【製品レビュー】SEQUENTIAL Fourm

Prophet譲りのサウンドを自在にコントロールできる
ポリフォニック・アフタータッチ対応の4音ポリ・シンセ

いや、ホント大変失礼しましたと最初に謝らなきゃならない。正直言ってかなりナメていました。シーケンシャルFourm。最初にレビューのお話が来た時、“ああ、アレか……あのミニ37鍵のちっこいヤツね……特に新機構もなさそうだし……そうかぁ、TAKE 5/TEO-5路線でボトムにするのかと思ってたらもっとお手頃路線まで拡販してくるのね? まあ、もちろん音は良いんだろうけど……”くらいに思っていたのだ。パッと楽しんでさっさと原稿書いちゃおう、と思ったのだが……箱から出して電源繋いでいじくり始めたら、あっという間に6 時間経って、部屋の外は真っ暗になっていた(笑)。

まず梱包解いて最初の印象。金属製の筐体で意外とズッシリ。この時点で“お?”と思う。ツマミ類はめちゃくちゃしっかりしていて、馴染むまでは“ちょっと動作重すぎるんじゃね”というくらい。そして3オクターブのミニ鍵盤。これが今回のキモなのだが、単にメカニカルな手応えという点でも予想されたチャチな感じはまったくなく、しっかりしていて期待させる。

さて、概要だが、Fourmはシーケンシャル/デイヴ・スミスの流れを汲む、というよりほぼProphetそのものの音源を持つ4音ポリのリアル・アナログ・シンセサイザーで、売りはなんと言ってもポリフォニック・アフタータッチの効くミニ鍵盤。コレの出来がすこぶる良い。パネル左側にモジュレーション・マトリクスのセクションがあるのだが、その下にアフタータッチのルーティング・コントロールが独立してまとめてあるのがこの楽器の意気込みを表していると思う。

まずそのモジュレーションのセクションだが、ありとあらゆるソース(変調元)×デスティネーション(変調先)というわけではなくて、厳選された組み合わせがわかりやすくコントロールできるのがいい。この辺りが“ わかってるなー!”と思うところ。ソースはフィルター用エンベロープ、オシレーターB(FM)、LFOの3つ。デスティネーションはオシレーターAのフリーケンシー(ピッチ)、同じくオシレーターB、パルスワイズA、パルスワイズB、カットオフ・フリーケンシー(フィルター)、アンプリチュード(音量)、LFOのフリーケンシー(レート)とLFOのアマウントの計8つ。だいたいリアルタイムでコントロールしたい要素は網羅してると言えるだろう。しかも、それぞれのアマウントはルート・ボタンを1回押して赤LEDが点灯→ダイレクト、2回押して青LEDが点灯→モジュレーション・ホイールを通すルーティング(以上ソース側)、デスティネーション側でもボタン1回赤LED→ダイレクト、ボタン2回青LED→モジュレーション・ホイール経由、さらにボタン3回紫LED→ダイレクト+モジュレーション・ホイール両方のルーティングが生きるという形になっており、言葉で説明すると面倒だが見たら1発でルーティングがわかる秀逸なシステム。

ポリフォニック・アフタータッチのミニ鍵盤を搭載。パネル左側のモジュレーション・マトリクスのセクションの下に
アフタータッチのルーティング・コントロールが独立してまとめてある。

そして今回問題のポリフォニック・アフタータッチだが、先ほど説明した通りメインのモジュレーション・セクションの下に独立した形でルーティング+アマウントのコントロールがある。デスティネーションはボタン3つ×3通りになっており、1つ目はオシレーターのフリーケンシー(1回押しでA、2回押しでB、3回押しでA+B)、2つ目はカットオフとアンプリチュード、3つ目はLFOのフリーケンシーとアマウント、になっている。メインのアマウント・コントロールはなんと双方向で、つまりマイナス側に振れば鍵盤を押し込むとフィルターが“閉じ”たり、LFOのレートが“遅く” なったりすることも可能、というわけだ。コレをリアルタイムの演奏でしかもポリフォニックでできるわけだから、ちょっと慣れるともう面白くて仕方がない。

さて、肝心の“音”だが、正直なところ、音だけ聴かされたらProphet-5と聴き分けられる人はほぼいないんではないか?というくらい、充実したリアル・アナログの音がする。フィルターの閉じる明暗の滑らかさ、オシレーター・シンクのギュインギュインしたきらめき、エンベロープの歯切れ良さなど、ホント文句なしである。

それにプラスして、前述のモジュレーションの多彩さがアフタータッチで自由自在にコントロールできるのだから、これは楽器としてホントに魅力的と言う他はない。パネルも長年馴染みのある配置で、もう無意識にカットオフやエンベロープに自動的に手が伸びる。筆者は自分でProphetを所有したことがないのだけれど、それでもこの辺はさすがに元から音作りのフローがしやすいレイアウトなんだなあと実感する。

さらに、使いやすいアルペジエーターとそこからプログラムできるシーケンサーも搭載しており、この辺りもリアルタイムで“遊べる”要素満載といったところだ。エフェクトは今となっては珍しく搭載していないのだけれど、素の音がこれだけ良いとそれを忘れてしまう良さがある。それにモノラル・アウトなので、いろいろコンパクト・エフェクターを選ぶのも楽しみになりそうだ。欲を言えば、LFOやクロック・レートに専用のツマミが欲しかったとか、ディスプレイがもう少し大きいと良いなあ(年寄りは目がキツい)とか、いろいろあるが、まあ何しろこの音の良さと値段で文句を言う筋合いでもないだろう。

この楽器、最初に筆者が甘く見てしまったように、決して“持ち物自慢”のできるアピアランスではないかもしれない。が、中身は相当イケてる“本物”であり、時間を忘れて付き合える、使い倒せるシンセサイザーだと思う。ぜひ実機に触ってみてほしい。

文:飯野竜彦

製品情報

SEQUENTIAL Fourm

価格●オープン・プライス(市場予想価格:149,800円前後/税込)

Specifications

●ボイス:4●鍵盤:37鍵(Tactiveスリムキー・キーボード/ポリフォニック・アフタータッチ対応)●オシレーター:2基●フィルター:4ポール・ローパス● LFO 波形:サイン、ソウ、リバース・ソウ、スクエア、S/H、ノイズ、DC ●シーケンサー:64ステップ・ポリフォニック・ステップ・シーケンサー●接続端子:OUTPUT MONO、ヘッドホン、MIDI IN/OUT/THRU、USB-C●外形寸法:562(W)×70(H)×251(D)mm ●重量:3.97kg

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