ノイズの音作りに使いたい個性が光るシンセサイザー 〜 YAMAHA MONTAGE M
『FILTER Volume.07』掲載特集“ノイズ研究”では、ノイズを使った効果的な音作りができるシンセサイザーをピックアップ。それぞれの機種の個性や特徴に着目しレビューした記事をWebでも公開!
最新鋭の音源と機能の組み合わせで
多彩なノイズが生成できるフラッグシップ・モデル
MONTAGE Mシリーズは、ヤマハの最新フラッグシップ・シンセサイザーだ。AWM2(256音ポリ!)、FM-X(128音ポリ!)、AN-X(16音ポリ)という3つの音源(合計なんと400音ポリ!!)と、それらをモーション・シーケンサーやスーパーノブなどでダイナミックにコントロールしていくMotion Control Synthesis Engineを搭載している。前モデルMONTAGEのサウンドには、全体にどこまでも高音域が素直に伸びていく透明感があったが、今モデルMONTAGE Mでは同様の“最高精密音質”ながらも、Pure Analog Circuit 2として出力回路のさまざまなスペックが改善され、さらなる音質アップが図られている。実際に試奏したところ、本機ではサウンドのフォーカスがハイミッドに移り、よりプレゼンスの効いたサウンドになっていると実感できた。
そうした最強シンセである本機を“鬼に金棒”状態とするアイテムが先日2つリリースされた。1つはMONTAGE M OS v2.0で、約8GBものアップデート・ファイルをインストールすると、ヤマハ最新・最高峰のコンサートグランドNew CFXなどの58音色(Performance)や、Shimmer Reverbといったエフェクトが追加。AN-X音源にはウェーブ・フォルダー機能や機械学習Smart Morph機能も搭載され、またUIの強化やMIDI2.0への対応も実現されるというもの。もう1つは単なるコントロール・プラグインではなく、実機との接続なしでもDAW/PC上で展開できる、プラグイン版MONTAGE Mと呼べるESP(Expanded Softsynth Plugin for MONTAGE M)ソフトウェアで、実機のオーナーにだけ所有が許される。実機のほぼすべてのパラメーターを網羅しているので、スタジオではコントロール性を活かして実機で録音し、ノートPC/DAW上で実機を繋がずE S Pのみで曲やサウンドを編集して、さらに実機に戻してP Cなしでライブで使うといった、実機とP Cを行き来するようなシチュエーションにも対応可能だ。
さて本機において“音楽的ノイズ”あるいは“ノイジーな音楽的音色”を生成するポイントはいくつもあるわけだが、まずはプリセット(Performance)の“Sound FX” カテゴリーの音色をチェックしてみると、音色プログラマーたちが想像力を膨らませてプログラムした、ノイズ成分を含む音色を多数聴くことができる。
そしてノイジーな音色の中で昨今最も広く好まれている、いわゆるローファイ・ピアノ音色なのだが、本機のプリセットでは、Perform anceにある“LoFi Basement Piano”などがそれにあたる。詳細にチェックしてみると、本機に搭載されているエフェクト・タイプには、リバーブやディレイと横並びで、しっかり“Lo-Fi”という項目があり、その中にDigital TurntableやNoisy、Bit Crusherといったエフェクトや、さらにその中にOld PhoneやDigi Nzなどのさまざまなニュアンスのプリセットがある。そういったエフェクトを超ハイクオリティのAWM2音源などにかけてあえてローファイにするわけだが、さらにエフェクトを2段重ねにすることもでき、ローファイ系のソフトなノイズから、壊れかけた機械のようなハードなノイズまで自由自在に発生させられる。
新OS v2.0で機能強化されたアナログ・モデリング音源AN-Xでも、ノイジーなニュアンスを豊かに得ることができる。通常の3つのオシレーターとは独立したノイズ・ジェネレーターはホワイトノイズからピンクノイズまで128段階で生成できるし、3つのオシレーターはF M音源のオペレーターとしても使用可能なので、金属的(つまりノイジー)な非整数次倍音を得ることもできる。そうしたオシレーター部の出力をフィルターに入れて加工し、さらに機械的な経年変化を再現するVoltage DriftやAgeingパラメーターで不安定なピッチや音色変化を得ることも可能だ。もちろん前述のローファイ・エフェクトを加えていくこともできる。
