FM/ウェーブテーブルの現在〜KORG opsix

『FILTER Volume.02』掲載企画“FM/ウェーブテーブルの現在”では、シンセ・シーンで再び注目を集めているFM/ウェーブテーブル・シンセサイザーを特集。各メーカーからリリースされている最新のFM/ウェーブテーブル・シンセのレビューをWebでも公開！　

拡張されたサウンド・エンジンを
アナログライクに操作可能な
新コンセプトのFMシンセ

“変貌した”という意味の“ALTERED”を冠に持つコルグ社のオルタードFMシンセ“opsix”（以下本機）は、コンパクトながらも革新的なポテンシャルを秘めた新コンセプトのFMシンセだ。

本機の音源部は伝統的なFM以外に、Ring Mod、Filter、Filter FM、Wave Folderに加えv2.0からEffectを追加した6種類の変調方式を搭載。これらはオペレーターごとに設定可能で、任意のオペレーターをHPF／LPF／BPFなどのアナログ・フィルター的に味付けすることも簡単である。

さらにエフェクト・タイプの変調もオペレーターごとに選択可能で、各種EQやサチュレーション、コンプ、ディレイなど、オペレーター単位での細かい加工もできる。各オペレーターは、左側ミキサー部のレシオ＆レベルで視覚的かつアナログライクにエディットできるだけでなく、キャリアとモジュレーターでノブとスライダー部のLED色が変わる仕掛けで各オペレーターの役割も一目瞭然だ。

またオペレーター単位での波形プリセットも選択可能で、SineやTriやSawはもちろん、ローファイ感を出す12Bit／8Bit、より音圧のあるSaw HD、不可的な倍音を含んだAdditive、Noiseなどバリエーション豊かな波形を多種内蔵しており、豊潤なパッド系や、エッジーなEDM系音色の作成にも大きく役立つはずだ。

Voiceモードではポリ＆モノやグライド設定が可能な他、DX7Ⅱに装備されていた“Unison”機能が進化して搭載。最大8ボイスまで発音可能で、デチューン幅やステレオ感の調整もOKだ。マレット系サウンドにかけると埋もれない浮遊感の独特な世界観にメイクアップしてくれる。

右下のPROCESSORS部は、6オペで創作されたサウンドのトータル・デザインを担う機能で、例えばDX7に昨今流行りのモジュラー型エンべローパーやフィルターやLFO、そしてマルチDSPを外部につなぐイメージだろうか。オペレーターとは独立したEGとLFOをそれぞれ3機搭載しており、DXブラスにピッチEGでアタックを引っ掛けて派手にしたり、“バーチャル・パッチ”機能と併用すれば6つのオペレーターの各パラメーターとシームレスに連携させる壮大なマトリックス・モジュレーションさえも実現する。

フィルターにはコルグの名器“MS-20”と“Polysix”タイプ（自己発振可能）も搭載、ソリッドなFMサウンドを甘美にそして過激に彩ってくれる。先述したように各オペレーターでのフィルタリングも可能だが、こちらは従来のシンセ同様全体に仕掛けるイメージだ。

エフェクトは3系統搭載。汎用タイプ以外に“Grain Shifter”など飛び道具も豊富だ。最近主流のパラレルタイプのコンプレッサーも良い。粘りのあるグルービーさと、滑らかで太いビンテージ感のある出音がFMベースと相性バツグンだ。　

アルゴリズムはユーザー登録も可能な計40種搭載。例えばすべてキャリアとなる完全並列のアルゴリズム32を選び、本機を6オシレーター・シンセとしてプログラミング、PROCESSORSでメイキングしてやれば高級アナログ・シンセ並にシンプル＆ファットなFMサウンドも堪能できる。

さらにオペレーター・ミキサーやアルペジエーター、各ノブやスライダーの動きを記憶する6レーンの“モーション・シーケンス”も搭載。DJライクかつ深淵にFMを探求する芸術肌タイプのシンセに仕上がっている。

さまざまなFM系ハード／ソフトシンセが現存する中で“玄人受け”するシステムとサウンドを“アナログ”的に構築する楽しみを享受できるopsix。FMシンセの元祖、DX7の音色をエクスクルーシブで読み込み、懐かしさも味わえる。他とは一線を画すFMワールドに興味がある方は、ぜひWebや店頭でその実力を体感してほしい。（文：近藤昭雄）