浅倉大介が試奏!Hardware Programmer for MONTAGE M PG-ANX/PG-FMX
今後のヤマハ・シンセサイザーを進化、発展させる
誓いのシンボルのようになるといいなと思います ────大田慎一
MONTAGE Mは、そういった機能もすべて内蔵されていて、現代のデジタル・シンセの最高峰と言える優れたシンセですが、それに対してあえて外付けの物理コントローラーを作ってみて、改めて気づいたことはありましたか?
大田 MONTAGE M 自体はさまざまな音の編集の要求にちゃんと応えるために、細かいパラメーターを全部コントロールできるように作られています。これは、シンプルなパラメーターのシンセを否定するわけではないし、自分はそういう機種も好きです。そのシンセがどういう方向性かの違いなんですけれど、そういったMONTAGE Mのたくさんのパラメーターを全部外に出すことで、先ほども言ったように俯瞰することでこの音源の中でどのように信号が流れて、どういうふうに音が作られているのかがわかり、細かいパラメーターがその中のどの辺にあるのかっていうのをイメージできるようになるんですね。そうすると、もうちょっと突っ込んで触ってみようっていう気になるということに、自分も改めて気づかされたかなと思います。
浅倉 大田さんが言っていること、よくわかります。こういう作り方をすればいいっていう地図は頭の中にはあったものの、やっぱり実機の上でその流れを見るとすごくダイレクトに入ってきました。今回、歴史的な足跡を見ちゃったかなと思っていて。MONTAGE M自体は最新のテクノロジーが詰まっていて、常に進化して、とにかく要求されるものは何でもできます、というシンセサイザーです。そこでこの物理コントローラーができたことで、過去にまで遡れるっていう、それこそモジュラー・シンセの頃の音作りまでMONTAGE M上でできてしまうっていうことがよくわかりました。まるで歴史の証人というか、この1台でシンセサイザーの軌跡を感じられるのがすごいなと思いますね。

MONTAGE M本体についても少し聞かせてください。今回OS がv3.0になりましたが、どんなアップデートがされたんでしょうか?
大田 いっぱいあるので、ポイントだけ紹介します(笑)。まず一番大きいところは、GS1はFM音源を採用した1号機ですけれど、DX系のFMサウンドとはちょっとキャラが違う別の良さがあるんです。それにはいろいろな要素があって、その中の1つがGS ENSEMBLEというアナログで作られているエフェクトなんです。ある意味刺々しくなりがちなFMのサウンドをいい感じで包み込んでくれるんですね。それを今回VCM(Virtual Circuitry Modeling)という技術で、ほぼそのまま入れ込んでいるんです。もう1つ大きなポイントとしては、CS-80というアナログ・シンセサイザーの名機と呼ばれているものがありますけれど、そのサウンドの鍵の1つとなっているのがリング・モジュレーターです。エンベロープ・ジェネレーターを持っていて、それが特徴的なサウンドを作り出すんですよね。CS-80のリング・モジュレーターの場合はそのまま入れたというよりは、もうちょっと現代風にアレンジしています。さらにエフェクトで、M/S EQコンプが追加されています。一般的にはマスタリングに使うエフェクトなんですけれど、今回は音作りにも積極的に使っていただきたいなと思っていて。音の芯、広がり感みたいなものを音色のキャラクター付けに使えないか、と。操作系としては、クイックエディットで2パラメーターしかエディットできなかったところを8パラメーターまで拡張することで、クイックな部分はキープしながら、もう一歩踏み込むことができるようにしました。あとESP(Expanded Softsynth Plugin for MONTAGE M)では、今回UI系をいろいろバージョンアップしています。特にMONTAGE Mのハードウェアとコンビネーションで使った場合に、実機のパネルを使ってESP をコントロールできるようにESP コントロールモードというのを新しく入れてます。
自分がこれまで作ってきた音の世界観は、
ヤマハの数々のシンセのおかげであると思っています ────浅倉大介
そういうMONTAGEというシンセの進化を浅倉さんはどうとらえていますか?
浅倉 機能が増えたり、また新しいことができるようになったりすると、“これでどんな音を作ろう、どんな曲を作ろう” って、やっぱり刺激になりますよね。あと、今回のv3.0でも自分が作ったプリセットが入っているんですが、CS-80のリング・モジュレーターは普通だったらアナログ・シンセライクな音で表現するところを、あえてMONTAGE MのAWM2音源のコーラスにかけてみたんです。
大田 最高にいいですね。
浅倉 これは今だからできることですよね。昔はできなかった、そういう新しい音作りにトライできるのがすごく楽しいんです。そして、それをユーザーの方が弾いたり自身の音楽に使って、広がっていってくれたらすごく嬉しいなと思います。
今回のPG-ANX、PG-FMXはヤマハシンセ50周年を記念して作られたものですが、歴代のシンセの中で、コントロール面で特に気に入っていたシンセはありますか?
浅倉 コントローラーというか、DX7 II-FDやDX7 II-Dにコンティニュアス・スライダーっていうものが2つあったんです。そこに2つのボイスエディット・パラメーターをアサインして、演奏しながら音色を操作するっていうことができて、とんでもなくエグイ音が出せたんですよ。もう本当に使い倒しましたね。そういうシステムがなくなってしばらく経った後、やっとMONTAGEで1つのツマミでFMの複数パラメーターを動かせるようになりました。ただ、どう動くか想定してアサインはしておかなきゃいけないんですけど、当時いいなと思っていたものが、またこうやって使えるようになったのはすごく嬉しいです。ヤマハの数々のシンセのおかげで、自分が作ってきた音の世界観があると思っていて、本当に感謝しています。大田さんは長い間そういったシンセを作り続けてきたわけですが、そのモチベーションはどこにあるんですか?
大田 それはやっぱりこういったものを作って、浅倉さんはじめアーティストの皆さんに使っていただいて新しい音楽を作ってもらえるといいなっていう思いですね。自分にとって夢のような話ですけど、それがずっとできるといいなっていうのはあります。
浅倉 今日は新たな角度からヤマハ・シンセサイザーに触れられて良かったです! 大田さんの夢を頑張って叶え続けます。


