついてくるので、自宅ではプラグイン・バージョンで制作してライブでは実機で弾くというタイパ的にも最高だ。Audio Beat Sync機能もあるので、EDMなどビート系のパフォーマンスもいけるととにかく万能なシンセだ。
文:YANCY

製品情報
YAMAHA MODX M
メーカー希望小売価格 ●MODX M6:170,500円、MODX M7:198,000円、MODX M8:247,500円(すべて税込)
Specifications
●鍵盤:88鍵GHS 鍵盤(M8)、76鍵セミウェイテッドFSB 鍵盤(M7)、61鍵セミウェイテッドFSB 鍵盤(M6)●音源方式:Motion Control Synthesis Engine(AWM2/ FM-X / AN-X)●最大同時発音数:AWM2 128音、FM-X 128音、AN-X 12音●マルチティンバー数:内蔵音源16パート●波形メモリー:プリセット10.7GB 相当、ユーザー1.9GB●パフォーマンス数:3,427●フィルター:18タイプ●エフェクト:リバーブ×13、バリエーション×88、インサーションA×88、インサーションB×89、マスターエフェクト×26ほか●シーケンサー:128パターン、16トラック●ライブセット数:プリセット256、ユーザー2,048
●接続端子:USB、MIDI IN/OUT、OUTPUT L/MONO/R、A/D INPUT L/MONO/R、ヘッドフォン●外形寸法:1310(W)×152(H)×391(D)mm(M8)、1089(W)×117(H)×347(D)mm(M7)、882(W)×117(H)×347(D)mm(M6)●重量:13.6kg(M8)、7.6kg(M7)、6.6kg(M6)
お問い合わせ
ヤマハお客様コミュニケーションセンター シンセサイザー・デジタル楽器ご相談窓口 TEL.0570-015-808 つながらない場合は TEL.053-460-1666