FM音源はDX7(6オペレーター)の時代から金属的な非整数次倍音やホワイトノイズを作ることが得意な音源だったが、FM-X音源では8オペレーター構成になり、オペレーターの波形も増えたので、より簡単にノイジーなニュアンスやノイズそのものが得られるようになっている。かつてはなかったフィルターやエフェクトも装備しているので、AN-X音源同様に加工していくことが可能だ。
MONTAGE Mは精密で超ハイファイな音色でも、上記のようにして得られたローファイでノイジーな音色でも、複数を組み合わせて、スーパーノブやSmart Morph、モーション・シーケンサーで、音色パラメーターを一気に変化させられるので、そのダイナミックさは曲想にまで影響を与えるのではと思うほどだ。作曲段階からスーパーノブを動かして、新しいサウンドの世界を広げていくのは、非常に楽しい体験となるはずだ。(文:堀越昭宏)
製品情報
YAMAHA MONTAGE M
メーカー希望小売価格●MONTAGE M6:440,000円、MONTAGE M7:473,000円、MONTAGE M8x:517,000円
Specifications
【鍵盤】61鍵FSX 鍵盤(イニシャルタッチ/ アフタータッチ付)、76鍵FSX 鍵盤(イニシャルタッチ/ アフタータッチ付)、88鍵GEX鍵盤(イニシャルタッチ/ポリフォニックアフタータッチ付)【音源部】●音源方式:Motion Control Synthesis Engine/AMW2:最大128 エレメント、FM-X:8 オペレーター、88アルゴリズム、AN-X:3オシレーター、1ノイズ●最大同時発音数:AWM2=256音(ステレオ/モノ波形いずれも)、FM-X=128音、AN-X=16音●マルチティンバー数:内蔵音源16パート、オーディオ入力パート(A/D、USB)●波形メモリー:プリセット=10GB 相当(16bit リニア換算)、ユーザー=3.7GB●パフォーマンス数:3,369●フィルター:18 タイプ●エフェクト:リバーブ×12タイプ、バリエーション×88タイプ、インサーションA×88タイプ、インサーションB×89タイプ、マスターエフェクト×26タイプ、A/Dパートインサーションは83タイプ、マスターEQ(5バンド)、1stパートEQ(3 バンド)、2ndパートEQ(2 バンド)【シーケンサー】●容量:1パターン/ソング=約 130,000音●音符分解能:四分音符/480●パターン:パターン数=128、トラック=16シーケンサートラック、テンポトラック、シーントラック●アルペジエーター:最大8パート同時オン可、プリセット=10,922タイプ以上、ユーザー=256タイプ【その他】●ライブセット数:プリセット=128以上、ユーザー=2,048●接続端子:USB TO DEVICE [1] / [2]、[USB TO HOST]、MIDI [IN] / [OUT] / [THRU]、FOOT CONTROLLER [1] / [2]、FOOT SWITCH [SUSTAIN] / [ASSIGNABLE]、OUTPUT(BALANCED) [L/MONO] / [R](TRSバランス出力端子)、ASSIGNABLE OUTPUT(BALANCED)[L] / [R](TRSバランス出力端子)、[PHONES](ステレオ標準フォーンジャック)、A/D INPUT [L/MONO] / [R](標準フォーンジャック)●寸法:61鍵=1,037(W)×396(D)×131(H)mm、76鍵=1,244(W)× 396(D)×131(H)mm、88鍵=1,446(W)× 460(D)× 170(H)mm ●重量:61鍵=15.3kg、76鍵=17.6kg、88鍵=28.1kg
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