強力なフィルターを搭載した現行機種レビュー 〜 MAKE NOISE QPAS

『FILTER Volume.10』掲載“強力なフィルターを搭載した現行機種レビュー”では、サウンドメイキングで活躍するフィルターを搭載したシンセサイザーをピックアップ。それぞれの機種のフィルターの特徴に着目しレビューした記事をWebでも公開!

予測不能な動きで音を立体化するステレオ・フィルター・モジュール

メイク・ノイズ社のモジュラー・シンセは、独創的なパネル・デザインから最初はとっつきにくいが、使い出すとその個性的な機能やサウンドに虜になるユーザーも多い。今回紹介するQPASもそんなモジュールだ。本機は一般的なフィルター・モジュラーとは一線を画す、ステレオ・マルチピーク・フィルターである。とても個性的な仕様であるQPASは、音色を作るだけではなく4つのフィルターの“動き”によってサウンドを作り出す独特の設計思想を持つ。結果として、単なるトーン・シェイパーではなく、有機的サウンド変化を生む“アニメーション効果”をもたらすのが大きな特徴だ。

まず注目すべきは、左右に独立したフィルター・ペア(4系統)を持つステレオ構造である。一般的なフィルター・モジュールは入力した音声信号をトーン・シェープしてシンセサイズするが、QPASはステレオのマルチ・ピーク・フィルターと複雑なモジュレーション・ソースによって、これまでにない音色を作り出す。特にRADIATEは、左右独立したコントロール(CV入力も可能)を備えており、これを調整することで、4つのフィルター・ピークをユニゾンから左右のステレオ・フィールドに広く拡散させたり、複雑に配置させたりすることができる。

その変化は特徴的で、少し動かすだけでも位相感やステレオ・イメージが劇的に変化する。RADIATEをモジュレーションすれば、まるで音が呼吸しているかのような不規則で不思議な動きや空間を作ることができる。これにより、パッドやドローンはもちろん、リードやパーカッシブな素材にも独特な動きのあるサウンドへと変化させられる。多層的で繊細な倍音が自然に加わる印象で、実験的なサウンド・デザインからメロディックで滑らかな音作りまで幅広い音作りに対応する異色のフィルター・モジュラーだ。

また、一般的なローパス(LP)、バンドパス(BP)、ハイパス(HP)に加え、QPAS独自のSmile Pass(SP)出力がとても個性的だ。Smile Passは、レゾナント・ピークを強調しつつも、音の基音やトップエンドを失うことなく、全体の音量を比較的一定に保つように設計されたユニークなフィルターになる。

ステレオ・パッチングにこだわるユーザーやモジュラーで空間系の質感を作り込みたいユーザーにとって、QPASは中心的な役割を果たすだろう。個人的には左右違ったフィルターで出力させることで、今まで聴いたことのないようなサウンドを簡単に作ることができると感じた。特にHPとLPのステレオの組み合わせは、カットオフ周波数やRADIATEをモジュレーションすることでかなり複雑で立体的なサウンドが生まれる。

そして最もメイク・ノイズらしいのが、“!!¡¡”と記載されたモジュレーション入力。予測不能なサウンドを生み出すこの入力は、まさに実験的な入力と言える。マニュアルには“ 回路のすべてに作用する”としか記載がなく、もう試すしかほかない。本機の醍醐味の1つでもある。オーディオだろうがCVだろうがGATEだろうが、どんなソースも受け付ける。そして、何が何に作用しているのかはまったくわからない。しかもこの入力は左右にそれぞれ配置されているので、左右で違う信号を入力するとまさにカオスなサウンドになる。ここぞといった時に試してみると面白い結果が得られることもあるが、予想したサウンドは得られない(笑)。

総じて、QPASは万能フィルターを求めるユーザーには少し癖が強いが、“音に動きを与えるモジュール”としては唯一無二であり、クリエイティブなサウンド・デザインの中心になり得るモジュールと言っても過言ではない。既存のフィルターとは異なるコンセプトを持ち、音に複雑な変化や空間性を求めるユーザーにとって、QPASは非常に魅力的な選択肢となるだろう。音作りの可能性を広げたいユーザーにはぜひ触れてほしい、独創性あふれる1台である。

文:江夏正晃

製品情報

MAKE NOISE QPAS

定価● 71,000円(税別)

Specifications

●クアッドコア・ステレオ・アナログ●マルチピークのクリーンなレゾナンス●深いFMをかけた際の素早いレスポンス●ラジエート・スペースがステレオ・イメージを生み出し関連するチャンネルをアニメート●高いQ設定にすると減衰しにくく反応が良くなり、ゲートまたはトリガー信号を入力すると発音●2つの!!¡¡モジュレーション入力●ゲイン・コントロール付きのプレフィルター・ステレオVCA●モノからステレオ、ステレオからモノ、ステレオからステレオで使用可能●QPASのために設計されたユニークなフィルター・レスポンスを持つスマイルパス・フィルター●ローパス、バンドパス、ハイパス、スマイルパス出力を同時に使用可能●外形寸法:18HP(W)×45mm(D)

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