【製品レビュー】WALDORF Protein

Microwaveのオシレーターをベースにして
最新機能を搭載したコンパクトなウェーブテーブル・シンセ

ドイツの老舗シンセ・メーカーであるウォルドルフから突如発表されたProteinは、水色のアクセントが可愛いコンパクトなシンセサイザー。1kgを切る重量とUSB-C電源駆動で、いかにも持ち出しやすそうな魅力があります。大抵のことをソフトシンセで済ませてしまう時代に、このように手元に置いておきたくなる存在感は、いきなり好感度が高い。

パネルからも、4つのティンバーをレイヤー可能なウェーブテーブル・シンセで、エフェクトを内蔵していることがわかります。MIDIと電源を兼ねたUSB-C端子にPCを接続し、外部鍵盤からプリセットを鳴らしてみると、2つ目で早速“おおっ!”と、まさに同社のMicrowaveを思わせる質感が飛び出しますが、同時にエフェクターは現代的な上質さであることもわかります。

本機は8ボイス・ポリフォニックですので、レイヤーを2つ使用している場合は4音、4レイヤーすべてを使用すると2音ポリになりますが、トータル8ボイスにもかかわらず4レイヤーできるという仕様に、むしろワクワクしてしまうのは筆者だけではないはずです。これらは単にレイヤーするだけでなく、スプリットしてMIDI で鳴らし分けることもできるほか、ローテーションで発音のたびにまったく異なる音が飛び出すような設定も可能です。

パネル上には青文字でInitとあり、すぐに白紙の状態から音作りが行えることがわかります。そこで白紙からウェーブテーブルをさまざまに変化させてみると、ジョリっとしたスムージングされていない動きと独特のエイリアシング・ノイズで、最新機材を触っていることを忘れるくらい90年代初頭にトリップできます。

ウェーブテーブルはさまざまな波形が1つのテーブルに並んでいて、その任意の範囲をエンベロープやLFOで移動させることで、複雑な倍音の時間的な変化を簡単に生み出せるのが特徴です。近年ではソフトシンセにも多く搭載されているので、その方式だけで特異さを伝えるのは難しくなっているように思いますが、本機を少し触れば、EDM系で使用される派手な変化や、滑らかなヒーリング・サウンドにも適したそれとはまるで違うシンセであることに気付くはずです。ちなみに、どのテーブルを選んでいてもWaveツマミを右に回し切るとノコギリ波になるのがユニークなだけでなく、音作りの際に非常に便利です。シンプルにそのノコギリ波を鳴らしていると、ステレオ間の音の定位なども含め、何か有機的とも感じられるような変化が各部に起きていることにも気づくことでしょう。

オリジナルMicrowaveの音作りから大きく進化しているのは、1レイヤーあたり2つの異なるウェーブテーブルを並べて使用できる点で、8系統のモジュレーション・マトリクスでそれぞれ個別に動きを作ったり、リンクさせた状態で動かすこともでき、そのトリップ感はかなり癖になります。LFOは2系統、EGはアンプ、フィルター、Modの3系統を同時に使用できます。

▲オリジナルMicrowave の音作りから進化し、1レイヤーあたり2つの異なるウェーブテーブルを並べて使用可能。
8系統のモジュレーション・マトリクスで個別に動きを作ったり、リンクをさせた状態で動かすこともできる。

フィルターはCEMを忠実にモデリングしたLPFとHPFを切り替えて使用可能なほか、Driveというモードではトランジスターや真空管、ピックアップなどのタイプで直接音を歪めるような効果を得られ、Dirtではホワイトノイズやレコード・ノイズ、ガイガーカウンターのようなノイズを混ぜられます。これらのタイプ切り替えは、フィルター部分のツマミとシフト・ボタン、さらにディスプレイ横の白いツマミ(Select)を使い分けて行います。

次にエフェクターですが、エフェクト部のTypeツマミを回すとエディット画面が現れます。ここではSelectツマミを左右に回すと2基のエフェクトの操作切り替えが行え、再びTypeツマミを回すと選択している側のエフェクトが切り替わります。例えばリバーブを選択した場合、Amountツマミでかかり具合、ShiftがONの状態で同じツマミでタイムを調整できます。最長にするとホールド状態になりますが、とても自然で気になるループ感もなく、短く1音鳴らした原音の残響をそのまま5分ほど聴いてもまったく嫌な感じがしません。他にもディレイやコーラスなどからコンプやドライブまで、シンプルなパラメーターで効果的に働くものが用意されています。

本機にはアルペジエーターとシーケンサーも搭載されていて、それらの切り替えはShift+Playを押した後、Selectツマミを回すのではなく、押すたびに順送りに切り替わります。シーケンサーのステップ数や各種パラメーターの変更は、白いツマミを回して項目を移動して押せば選択され、回すとバリュー変更という至って直感的なものとなっていて、これらの若干統一感がなく感じられる操作性が意図的なものかは不明ですが、きっとすべては慣れが解決することでしょう。ちなみにMIDI CC#のマッピングも行えるので、ツマミの多いコントローラーなどを接続すればより直感的に扱えるでしょう。

最大32ステップの単音シーケンサーは、REC状態にして外部鍵盤などから音程を入力すると、鍵盤からトランスポーズ演奏できるシンプルなものですが、前述の4レイヤーをローテーションで鳴らす設定などを組み合わせると非常に面白い効果が得られます。

パネル右下にあるFlavourツマミは、さまざまな要素を同時に微調整して音の硬さやステレオ感などを含む質感を繊細に変化させられるパラメーターで、レコーディングなどで何かがしっくり来ない場合などにこのツマミに助けられる場面がありそうです。

今必要なのは、ゴリゴリのデジタル質感なのに常に有機的なこんな音かもしれません。

文:Yasushi.K

製品情報

WALDORF Protein

価格●61,900円(税込)

Specifications

●ボイス数:8ボイス・ポリフォニック●レイヤー:最大4レイヤー●オシレーター:Microwave ASICベース×2●フィルター:CEMアナログ・モデリング・フィルター(カットオフ/レゾナンス/ Di rty 等)●エンベロープ:3基●LFO:2基(テンポ同期/サンプル&ホールド機能付き)●モジュレーション:8スロット・モジュレーション・マトリクス●内蔵エフェクト:リバーブ、ディレイ、コーラス、フェイザー、フランジャー、ドライブ、EQ、コンプレッサー、トレモロ●プリセット数:150種類以上(ユーザー・メモリ250スロット)●アルペジエーター/シーケンサー:アルペジエーター+最大32ステップ・シーケンサー●接続端子:Audio Out、ヘッドホン、MIDI In/Out、USB-C●外形寸法:252(W)×170(D)×48(H)mm ●重量:0.9kg

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