ノイズの音作りに使いたい個性が光るシンセサイザー 〜 WALDORF Iridium♡Core

『FILTER Volume.07』掲載特集“ノイズ研究”では、ノイズを使った効果的な音作りができるシンセサイザーをピックアップ。それぞれの機種の個性や特徴に着目しレビューした記事をWebでも公開!

ノイズ音源の扱い方が幅広く設定された
コンパクトかつ高性能なデジタル・シンセ

なぜかIridiumとCoreの間に♡マークが入っている、Quantum/Iridiumシリーズの最新・コンパクト版。特筆すべきはそのコンパクトさ、軽さ(2.2.kg )で、おかげで宅配便がピンポンせずに宅配ボックスに入れて立ち去っていった……シャワー我慢して待ってたのに!

しかしこのQuantum/Iridiumシリーズ、めちゃくちゃ多機能・高性能シンセなので今回のスペースでは書ききれないし、筆者自身もまだ全然把握しきれていないスーパー・シンセなのだ。おそらく何年も使い倒さないとその真価はわからないに違いない。特にその音源部の多彩さは、それだけで他のシンセと一線を画していると言えるだろう。

このIridium♡CoreがフルサイズのIridiumシリーズよりだいぶコンパクトなのは、エディット用のコントロールが省略されたこと、I N/OUTの接続端子が簡素化されたことなどによるのだが、抜群に操作性の良いタッチ・ディスプレイと、元々の6つのエンコーダー類のおかげで、エディットも全くもどかしくは感じない。本当に鬼のような多機能シンセなのだが、ディスプレイの出来の良さと、コントロール・ソフトウェアの“痒いところに手が届く”感で、ここまでエディットが面倒に感じないのはすごいことだと思う。

さて、今回の着目点であるノイズの扱いだが、普通のシンセよりもノイズ音源の扱い方自体が幅広く設定されている。先に触れたように、このシンセは音源部のオシレーター・エンジンの多彩さが武器。ウェーブテーブル、ウェーブフォーム、Particleジェネレーター(サンプリング )、レゾネーター(物理モデル )、Karnelsシンセシス・モード(FMを含む )などがあるのだが、いわゆる普通の減算型シンセと同じ考え方なのは“ウェーブフォーム”モード。この中にはさまざまなアナログ・シンセ的波形とともに、ピンクノイズ、ホワイトノイズが音源として用意されている。ごく一般的なジェネレーターと比べると、ピンクノイズはちょっと低域がパワフルに、ホワイトノイズは高域がシャープに聴こえるので、パーカッション音源などのネタにするにも使い分けがしやすそうだ。さらに、軽いものがバウンドするような“Pings”、通信ノイズのような“Geiger”といった、均質なノイズとはまた違う波形も持っていてこれも面白い。蛇足だが、エンベロープの設定も優秀なタッチ・スクリーンのおかげで非常にやりやすい。

……と、普通のシンセならノイズに関してはコレくらいなのだが、Iridiumはこれ以外がまたすごい。まず、ウェーブテーブル・モードにした時に、波形のカスケード接続とは別にノイズをミックスすることが可能で、これがオシレーター内で処理できる。ノイズの影にウェーブテーブルが隠れるようなノイジーなミックスにもできるし、ほんのちょっとの空気感を波形の動きにプラスするような絶妙な塩梅も可能で、なかなか面白かった。

Particleジェネレーターでは、サンプリング波形をストレートに再生するだけではなく、グラニュラー・モードがある。細かく砕いたサンプルのピッチに関するパラメーターが山のようにあるので、ここで音程感のあるようなないような、不思議なノイズを作ることができる。また、レゾネーター・モードやKarnelsシンセシス・モードでも、音程感のないパーカッシブなサウンドを作れるが、いずれもアナログのノイズ・ジェネレーターをフィルタリングして作れるタイプのものとは全く肌触りが違うものができるので、これも面白い。

今回の特集の趣旨にのっとってノイズという面を中心にチェックしたIridium♡Coreだが、基本的な音の良さ、反応の速さ、エディットのしやすさ(特にエンベロープと、物理モデル音源のわかりやすさ )などでかな〜り気に入ったシンセである。邪道かもしれないが、これ1台抱えて各地のライブハウスのデジピに拡張音源としてレイヤーして、オーディエンスを驚かせるのも楽しいかもしれない。(文:飯野竜彦)

製品情報

WALDORF Iridium♡Core

価格●オープン・プライス(市場予想価格:279,800円/税込)

Specifications

●オシレーター:3基、それぞれ5つのシンセシス・モードが可能/モード=Wavetable(ウェーブテーブル)、Waveform(ヴァーチャル・アナログ)、Particle(サンプリング/グラニュラー・サンプリング)、Resonator (レゾネーター)、Kernels(カーネル:FM、AM、オーディオレートでのウェーブテーブル・ポジションを介して相互リンクできる最大6基のサブオシレーター)●フィルター:独立したモードを備えたトゥルー・ステレオ・パス・デュアル・デジタル・フィルター、12/24dB LP/HP/BPをすべて組み合わせ可能、Nave/Largo/PPG/Quantum/StateVariableモデル●デジタルフォーマー:Waldorf Nave、Largo、PPG 3Vからの HP/LP/BP/Notchフィルター・モデル、コムフィルター、ビットクラッシャー、各種ドライブ、リングモジュレーション●モジュレーション:6基のエンベロープ、6基のLFO、Komplexモジュレーター(ユーザー定義可能なシェイプとモーフィングを備えた、LFOとエンベロープの組み合わせ)●モジュレーション・マトリクス:40スロット、Fastアサイン・モード、各スロットに1つのコントロールを追加、同じソースとデスティネーションは、モジュレーション・マトリクスが全て使用されるまで使用可能●エフェクト:各レイヤー5スロット、様々なパラレル/シーケンシャル・ルーティング機能、リバーブ/ディレイ/コーラス/フェイザー/フランジャー/ドライブ/EQ/コンプレッサー/トレモロ●シーケンサー:最大64ステップ●ボイス:12 ボイス同時発音数、デュオ・ティンバー、モノラル、レガート、ユニゾン・モード●パッチ:1,700以上のファクトリー・パッチ、7,000 パッチ・メモリ・スロット容量、QuantumやIridiumからのパッチのロード、その逆も可●接続端子:2つのTS(アンバランス)出力、2つのTS(アンバランス)入力、レベル・コントロール付きのTRSヘッドホン出力、DIN MIDI イン/アウト、ミニTRSタイプA(DIN MIDI ソケットへのアダプターx2個付属)USBタイプB(デバイス)、USBタイプA(ホスト)、MicroSD スロット、Mod-Matrix のモジュレーション・ソースとして使用可能な2系統の高解像度CV入力、クロック・デバイダー設定可能なアナログ・クロック入出力●外形寸法:346(W)x200(D)x 64(H)mm (コントロールを含む)●重量:2.2kg

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