【製品レビュー】ARTURIA AstroLab 37

ソフトウェア音源をハードウェアだけで演奏できる
音色の数とクオリティも圧倒的なキーボードの37鍵モデル

アートリアAstroLab 37は、見た目はMIDIコントローラー、しかし実はDSPを搭載し、DAW上のソフトウェア音源で、Analog Lab Proの音をハードウェアから出してしまう音源付きのキーボードです。

アートリアは、数々のビンテージ音源をソフトウェア化したことで有名ですが、その後Brute、Freakシリーズでハードウェア・シンセも積極的に発売しています。つまりハードウェアの優位性も理解しながら、両ジャンルを大切にしてきました。自宅ではソフトウェア音源を、ライブではハードウェアを使っているユーザーも多いはず。ただ今までは、互換性がないものでした。DAW上で準備した音源をライブで使用するとなると、ライブでパソコンのソフト音源をMIDI 鍵盤で演奏する形になってしまいます。ライブでのソフト音源使用は、レイテンシーの問題などいまだに不安が残ります。

そのソフトとハードの境界をなくしたのがこのAstroLabシリーズです。DAWの入力鍵盤として使用しながら、同社のソフト音源の多くを使用できるAnalog Lab Proとリンクさせて、音色選択、エディットをAstroLab側からできるのですが、この程度のリンクなら同社のMIDI鍵盤KeyLab が今までにもありました。ただこれはあくまでMIDI鍵盤。それに対しAstroLabは本体にDSPを積んでいるので、本体の音も同時に音色選択、エディットされ、ハードウェア単体、PCなしでAnalog Lab Proの音を出す楽器として使用することができるという点で画期的です。自宅制作ではDAWの入力鍵盤として、音色のエディット、プリセット選択にも使用できる上、ライブではPC なし、ハードウェアだけで演奏が可能という、ソフトとハードの境界線をなくした画期的なキーボードです。

操作法としてはUSBでパソコンに接続、スタンドアローンのAnalog Lab Proあるいは、DAWでトラックにAnalogLab Proを起動します。AstroLabを認識すると、AnalogLab Proの画面上部に“Link to AstroLab”という表示が現れ、ここをクリックするだけでリンクが完了(写真❶)。ソフト側で選ばれた音色名がAstroLab 側にも表示され、本体のヘッドフォン、ステレオアウトからも選んだサウンドが鳴り、DAW上のAnalog Lab Proからも同じ音が出る形になっています。

音色はPiano、E.Piano、Organ、Bass、Lead、Keys、Pad、Strings、Brass、Seqの計10種のカテゴリー・ボタンがあり、センターのツマミや↑↓ボタンで厳選された1,800種類以上の音色プリセットを選択可能。Analog Lab Proにはさらに多くの音色があるので、これをハード側に転送すれば10,000以上のライブラリーが使用可能です(写真❷)。また、エイフェックス・ツイン、ビートルズ、チック・コリア、ELP、ブライアン・イーノ、ジェネシス、クラフトワーク、クイーンをはじめとした有名アーティストの名曲の特徴的な音色を再現したTributeプリセットが用意されているのも感動的。その完成度もかなりのものでした。

▲写真❶ Link to AstroLabという表示をクリックするだけで
リンクができる。
▲写真❷ Analog Lab Proにある10,000以上の
ライブラリーを転送して使用可能。

本体パネル上部には9つのツマミがあり、4つのマクロ、4つのエフェクトはソフト側の下部にあるツマミと同期、どちらからでもエディットが可能。マスター・ボリュームに限り、ソフト側とハード側で音量を変えることもあるのでリンクしない形になっています。またソフト側でさらに細かく使用音源のエディットを行ってもAstroLab側の音も同じように変化、つまりハードによってソフト側をコントロールすることもできれば、ソフトがハード側の音色エディターの役割も果たしているという関係と言えるでしょう。

選択中の音色は常にハードとソフトで連携が取れていますが、ハード側に音色を残しておくためには転送が必要になります。単純にソフト側でエクスポートしたい音色を選んでドラッグ&ドロップや右クリックといった簡単な操作のものから、USBメモリーを使ってプレイリストを取り込んだり、iOS/Android対応のスマートフォン、タブレットからAstroLab Connectというアプリで、購入済みのサウンドバンクをWiFi経由で転送、管理ができるといったスタイルまで用意されています。スマートフォン、タブレットとの連携はこれだけではなく、Bluetoothでレシーバーになって、受信した音楽をAstroLab本体から再生させられるので、本体ヘッドフォンで音楽を聴きながらキーボード・パートを重ねるといったことまでできてしまいます。

1,800種類以上のプリセットと書きましたが、実際にライブで使う音色はそんなに多くありません。逆に呼び出しにくいのは致命傷。そこでPlaylistボタンというものが用意されており、このモードにすると、左部のカテゴリー・ボタンで10種類の音色をワンタッチで切り替えられる形になっています。

Analog Lab Proと言えばビンテージ・シンセの音源と思われがちですが、同社のAugmentedシリーズやPigmentsなども使用できるので、実はバーチャル・アナログ、サンプラー、FM、ウェーブテーブル、グラニュラー、フィジカル・モデリングなど計11種類の音源方式を搭載していることになります。ピアノ系などサンプル・ベースの音色は、サンプル素材の容量が大きく、これらも転送されるので、ハード側で最大収録の音色数が少なくなる点は注意が必要です。

AstroLabシリーズは、セミウェイテッド61鍵盤のAstroLab 61、ハンマーアクション88鍵盤のAstroLab 88も発売されており、今回紹介したAstroLab 37はコンパクトで軽量な37鍵ミニ鍵盤タイプ。しかしセミウェイテッド、ベロシティ、アフタータッチに対応し、しっかりとした鍵盤で、ツマミやホイール、ボディも高級感のある作りになっています。バージョンアップで音色、対応音源、機能がどんどん追加されていくことを考えると、今後も楽しみな製品です。

文:松前公高

製品情報

ARTURIA AstroLab 37

メーカー希望小売価格●137,500円(税込)

Specifications

●鍵盤:37鍵ベロシティ対応スリムキー鍵盤、アフタータッチ対応●サウンド・エンジン:11種類(バーチャル・アナログ、サンプル、ウェーブテーブル、FM、グラニュラー、フィジカル・モデリング、ベクター・シンセシス、ハーモニック、フェイズ・ディストーション、ボコーダー、カープラス・ストロング●内蔵サウンド:1,600種類以上●インサート・エフェクト:17種類●入出力端子:MIDI IN/OUT、ステレオ出力、ペダル端子(サステイン、エクスプレッション、AUX 1&2)、USB-Cポート、USB-Aホスト端子、Bluetoothオーディオ入力、ワイヤレスコントロール用WiFi●バンドルソフト:AstroLabConnect(iOS/Android)、AnalogLab Pro●外形寸法:515(W)×214(D)×49(H)mm●重量:1.95kg

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