ノイズの音作りに使いたい個性が光るシンセサイザー 〜 IK MULTIMEDIA UNO Synth PRO X

『FILTER Volume.07』掲載特集“ノイズ研究”では、ノイズを使った効果的な音作りができるシンセサイザーをピックアップ。それぞれの機種の個性や特徴に着目しレビューした記事をWebでも公開！

ノイズを使った幅広いサウンドメイクが可能で
システムの拡張にも最適なアナログ・シンセ

UNO Synth PRO Xは高性能のアナログ・シンセサイザーですが、ここではノイズ機能やノイズを活用したサウンドメイクを中心に解説していきます。まずUNO Synth PRO Xには、ノイズ・ジェネレーターが用意されています。実際にノイズを出力してフィルター・セクションのカットオフやレゾナンスを調整してみたところ、ほかのアナログ・シンセで出せる質感と大きく変わることはなく、デジタル臭さを感じさせない自然なサウンドという印象でした。もちろん他のコントロール可能なパラメーターについても、オシレーターから出力されるシンセ波形と同様にエディットが行えますので、アナログ・シンセの基本的な音色作りを理解されている方であれば容易に扱えるでしょう。実際に音作りを進める過程で各オシレーター出力とミックスさせてみると、互いに主張しすぎることなく程良く馴染み、1つの音色としてまとまりのある音色に仕立てられるように思いました。

次にノイズを活用したサウンドメイク例を紹介していきます。UNO Synth PRO Xにおけるサウンドメイクは、特に他のシンセと大きく変わることはありません。ノイズ波形のみの出力をエディットしての音色作りだけでなく、シンセ波形とシンセ波形の組み合わせだけでは出せないノイズ成分を加えた積極的なサウンドメイクが行えます。

例えばノイズを単独で使用したサウンドメイクでは、フィルターのカットオフ、レゾナンスのパラメーターに加え、LFOやEGで変化を設定することによって、風や波の音からシューティング系ゲームでは欠かせない発射音や爆発音まで、さまざまな効果音を作成できます。また、ハイハットやシンバル、グリッチ系サウンドなどのパーカッション系音色を作成する際にも非常に重宝します。特にUNO Synth PRO Xには、3スロット、10種のステレオ・エフェクトのほか、アナログ・オーバードライブも内蔵していますので、エフェクト処理も含めたサウンドメイクが可能です。さらにパラメーター・オートメーション対応の64ステップ・シーケンサーや10モードのアルペジエーター機能を併用することによって、サウンドに動きのあるフレーズを演奏させることもできるので、ライブ・パフォーマンスの際のバックトラック・メイク時にも役立つでしょう。

オシレーターのシンセ波形を使用したサウンドメイクにおいても、ノイズは音色の個性を出すひと味を加えるためのスパイス的な使い方ができます。アナログ・シンセ・ドラム音色を作成する際、シンセ波形部分だけでは強いアタック感を持ったサウンドが作りづらいのですが、ノイズを加えることによってフィルターのカットオフやレゾナンスなどの設定による音色変化が強調され、シモンズ・ドラムのような派手なシンセ・タムやスネア・サウンドを得ることができます。シンセ・ベース音色を作成する場合には、ノイズを少し混ぜるだけで、歪み系エフェクトを使用して得られるサウンドとは質感の異なるざらついた汚れ系サウンドに仕立てることができます。

UNO Synth PRO Xは、ノイズ・ジェネレーターの活用以外にも、サウンドメイクに最適なパラメーターや機能が充実していて、容易なサウンドメイクと音色マネジメントも魅力です。3基のウェーブ・モーフィング・オシレーターのほか、マルチモードのOTAとSSIチップ採用デュアル・フィルターやEG、LFOなどのパラメーターを調整することによってサウンドメイクができますし、リアパネルに用意されているUSB、MIDI、CV／GATE端子を使用すれば、ユーロラック・タイプのモジュラー・シンセのシステムと接続したサウンドメイクも可能です。ソロ・リード音色などの演奏に適したモノ、レガートのほか、3つのオシレーターを3声の和音それぞれの音に割り振るパラフォニック、ビンテージ・ベース・マシンのエミュレートに最適なベース・ラインというように、複数のボイス・モードを使い分けることによって、用途に応じて最適なモードを選ぶことができます。

また、音色マネジメント・ツールのUNO Synth PRO X Editorを使用すれば、本体で作った256種のユーザー・プリセット音色をコンピューターに保存できるだけでなく、ノイズを活用して作成した音色の管理もスマートに行えるので便利です。（文：内藤朗／有限会社FOMIS）