ビート・メイクで活躍する現行リズム・マシン/シンセサイザー〜FLAME Fire

『FILTER Volume.06』掲載特集“シンセサイザーとビート”では、ビートに使える注目のリズム・マシン/シンセサイザーをピックアップ。それぞれの機種でのビート・メイクの仕方や特徴に着目しレビューした記事をWebでも公開!

優れた操作性でライブでの瞬発的な音作りができる
ドラム音源モジュール

フレイムはPer Salzwedel氏によるベルリン発の電子楽器メーカーだ。今回は新製品のドラム音源Fireを見ていこう。フレイムの製品といえばシルバーに赤という個性的な配色のイメージが強いのだが、本機は黒地に白となっている。

まず本機をひと言で紹介すると“音作りが可能な8パート(8チャンネル)のプログラマブル・デジタル・ドラム音源”である。ユーロラックのドラム音源モジュールには1〜4パートのものが多い中で、パラアウトを備えた8パート仕様の本機は豪華な類だ。また、モジュラーとしてだけでなくMIDIドラム音源としても使える点で、幅広い用途にも対応している。

ドラム音源としての魅力を探ってみよう。本機はデジタルとはいえPCM系ではなく、キック用、スネア用など8種のアルゴリズムを備えたバーチャル・アナログ音源となっている。パートごとに任意のアルゴリズムを選択できるので、8パートすべてキック用のアルゴリズムを選択するといった極端な使い方もできる。

各アルゴリズムは2 〜3 系統のオシレーター、複数のフィルターやエンベロープなどで構成されており、DriveやBitまで備わっているものもある(アルゴリズムのより詳細な仕様はマニュアルにブロック・チャートが掲載されているので参照してほしい)。

では、気になる音色エディットを見ていこう。まず中央下部のSELECTボタンを押し、最下段に並ぶパート・ナンバー1〜8のボタンを押すとそのパートをエディットできる。エディット・ページは1ページあたり8個のパラメーターがあり、2ページにまとめられている。ページごとのパラメーターは8個のツマミに対応しているのでわかりやすい。

音作り面では、アタックと胴鳴りを個別に作れる点が良い。これによりドラム音のヌケ感や低音感などを細かく調整できるので、音の帯域が埋まりやすいモジュラー・ライブで重宝しそうだ。エンベロープはキレと滑らかさがもう少し欲しいところ。

特筆すべき点は、各パートはA/B 2 つのセッティングを常時保持しており、両者をボタンで瞬時に切り替えたり、CV-INでモーフィングさせることも可能なところだ。このあたりは即戦力だろう。

CV/GATE入力はパートごとのVELO-CVインとGATEイン8系統のほか、グローバルのCVインも2つ用意されている。各パートのVELO-CV入力では、パート内のすべてのパラメーターを一括でモジュレートできる。ただし、あくまでマクロでの動作であって、異なる入力ソースを個々のパラメーター割り当てることはできない。しかしながら、パラメーターごとに入力ソースのアマウント値を設定できるので自由度は高い。つまり、VELO-CV入力をピッチのみアマウントすればCVによる音階演奏も可能となる。

最後にMIDIもチェックしておこう。規格はTRS MIDI Type-Bで、インが2系統、アウトが1系統備わっている。MIDI音源として使用するときは、拡張ユニットを使わずともMIDIノート・ナンバーとベロシティで全パートをコントロールできる。初期設定ではMIDIノート・ナンバー36(C1)〜43(G1)に各パートが割り当てられている。この時のMIDIチャンネルは全パート10chに固定だ。もちろん各パートのノート・ナンバーは自由に変更することも可能となっているので、複数のパートを同じナンバーにして重厚で複雑な音色を作るというアイディアを試すこともできる。また、ノート・ナンバーを“ALL”に設定したパートはMIDIノートによる音階演奏が可能となる。この時パート番号1〜8が各MIDIチャンネルとなる。よって、全パートをALLに設定すると8マルチティンバーのシンセ音源という使い方もできる。こうした裏技的な側面を持ち合わせているところも本気の大きな特徴だろう。

本機を触ってみて実感するのは、ライブ使用を前提にしているというコンセプトどおりにページ階層をさまようこともなく、瞬発的に音色をいじれる小気味良さだ。音作りの幅も広くパートごとのパラ出しができるので、ライブで柔軟に使い倒せるドラム音源を求めている人には候補に挙がるモジュールの1つとなるのではないだろうか。(文:西田彩ゾンビ)

製品情報

FLAME Fire

価格●80,800円(税別)

Specifications

●サウンド・エンジン:バーチャル・アナログ・シンセシス、FM シンセシス●ボイス数:8●入出力:FIRE=MIDI接続、2系統のCV入力、5系統のオーディオ出力、X-FIRE=16個のアナログ・トリガー/ゲート/CV入力、3個の追加オーディオ出力用ソケット●幅:FIRE=22HP、X-FIRE=6HP●奥行き:FIRE=30mm、X-FIRE=25mm●消費電流:+12V=210mA、-12V=70mA

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